第12話
「う~ん正直、この神聖樹を治療するより。無事な枝を探して分け木とかで新しい神聖樹を育てるとかのほうが現実的な気がするんですけど…って寝てる!?」
いや、頭部の花だけ地上に出して地面に埋まっている状態を寝ているって表現して良いのかわからないけど。
起こさないで下さいって書いてある看板が横に設置されてるし寝てるんだろう。
「バルカンが想像する以上に大精霊は弱ってたってこと?」
「そうかもな。で、どうするだ坊主」
「どうするもこうするも。一秒でも早く手を打たないと、この木は中を食い荒らされてへし折られちゃう」
改造虫の動きがドンドン活発になってきている。
どうやら、さっきまでは大精霊が何らかの方法で改造虫の動きを抑制していたらしい。
抑制じゃなくて駆除は出来なかったんだろうか?
まぁ、出来たらやってるだろうし無理だったんだろう。
「大精霊はこの神聖樹を治してほしいって感じだったよな」
何となくだけど。分け木で新しい神聖樹を育てるってのはダメそう。
「ちょっと荒療治になるけど。先ずは改造虫を取り出して駆除しないとな」
倒れないように神聖樹を支えるように木を生やして蔦で更にガッツリ固定する。
「上手くいったみたいだけど…気持ち悪っ!!っといくら支えがあろうが、このままだと折れちゃうな。バルカン、今から目茶苦茶集中するから。もし、この木から出てくる虫が俺を攻撃しようとしたら倒しといて」
どんな種類の虫でも誘引する食中植物をイメージして作り出して見たけど。
思ったより上手くいった。
改造虫が次々と神聖樹を食い破って中から出ていき食中植物の方に向かっていく。
形的にはウツボカズラをイメージしたので、袋の部分に次々と改造虫が落ちていく。
蓋を排除して消化能力を大幅にアップさせたけど。それでも処理が間に合わなそうだな。
必要になるかもと思って用意しておいた魔力回復ポーションをがぶ飲みして食中植物を複数作り出す。
取り敢えずこれでなんとかなるだろう。
改造虫がいなくなった部分から再生させるために植物専用の回復魔法を何度も使い傷を治療する。
俺の魔力が枯渇寸前になるたびに魔力回復ポーションを飲み魔力を回復させて植物専用の回復魔法〈プラントヒーリング〉を使い続けた。
それにしても、ポーションが一本が30mlで良かった。
300mlとか飲まないと効果が出ないとかだったら胃の容量限界のせいで何度も何度も魔力を回復させることは出来なかったはずだ。
「……よし。これで神聖樹は一安心だな」
植物専用の鑑定魔法〈ボタニー〉を使って神聖樹の治療が最低限終わった事を確認する。
想像以上に食中植物が役に立ってくれてホントに助かった。改造虫が神聖樹の中に残っている状態じゃ〈プラントヒーリング〉で治したって
またすぐに食い荒らされて意味が無い。
神聖樹の中にいる状態で駆除するにも神聖樹自体にもダメージを与える事になりそうだったし。
まぁ、食中植物目掛けて神聖樹を食い破って出てきている訳だから十分ダメージは入っているんだけど。これ以上の方法を短い時間で思いつく事が出来なかったからな。
まだ神聖樹が完全復活したわけでは無いけど。改造虫は全部処理できたし。最低限の治療も出来た。ここからは時間をかけて治療させて貰おう。
魔法を使うと魔力だけじゃ無く肉体的、精神的にも少し消耗する。
今日は魔法を連打しすぎて、もう疲労がピークで体が限界だ。治療を続けるなんてとても出来ない。
それに、いくら一回の量が少なくても。何回も使い過ぎてもう飲めないぐらいお腹いっぱいで残りの魔力も心許ない量がだからね。
「それにしても、神聖樹から放出される聖エネルギー…凄まじいな」
まだ、完全復活したわけじゃ無いのに周囲がキラキラし始める程の聖エネルギーを放出し始めている。
聖属性のエネルギーってだけで相当珍しいのに視認が出来るレベルの影響を与えるって相当すごい事だ。
完全復活したらどうなっちゃうんだろう?
まぁ、聖エネルギーは幾らか濃かろうが人間には一切害は無いし困ることは無いか。
「神聖樹の治療のために少しの間、俺が此処に通う必要は有るけど。これなら北の森に魔物が出現するようになったという問題は解決って事で良いよね」
神聖樹から放出され始めた聖エネルギーが俺たちが通ってきた入口から北の森に流れて北の森の聖エネルギーの量も元通りになるだろうからな。
直ぐに魔物が出現しない元の北の森に戻るだろう。
「それにしても、聖エネルギーの発生源は大精霊ではなく、その木だったんだな」
そう言いながらバルカンが感心したような表情で神聖樹を眺める。
確かに北の森に溢れる聖エネルギーは大精霊のものってのが人間の認識だったもんね。
それにしても、バルカンの鎧をよく見ると。汚れて細かい傷が沢山ついている。神聖樹の治療に集中している間。思ったより俺の方にも改造虫が来てたみたいだな。
まぁ、神聖樹に直接触れてるわけだし当然といえば当然か。
元々、俺を守るのがバルカンの仕事だとは言え今回は準備段階の情報収集から、かなり頑張ってもらっているし。何か特別報酬を考えておかないとな。
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