第2話

「時間もないので庭に行って植物魔法を試して来ます」


屋敷に着いた瞬間、そう言って馬車から飛び降りた。

一分一秒が惜しいからね。このタイミングで離脱しなかったら、貴重な時間が大量に消費されてたはずだ。


父が何か言ってるけど、ひとまず無視。

何か起きるって決まったわけじゃ無いけど、

何か起きたときに最低限自衛ができるように植物魔法で何ができるか試しておかないと。


「よし無事庭に到着したぞ。文句は言われるだろうけどしょうがない。だって植物魔法を使いたかったから!」


スムーズに魔法が使えるようになるために小さい時から魔力制御の練習はそれなりにしてきたので簡単な魔法なら問題なく使えるはず。


「すぐに食べれるミカンでも作ってみよう」


手に魔力を集めてミカンをイメージして植物魔法を発動させる。

手の上がピカっと光った後ミカンが1つ手の上に現れた。


「おー成功した!味はどうかな?」


ミカンの皮を剥いて1つ口の中に入れる。


「しっかり甘い。魔力だけでこんなに美味しい物を作れるとか植物魔法サイコー」


次はなににしようか考えてると一人のメイドさんが駆け足でこちらに向かってきてた。


「ベルテ様、魔法を使ってみたくなるのはすごく分かりますが社交界に出る為の準備は時間がかかりますので屋敷へお戻りください」


「別に化粧をするわけじゃないんだし後30分ぐらい問題ないでしょ?30分したらちゃんと戻るから」


「30分ぐらいなら…いやダメです。ベルテ様が社交界デビューに失敗したら大変ですので」


クソダメか!どうにかできないかな?

と思ったけど駄々を捏ねても迷惑かけるだけだし大人しくいうこと聞いておくか。


「分かった確かに社交界で失敗して恥をかくのも嫌だしね。大人しく従うよ」


結果メイドさん達に時間ギリギリまで着せ替え人形にされるのだった。


「酷い目にあった。別に最初に着た服で問題なかったと思うんだよね、わざわざ何着も変えなくても」


「そんなことは無いです。ベルテ様は元がいいのに服とか気にしなさすぎなんです」


「俺の元が良いって家族みんなで並んだ状態でも言える?」


「それはちょっと…。でも、ベルテ様が悪いんじゃなくて他の皆様が整いすぎてるだけです。一般基準では充分イケメンです」


雇い主の子供に対してブサイク面と向かって言えるわけないか。

本当にイケメンなら服を必死に選ばなくてもなんでも似合うだろうし。


「気を使わせちゃって悪かったね。準備も終わったし父上のところに行くよ」


「父上〜準備が終わりました〜」


ノックをせずにドアを開けて父がいる部屋に 入る。ソファーが空いていたので、ソファーに座って魔法でイチゴを作ってイチゴを食べる。イチゴもしっかり甘い酸味も程よい感じであってとても美味しい。


ちなみにイチゴはこの世界にないはず、暇つぶしで植物図鑑等を読んだ時に載って無かったから間違いないと思う。

人間が見つけてないだけで実は存在する可能性は有るけど。


重要なのはイチゴが作れたという事は、この世界で存在しないor俺が見た事が無い植物でもしっかりと想像が出来れば作れるってことになる。

米に一気に近づいたな!と言っても米自体作れても最低でも玄米に加工欲を言うなら精米する必要が有るからすぐには食べられないけど。

そういえばさっきから父がずっと喋りかけてきてるな。

米について必死に考えてたから全然聞いてなかった。


「どうしたのですか?父上」


「ようやく反応した。ベルテはそんなに社交界に出るのは嫌?」


「勿論!寧ろなんで父上は社交界に行かせたがるんですか?」


「経験のためかな?大人になって失敗するより、今失敗した方が恥ずかしくないでしょ」


確かに一理ある。社交界なんて面倒くさそうだし出たくもないけど 、植物魔法のことを考えると何事も無く平和に暮らすってのは難しそうだし、色々経験しといた方が将来のためか。


「父上の言う通りですね。それに父上のお金で生活してる訳ですからせめて自分で稼げるようになるまではしっかりと言う事を聞くべきだと自覚しました」


「色々ツッコミたいがまあいいや。で、ベルテが食べてるその赤い果物?で良いのかな?見た事ない物だけど」


「なんか甘酢っぱくて美味しい果物が欲しいなって思って植物魔法を使ったらできたの!大量に作れるようになったら大儲けできそうだよね」


実際はイチゴを知ってるから簡単に作れたんだけど、それを正直に話すと前世の記憶が残っててとか説明しなきゃ行けなくて色々問題なので、運良くできたできた程度の説明をして詳しくは分かんなーいって言って逃げるしかない。



「そんなに美味しいの?見た目は結構グロテスクだけど」


イチゴって表面に種が沢山ついてるから確かに気持ち悪いって感じちゃうのも仕方ないか。でも1回食べればそんなのどうでも良くなると思うんだよね。

ひとまず無理やりにでも食べさせよう。


「確かに見た目はイマイチかもだけど味は美味しいよ!騙されたと思って1口食べてみて」


「そこまで言うなら…」


父が恐る恐ると言った感じで口の中に入れていた。

でもそれは最初だけですぐに驚いた顔をして

残りの部分も食べてしまった。


「確かに味は最高だと思うよ。それこそ1回食べれば見た目が気にならなくなるぐらいに、でもその1回のハードルが高いかもね」


地球じゃイチゴはそういう物として普通にあったから気にせず食べるけど。

イチゴを見たことがないこの世界の人からしたら見た目の難易度は想像以上に高いわけか。

何か方法を考えないと。


そう思いイチゴの販売方法について考えるベルテだった。


読んでいただきありがとうございます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る