第15話
「はぁ~疲れた。今日はここまで」
樹齢が千年を超えてるようなサイズをしているからな、そう簡単に治療が終わらないってのは分かっていたけど。あまりの治療の進まなさにちょっと悲しくなってくる。
かと言って無理して昨日みたいになる訳にはいかない。
「作るのが久しぶり過ぎて手間取ったが、何とか間に合ったか。ベルデよ、これを受け取ってくれ」
初めは色々、大精霊と話をしながら神聖樹の治療をしていたけど。突然何か思いついたような顔をして何処かに行ってしまった大精霊が何か手に持って帰って来た。
今回の件のお礼と言うことかな?まぁ、危ないものじゃ無いだろう。
大精霊が用意したものをどういったものなのか特に聞くことをせずに受け取る。
大精霊が持っていた雫型の宝石の様なものを受け取った瞬間。
宝石の様なものが消え、左手全体に様々な植物をイメージしたであろう紋様が浮かび上がる。
「何ですかこれ?」
「大精霊アルラウネの加護を得ている事を示す精霊紋だ。心配しなくとも、常時そのように手の甲で光っている訳では無い。最初以外はベルデが精霊紋を意図的に見せようとしない限り。そのような状態にはならない」
それは助かるけど……報告しない訳にはいかないし結局意味ないかも。
いやまぁ、俺が個人で生きていくなら隠して生きるのもありだけど。
これから、貴族として王家と仲良く生きていきたい身としては隠す訳にはいかない。
「……アルさんが人に加護を与えるどれぐらいぶり何です?」
因みに、大精霊に私の事をアルと呼んでいいぞ(強制)と言われたので、そう呼ばせてもらっている。
「どれぐらいか……詳しく覚えている訳では無いが、300〜500年ぐらい前だった筈だ」
「それってフレイという男性ですよね?」
「あ~たしかそんな名前だった…いや待て何でベルデが知っている?」
「いやだって、その人。俺が暮らしてる国の初代国王ですもん」
大精霊の加護なんて絡んできたら一般人だろうと後世に名前ぐらい残るだろうけど。
それに加えて国を建国した初代国王ともなれば
当然色々な話が記録され残っている。
「大精霊の加護を得た初代国王は加護によって強力になった地魔法を使って街を作り、襲い来る敵はゴーレムの軍勢で退けた。とても有名な話です」
……言ってる途中で気づいたけど。
つまり俺の植物魔法の性能も更に上昇してるって事?
「そうだったのか……あのときは、なんか人に加護を与えてみたい気分だったから与えただけだったが。そのおかげでベルデが生まれ、神聖樹を救うことが出来たという訳だな。昔の私グッジョブ」
「それ、絶対に俺達以外の人に言っちゃだめですからね?今も、アルが加護を与えた人の子孫が王族やってるんだから」
様々な理由で国の王家が代わる事はあるけど。
幸いこの国の王家は一度も代わっていない。
この世界でも血が濃くなりすぎるのは行けないというのは知られているので血としてはドンドン薄くなっているけど。
それでも、しっかり初代国王の子孫が王家のまま国は続いている。
王家の人間が大きく反感をかうような事をしてこなかったってのもあるけど。
初代国王は大精霊ととても仲がよく、子孫に手を出そうものなら大精霊が怒り狂うと考えられているのも大きいだろう。
大精霊がこの場から移動しない理由として、
友人である初代国王の子孫を見守る為ってのが
この国で一番支持されているものだからな。
万が一大精霊が口をすべらせて、そうじゃ無かったってのが広まったら何が起きるか全く想像できない。
と言っても、圧政をしていたような国王は過去を遡ってもいないし。
今の王家は国民人気も高い。
事実が広まっても、特に何も起きないかもね。
だとしてもだ。態々、荒れる可能のある話を広める必要もないだろう。
「そもそも、ベルデ以外の人と話すことなんて滅多に無いだろうが……そうだな。ポロッと話してしまわないように注意をしよう。あっ、そうそう話がまるっきり変わるが。今度来る時に宝石を持ってきてくれないか。勿論、報酬は用意する」
「宝石ですか?全然良いですけど。種類とか原石なのか、それともカットされたものなのか。カットされているものならカットの種類の指定は有るのか。等など色々教えて貰って良いですか」
適当に買って来て、コレ違うなんて言われたら困るし。
「そうだな。宝石の種類は何でも良いと言えば良いが希少で質が高いものが良い。出切ればカットされているほうが有り難いが。原石でも問題無い。カットの種類の指定は一切ない」
希少で室の高い宝石か…何に使うんだろう?
お洒落のためのアクセサリーにって事はないだろうし。
と言っても、この世界の宝石には魔法の威力を上昇させてくれる。みたいな特殊能力無いんだよな。
そう考えると、やっぱりお洒落のためのアクセサリーを作るためってこと?
う~ん。本人に何に使うのか聞くのが早いか。
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