第13話
「大精霊が表に立ってまで存在を秘匿しなきゃいけないものってこと?まぁ、とても貴重な木ってのはわかるけど……バルカンこの神聖樹についてあんまり言いふらしちゃ駄目だからね?」
居場所が広く伝わっている大精霊なんて此処のアルラウネだけ。
過去に、別の場所で。この場所には実際に大精霊が住んでいると話題になったときは直ぐに、そこから大精霊が居なくなってしまったという話はとても有名だ。
精霊ごとにも性格があるだろうし。此処の大精霊アルラウネは、そういった事を気にしないってだけの可能性も有るけど……まぁ、無いだろうな。
一番可能性が有りそうなのは神聖樹だろう。
神聖樹が生えているからここから移動する事は無いし。
自分のネームバリューを使ってまで存在を秘匿する木。
そんなものの存在をべらべらと喋って回ったら、大精霊の怒りに触れるなんて生易しいもんじゃすまないだろうからな。
「当然だ。見えてる逆鱗を積極的に触れに行くほど馬鹿じゃない」
まぁ、バルカンならそうだと思うけど念のためね?
「それにしても、コレ勝手に帰っていいのかな?」
「良いのかな?というか、そうするしかなくないか。大精霊は寝ている訳だし」
そうなんだよな~大精霊は花以外を地面に埋めて睡眠中。
声をかける為に起こすのも怖いし。
だからって黙って帰るのも怖い。
治療が完璧に終了したわけじゃないってのが問題だよな……
大精霊が起きた時に今の状態の神聖樹を見て
「あいつ中途半端なところで投げ出しやがった」ってなったら最悪だし……
いくら考えてもどちらが良いのか結論を出すことが出来なかったが。結局は早く家に帰って眠りたいという気持ちが勝って大精霊が起きるのを待たずに帰ることにした。
大精霊もわかってくれるでしょ。
━━━サイド:バルカン━━━
「成る程。ベルデ君のおかげで北の森の魔物騒動は収まりそうなわけか……しかし、大精霊が守護する聖エネルギーを放出する大樹の存在か……」
坊主は屋敷につくなり気絶するように眠ってしまったので、俺一人で国王陛下に直接今回の件を報告するという貧乏くじを引くことになってしまった。
まぁ、あれだけ魔法を連続で使って屋敷まで耐えただけでも大したものなので、強く文句は言えないが。
「はい。ベルデ殿は、その木を神聖樹と呼んでいました。そして、今回の件はどこかの誰かが大精霊ではなく神聖樹を枯らす事が目的で起こした事件だと」
「断定出来る程の証拠があったということか?」
「今回使われた改造虫というやつが木を食い荒らす蟻のような虫を改造したものだったと。死骸ですがサンプルを数体持ち帰って来ています。ベルデ殿も『神聖樹の病状を調べたときに名前がわかっただけで、後は姿と神聖樹の状況から、そう判断しただけだから、しっかり知識を持ったものに見てもらいたい』と…」
「成る程。まぁ、今聞いた感じ。的はずれな仮説というわけではなさそうだ。とは言え、専門家にサンプルを見てもらう必要は有るだろう。
直ぐに、優秀な昆虫学者を用意しよう」
「国王陛下。そのことについてなのですが
少し待っていただけないでしょうか」
「ほう…」
あ~胃が痛い。そりゃ。こっちからサンプルを持ち帰って来たので調べてくださいってお願いしたのに。
わかった超特急で手配するねって答えたら。
ちょっと待ってなんて返事をされたら、何いってんだこいつってなるのはわかる…けど、この件には大精霊が深く関わっているからな。
「ベルデ殿は神聖樹は大精霊の逆鱗とも言える存在である可能性が高いと考えています。同行した私もベルデ殿の考えは間違っていないと感じました。そして、陛下が協力を依頼する昆虫学者となると、かなり優秀な昆虫学者になるかと思われます」
「優秀であることが問題だと?」
こちらが言いたいことは既に理解しているだろうが。
あえてこちらに最後まで説明させるつもりらしい。
「優秀だからこそ。サンプルである改造虫を調査する事で神聖樹まで辿り着いてしまうことを危惧しているのです。見たこともない虫に木そんな存在を前に学者が冷静な状態を保てるでしょうか?結果、大精霊の特大の怒りを買うなんてことは避けたいというわけです」
「……なるほどな。一理ある。だが、調査はするべきという意見なのだろう?」
「はい。先日のワイバーンの件を含め、かなりきな臭いです。調べなかった結果、後手に回るというのは避けなければいけない。だから調査自体はしなくてはいけないと考えています。
なので、先ずは大精霊から話を聞き大精霊が怒らないラインを把握する必要があると考えています。ベルテ殿は自分なら全くはなしを聞いてくれないという事は無いだろうと…」
「良かろう。問題を解決した本人からの申し出というのもある。昆虫学者の選定は進めておくので話が進んだら直ぐに報告するように」
「かしこまりました。」
これで今回の報告は終わった。国王陛下は忙しい方だし。直ぐに国王陛下の執務室を後にする。
はぁ〜それにしても精神的にどっと疲れたさっさと坊主のところに………
廊下の反対側からリア王女殿下のお付きのメイドが手招きしているのが視界に入る。
どうやら、まだ帰ることは出来ないようだ。
帰ったら坊主に胃に効く薬草でも用意して貰おうかなと考えつつメイドのところに向かって行った。
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