第5話

「はい、これでいい?」


リアはそう言ってトレイ手渡してきた。

これを使えば透明な下敷き的なものができそう。

問題は俺が考えてる樹液を作れるかだよな。

そもそも樹液をちょくで作り出せるのか?

まず、樹液の取れる木を作ってそれから樹液を採集しなきゃいけなかったら今作るのは無理だし。

やって見なきゃ分からないし出来なくてもリアが落ち込むだけ…。

ダメだ絶対成功させる。


欲しい樹液をしっかり想像して手の平をトレイに向けてから魔力を集めて植物魔法を発動させた。


成功だ!手からトレイに向けて樹液が出てる。でも果物を作るより魔力の消費が大きい

最低限板にできる量が溜まったのを確認して魔法を使うのを止めた。


「魔力を結構消費したみたいだけど大丈夫?」


「大丈夫。魔法が使えるようになったのが今日だから、魔力がまだ少ないからね」


魔力は魔法を使って消費すると鍛えられる。

長距離走る練習すると持久力がついたり、筋トレで筋肉がつくのと同じ。

上限は人ごとに違うので訓練すればするだけ無尽蔵に魔力が増える訳では無いけど。


「後はこれが固まった後に透明な板越しに人を見て魔眼が発動しなければ成功」


樹液はすぐに固まる訳じゃないから何かで時間を潰さないと。

樹液をちょくで出せるなら果物をジュースの状態で出すこともできる?


「リアコップ2つ出して」


「いいけど別の実験するの?」


「まあそんな感じ」


コップを受け取ってリンゴ100%のりんごジュースを想像して植物魔法を発動したら普通にジュースが出てきた。


「りんごのいい匂いがする!ジュースに加工した状態でも出せるんだね」


リアがりんごのジュースを取って飲もうとしたので一旦止める。


「初めて作ったものは最初に自分で試してからじゃないと不安だからちょっと待って」


「そういう事。私はベルのこと信じてるから大丈夫だよ!美味しい!」


止めた理由を聞いた後それなら問題ないとそのままのみ初めてしまった。反応的に問題なさそうだ。


今度は紅茶が出来るか試してみよう。

成功したら熱くもなければ冷たくもない中途半端な紅茶が出てくると思うけど。


結果出来なかった。

りんごジュースとの違いはなんだろう?

加工手順の多さかな?

りんごジュースは潰して絞るだけでできるけど、紅茶はもっと複雑な加工が必要だから出来ない。

樹液だって木を傷つけて出てきたのを採集するだけでいいから単純な作業で集められる。

この法則があってたらお茶系は難しそう。

もっと試してみたいけど魔力量的に限界が近づいてきてるし、最後に自分が飲む分出して今日は終わりにしよう。


自分の分のりんごジュースを出してリアと飲みながら話をして時間を潰した。


「ちゃんと板になってる!気泡が混じったりしてるけど、実験用だから気にしないことにしよう。はいこれ通して人を見て魔眼が発動しちゃうか試してみて」


リアに樹液出できた透明な板を手渡した。

リアはそのまま両手で持って板越しに人を見てそのまま固まっている。

その後板無しで見たり、板越しで見たりを繰り返してる。

成功したのかな?


「板越しに見ると若干感情を読み取りずらくなる!」


若干か〜。方向としては間違って無かったぽい。板をもっと厚くすれば効果は上がるのか、樹液を作る時にもっと魔力を込めれば品質が上がり結果、効果が上がるのか。

そもそもこの樹液じゃ何をやってもこれが限界という可能性もある。


どっちにしろ魔眼の効果をオンオフできるようにするには今の俺じゃ無理。色々実験しないと。


「なんでそんなに悲観的なの?最初の実験で効果が少しだけど出たのに。今まで魔眼が嫌なら目を潰すしかないって言われてたのに。大きな進歩だよ!」


「もしどれだけ実験してもこれ以上の効果が出なかったら?そしたらリアに無駄な希望を持たせたことになる。若干だけど成果が出てしまったが為に」


「確かに魔眼が自由に制御出来るようになったら嬉しいけど、出来なくてもそこまで絶望しないと思うよ。魔眼を全然怖がらないベルと友達になれたから。ベルと会えなくなる方が嫌」


そこまで言ってくれてすごい嬉しいけど、領地持ちの貴族の息子だから領地に帰るし、家は辺境伯家だから領地は勿論王都から遠く離れた辺境にある。

具体的に言うと馬車で向かうだけで2ヶ月、往復だと4ヶ月かかる。

頻繁に会うのは難しいけど大丈夫かな?


「鑑定の儀と今回の社交界で王都での予定は終わった筈だから、近いうちに領地に帰ることになるから頻繁には会えないけどね」


「そうだった領地持ちの貴族の子だから王都に住んでるわけじゃ無かった!しかも遠いから頻繁にも会えない…。」


めっちゃ落ち込んでる凄く悪いことをした気分。


「…ねぇベル。王都にも来た時に泊まるための屋敷はあるでしょ?ベルだけそこに残ってくれれば何時でも会いに行ける。お願い!

ベルと一緒にいたい」


どうしよう、リアと一緒にいたい気持ちが無いわけでも無いけど10歳で独り立ちするのはちょっと(精神年齢い的にはおっさんだけど)な〜。

どうすれば良いかそのまま悩んでると突然声をかけられた。


「リアはアルバの息子をとても気に入ったみたいだね。それだけで連れてきてよかったと思うけど、王都で1人で残ってていうのは可哀想じゃないかな?彼に家族を残して辺境についてきて言われたらリアも困るでしょ?

成人してたら別にいいけど2人とも未成年だしね」


「お父様…確かにその通りですけど…初めてできた友達なんです…」


何となくわかってたけどリアのお父様つまり話に入って男性は国王陛下その人だ。

父も陛下の後ろに控えてるな。


このままだとリアが可哀想すぎるし、

上手くいく方法が無いだろうか考えるのだった。


読んでいただきありがとうございます。






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