第43話 拳豪トーナメント最終予選②


「ああっと、これまで派閥に囲まれながらも奮闘を続けた小田選手、ついに力尽きました! 開始から40秒。流石に1対5ではあまりに分が悪かった。しかし、それでも何と712Pointを獲得しています! 見事その大和魂を見せつけてくれました!」

「小田選手、本当に素晴らしい活躍を見せてくれました。712Pointはあゆみ先生がいなかったら本来1位通過しててもおかしくないポイントですよ。お見事でした」


「そしてこの間にあゆみ選手既は何と1000Pointを超えています。そのスピードに他のプレイヤーは為す術がないと言った感じです」

「しかも、これだけ周りを敵に回して全然ダメージを負ってないんですよね。最終予選参加者の合計HPは多分10000あるかないかぐらいだと思うんですが、一人で10分の1を持っていきました」


「ああっと、ここであゆみ選手、先ほど小田選手を倒した派閥へと攻撃を仕掛けました。不意打ちに近い【スライディング】からの【足払い】。攻撃を受けたプレイヤーは為す術なく転がされます。そして······おおっとこれは、あゆみ選手自ら両手を地面につきました」


「そんな無謀な! ……え?」

「あゆみ選手光を放ち、詰め寄ろうとしていたプレイヤーに【ぶちかまし】たぁ! あゆみ選手に巨漢のイチゴ頭が吹き飛ばされる!」


「お、おかしいですよ。今の【ぶちかまし】のチャージが速すぎます! 絶対に5秒はたっていなかったはずです。それなのに防御不可のエフェクトが出てました。何でだ? ······はっ、まさか……速度設定を変えるとチャージも短縮されるのか? だとしたら……他の……」

「目の前の出来事に林プロも混乱しています」


「い、いや、無理もないですって。普通は味方のフォローなしにバトルロイヤルで【ぶちかまし】なんて使えませんからね。そもそもあの局面で何故あゆみ先生が【ぶちかまし】を使ったのかその真意も分かりません。【ぶちかまし】は確かに強力なスキルですが、周りが敵だらけの状況でチャージスキルを使うのはリスクしかないですからね。あゆみ先生は他にも防御貫通のスキルをお持ちなのに……、ただ個人的には速度設定を上げることのメリットを新たに発見させて頂きましたので非常に勉強になりました」

「それは良かったです。通常の最終予選とは異なり序盤から試合が激しく動いています。現在首位のあゆみ選手、2位の小田選手は本戦出場が確定しています。しかし3位以下は100点代でひしめき合っており刻々と順位が入れ替わります。本戦出場を賭け熾烈な争いが繰り広げられております」


「3位以下はあゆみ先生の気分次第で決まるかもしれませんね。運よくあゆみ先生に狙われなかったプレイヤーが勝ち残るんじゃないかと」

「その可能性は大きいですね」


「あと気のせいかもしれませんが……先ほどからあゆみ先生は人数の多い派閥を狙っているように思えます」

「確かに……言われてみれば確かにそうです。普通は大きい派閥が小さい派閥を狙うのですが今大会は全く逆の展開となっています。あゆみ選手の真意はどこにあると思われますか?」


「それは計りかねますが……大きい派閥には強い選手がいる可能性が高いですから本戦に向けて潰しているのかもしれません」

「成程ですね。······おおっと、ここであゆみ選手、フィールドの隅へと自ら走っていきました。あゆみ選手を追走するプレイヤーは誰もいません」


「そうですね。この行動の意図も計りかねますね。……まさか休憩ってことはないと思うんですが……。とにかくプレイヤー達はあゆみ選手に狙われたくないでしょうから誰も追いかけませんね」

「まるで嵐が去ったかのようにプレイヤー達は陣形を整えています。ここから本来の最終予選の形に戻るのでしょうか? ……いや、あゆみ選手フィールドの隅で両手を地面についています。これは明らかに【ぶちかまし】です。二度目の【ぶちかまし】を狙っています! しかし、あゆみ選手は他のプレイヤー達と距離が離れています。この距離では【ぶちかまし】は届かないはずです」


「ま、まさか……」


「あゆみ選手、もの凄い光を放っています。恐らくもうMAXまでチャージしたのではないでしょうか。……あ、あゆみ選手【ぶちかまし】を発動しました! しかしその先には誰もいません。【ぶちかまし】は不発に終わり……あれ? 止まりません。あゆみ選手【ぶちかまし】の凄まじいスピードを保ったまま爆走しています! そして一人、二人と他のプレイヤーを撥ね飛ばしていきます!」


「えっ??? 【ぶちかまし】の効果が切れない? 何で? 違うスキル?」

「林プロが驚愕する中、あゆみ選手は暴走トラックと化し次々とプレイヤーを撥ね飛ばしていきます。1800…1900…2000Pointを超えました。止まりません。あゆみ選手が止まりません!」


「これは……とんでもない光景ですね」

「これは何でしょうか……例えるなら闘牛です。ただし牛が速すぎて皆撥ね飛ばされる闘牛です。もはや試合の様相を呈してません。一方的な処刑が行われているかのようです」


「ここに来て選手たちの共闘関係はもはや崩壊したようです。あゆみ選手にやられる前に敵味方問わず手あたり次第に攻撃をし始めました」

「一人の突出したプレイヤーがいるだけで試合はこんなに変わってしまうんですね」

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