第49話 次の目標
ふと気づいたら試合が終わっていた。
てっきり負けたと思っていたけど、どうやら逆転勝ちしたらしい。
試合の最後の方はただただ必死だったのと痛みで何がどうなったのかよく覚えていない。
頭がボーッとしたままインタビューに答えてたけどまともな受け答えが出来ていたかは分からない。
『それでは優勝したあゆみ選手には賞金500万円と副賞としてスキルガチャチケット、超レアアイテムガチャチケットがそれぞれ一枚授与されます』
――パチパチパチパチパチパチパチパチパチ――
でも、その言葉で強烈に脳が、本能が、魂が揺さぶられ、一気に意識が冴えわたった。
うわぁ!
500万! ええ!? 本当に500万!?
夢みたいなんですけど!
急に実感が湧いてきた。
本当に私、優勝したんだ!
予選の前は、優勝出来るとはこれっぽっちも思ってなかったのに······本当に信じられない。
おばあちゃんと焼肉とお寿司食べに行こっと!
スウィーツとか食べに行ってもいいね。
『あゆみ選手、見事拳豪トーナメントを制されましたが次の目標は何でしょう? 圧倒的な記録を打ち立て、一躍注目を集めたあゆみ選手であれば大手企業のプロチームからも引く手数多でしょうし、次の活躍の場が気になります』
質問で食べ物の妄想から引き戻される。
おっと、質問に答えないと。
「次の目標ですか? 次というか······拳豪になるのが元々の目標なので何とか半分達成したというところですかね」
『えっ!?』
――ザワザワザワザワザワザワザワザワザワ――
あれ?
何か反応が······。もしかして変なこと言っちゃった?
もしかしてプロチームのことをスルーしたのが拙かったのかな?
でもプロとか言われても、何やるのか良くわかんないし。今は先輩のチームに入ってるし。答えようがないもんね。
『それはつまり、リアルの拳豪トーナメントにもエントリーするということでしょうか!?』
あれ? そっちが何かダメだった?
「はい。そのつもりなんですが······もしかしてリアルの方には参加出来なかったりしますか? 私、あんまり良く分かってなくて······」
――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――
アリーナが沸いた。
『いえ、参加はできます! 「リンク」で優勝したプレイヤーには主催者枠で一度だけ参加する権利が与えられます。ただ、その権利を行使した人は今のところ誰もいないんです!』
あ、そうなんだ。
っていうか、そうだよね。
『リンク』で優勝するほどのゲーマーがプロの
格闘家とガチで試合とか普通ムリだもんね。
『ちなみに、参加するタイミングは任意となっているようですが、いつのトーナメントに参加を希望されますか?』
そうなんだ、いつでも参加できるんだね。
『えっと、可能な限り早く参加したいんですけど······』
――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――
更にアリーナが沸いた。
えっ?
なに? なに? 何で歓声が?
『あゆみ選手、······最短となると二日後に「真」のトーナメントの一回戦が始まりますが······それに参加したいということですか?』
「はい······早いほうが嬉しいんですけど、流石に急すぎてダメですよね」
『あ、はいっ。はい。······おめでとうございます。今、運営側より連絡がありまして、二日後の「真・拳豪トーナメント」の参加枠を確保したとのことです!』
――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――
えっと、何か頭に『シン』てついてた気がするんだけど、劇場版か何かですか?
あ、リアルの大会はリンクと区別して『真』をつけてるのかな?
何かちょっと違う気もするけど······。
深く考えないことにしよう。
『あゆみ選手、「拳豪」を狙っているということはリアルの方でも優勝を目指していることと思いますが自信のほどは?』
「はい、実際はやってみないと分かりませんが自信はあります。ジムの会長からも軽く世界を狙えると言われてますし」
――オオオオオォ――
何と言っても私、レベルが違うので。
『ちなみに、ジムとおっしゃいましたが格闘技は
何を?』
「あ、はい。ボクシングをやってます」
『ボクシングですか。予選では足技も使われていましたがそちらは独学で習得されたのでしょうか?』
「はい、······独学ですね」
というか、ジムで習った技って発勁だけじゃない?
ていうか、発勁もボクシングの技じゃないし。
思い返せばボクシング系の技を覚えてない気がする。
いや、発勁はショートフックだ。そういうことにしておこう。
『ボクシングの戦歴などあれば教えていただくことはできますか?』
『えーっと、戦歴というかスパーリングを何回かやったくらいですね。今月から始めたばかりなので』
実際は数日しか通ってないけども。
『えっ、今月からですか?』
――あぁぁぁぁ――
皆さん、なんすかその溜息。
アリーナ内のテンションが一気に下がってるんですけど!
あれ、これはもしかして格闘技歴が短いからガッカリされてる?
会長にノセられた頭のイタイ子だと思われてる?
くっそー、見返してやんぜコンチクショウ!
『············そ、そうなんですね。始めて一ヶ月も経たずにもうスパーリングをしているんですね。······それはスゴい······です。リアルの方の大会も頑張って下さい。くれぐれも怪我にはお気を付けください』
「はい、頑張ります」
『改めまして優勝おめでとうございます。ありがとうございました』
「ありがとうございました」
そんなこんなで拳豪トーナメントは幕を閉じた。
何か今日は大分脳が疲れたし、終わったら早くログアウトして寝よ。
そんでもって明日は大崎ジムに行って、総さんやレイカさんにトーナメントのこと相談しよっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます