第42話 拳豪トーナメント最終予選①

◇某番組◇


「いよいよ最終予選が始まります。今大会最注目のあゆみ選手は一体どのような活躍を見せてくれるのでしょうか? また共闘するプレイヤーは何人いるのか気になるところですね」

「あゆみ先生へのオファーは沢山来てるでしょうから、共闘できる最大16名の大派閥を形成しているかもしれませんよ。オファー自体はもっと来ているでしょうが、16名を超えると仲間割れになりますからね。僕は16名の派閥になっていると予想します。過去にも同じようなことが何度も起きてまして、注目選手が現れると16名の派閥が生まれやすいんです」


「そうですか。そうなるとあゆみ選手の本戦出場は濃厚ですね。さあ、それでは出場選手が続々と参入してきました。相変わらずイチゴスキンを用いないあゆみ選手の姿も見えます。間もなく試合開始です。実況は私海藤、解説はおなじみ林秀樹プロでお送りいたします。……おおっと、よく見たらあゆみ選手以外にももう一人イチゴスキンを用いていない選手がいます。新選組の衣装を身にまとっていますね」

「これは、確実にあゆみ先生の影響を受けてますね。スキンから、予選の合計ポイントであゆみ先生に次ぐ2位の小田国俊選手だと思われます」


「しかし、……今回イチゴスキンを用いないのはかなりデメリットなのではないでしょうか?」

「はい、不利なのは間違いないと思いますが……あの漢気は買いたいですね。彼にも注目していきたいです」


『10…9…8···』


「カウントダンが始まりました。いよいよ試合開始です!」


『···3…2…1…開始』


「各選手がランダムに配置されました。開始直後は各派閥に分かれますがあゆみ選手の派閥は一体何人いるので……ああっと何とあゆみ選手、周囲のプレイヤーを攻撃し始めました!」

「あれ? 派閥は?」


「最終予選の定石を全く無視しています!」

「くっはっは。そういうことか! 流石あゆみ先生です! 派閥とか関係ないってことですね。見事に予想を裏切ってくれました!」


「そしてもう一人、新選組の小田国俊選手も定石無視です。あゆみ選手と同じく開始早々周囲の選手へ攻撃しています」


「2位で共闘の話が来なかったとは思えませんが……凄いですね。小田選手もあゆみ先生と同じく敏捷値依存の速度設定にしてますよ。あゆみ先生ほどではないですが、他の選手よりも明らかに速いです」


「ああっと、しかしあゆみ選手、小田選手それぞれ攻撃した選手の派閥と思われるプレイヤー達に囲まれました! 開始早々ピンチを迎えています」


「二人ともピンチですが既に200Point近く稼いでいます。恐らく300Point近辺が本戦出場のボーダーラインになるかと思いますからもう少しですね。まさかここで消えることはないと思いたいのですが……」

「両選手は果たしてこのピンチを凌ぐことができるのか」


「あゆみ選手、包囲網を突破……というか崩壊させました。何というスピードでしょうか。あっという間に人が吹っ飛び、転がります。解説が追い付きません。既に400Pointを超えました。恐らくこの時点であゆみ選手の本戦出場は間違いないでしょう」

「間違いないですね。それにしても速すぎます」


「一方小田選手、ピンチを迎えています。包囲網がじりじりと狭まり間合いを詰めてきています。防御でしのいでいますがじりじりとHPを削られています。このまま消えてしまうのか!」


「これ、前方の選手の一人が【ぶちかまし】っていう大技を待機してるんですよ。両手を地面についてる時間が長いほど攻撃力が高くなるんです。このチャージスキルが使えるのは共闘出来る最終予選ならではです。【ぶちかまし】を警戒して後方からの攻撃に対応しきれず削られてますね」


「成程。しかしこのまま削られたらじり貧です」

「はい、それを承知の上で小田選手は何か狙ってますね」


「おおっと、ここで一瞬の攻防! エフェクトが激しく飛び交う! 一瞬の出来事で一体何が起きたのか分かりません! ただ小田選手が攻撃を受けたのは確かです。……しかし何故立っている小田国俊! 周りには3人の選手が倒れています。何と、この攻防を制したのは小田国俊選手です!」


「すごい攻防でした。今の攻防はスローで中央のモニターに表示されてますね。まず小田選手は後方から【スライディング】を仕掛けられました。多分【ぶちかまし】を待機していた選手とタイミングを合わせたんだと思います。転ばされたらもうほぼほぼ終わりですから【スライディング】は避けるか防御しなければなりません。でも【ぶちかまし】は5秒以上チャージすると防御不可になり対人の場合必ずダウンさせられます。当然大ダメージです。加えて正面からの攻撃は弾き返すためカウンターもできません。小田選手は何としても【ぶちかまし】は躱すしかない状況です。そこへの【スライディング】。小田選手は一瞬左に踏み出し【スライディング】を躱します。その避けた先に【ぶちかまし】が飛んでくるのを予想していたのか直後に右後方に切り返します。このとき【スライディング】をしてきた選手を右足で踏みつぶしてますね。そして脇を通過しようとする【ぶちかまし】を何と横から迎撃しました!そうかこの手があったか! しかもこれは【発勁】ですね。防御貫通攻撃の側面カウンターで【ぶちかまし】た選手を弾き飛ばしました。そして弾き飛ばされた選手が派閥の選手にぶつかって一気に3人を転がしました。これは鳥肌ものですね! こんなふうに包囲を破るなんて信じられません!」


「あの一瞬でこれ程の攻防がなされていたとは驚きです。この一連の攻撃で小田選手が叩き出したダメージは何と286! 【ぶちかまし】を放った選手を一撃で葬りました。これで小田選手も本戦出場は間違いないでしょう」


「強いですね。あゆみ先生の陰に隠れていましたが、これ程の選手が出場していたとは驚きました。今の攻防はトップランカー並みのテクニックですよ」

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