双頭の白い竜

青 劉一郎 (あい ころいちろう)

第1話

宇宙年 三万五千年 

 その星は、この宇宙に、まだ存在した。

 星が・・・。

 しかし、あらゆる生物が消えかけていた。辛うじて、幾種の植物とか動物とかが生き残っていた。生き残ってしまっていた・・・と言った方がいいかもしれない。

 確かに、この星の生き物たちは、生きるためにそれなりの努力をし、その頭脳によって長い年月をかけて、この星を成長させて来た。


 だが、ある時、ちょっとした気まぐれからか、怒りからかも知れないのだが、たった一回の手の動きによって、その星を崩壊させてしまった。


 辛うじて生き残った者たちは、この星の再建に乗り出すことになった。


 「私たちは生き残ってしまった」

 と、その十四歳の男の子は嘆いた。

 男の子の名前は、一士(はじめ)という。

 一士は泣いている。泣いても泣いても、涙が出て来る。だから、次の言葉が出て来ない。

初めは、私たちといったが、その彼の前にいるのは、たった三人だった。

 もっとも、他にも生き残っている者はいるかも知れないが、一士たちは、そこの壊れたかけた建物から、まだ一歩も歩み出してはいない。


 後の二人は、十一歳の女の子と七歳の男の子だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る