第29話憧れ
新年度に入って次の日、今日から俺たちは授業だけど澪はまだ授業は始まらない。
「お前、いつもそれ飲んでるよな」
「ん? カフェオレは僕の一部だもん」
そう言いながら僕はカフェオレを飲む。 いつの間にかいた武人を見ながら昨日母さんに渡された世界史のテキストを眺める。
これを参考にしてと言われて渡されてた。
「面白いかそれ」
「面白いよ、教科書にないものもあるから」
そう言いながらページをめくる。 武人は僕の頭とぶつかりそうなほど身を乗り出して僕の見ているテキストを覗き込む。
「近い」
「じゃあ、俺にも見えるように見せてくれよ」
そう言われて僕はテキストを横にして武人も見えるようにする。
「なにしてんの?」
「おう。 おはよう、結花」
僕と武人が見ているテキストを見ようと覗き込むが僕と武人が邪魔してテキストが見えない。 一生懸命テキストを見ようとしているがそれをわざとらしく邪魔をする武人、それをみた結花さんは額に青筋を浮かべた。
「武人、そこまでにしとかないと」
「怖気ずいたのか拓斗」
そう聞いてくる武人に僕は内心で両手を合わせて合掌する。 起こっている結花さんを僕が止めようとすれば怒りの矛先がこちらに飛んでくるかもしれない。
「武人? ちょっとこっちに来なさい?」
「え? な、なんで?」
結花さんに襟元を引きずられて教室から連れ出されていく。 僕はそれを見て苦笑いが引っ込まなかった。
「あれどうしたんですか?」
「あ~、あれは武人が悪いから気にしなくてもいいよ」
武人が結花さんに引きずられて行くのを見ていた常坂さんがこっちに来てそう聞いてきた。
俺は常坂さんのほうを見てテキストを常坂さんが見やすい位置に置く。
「これを見ようとしてた結花さんの邪魔を武人がして、それに怒った結花さんが武人を連れて行った」
そう言うと常坂さんは僕と同じように苦笑した。
「二人は1年の時から変わってないんだ」
「変わってないって?」
ついそう聞いてしまった。 僕は結花さんと一緒にいる武人をあまり見ていないけど、常坂さんは一緒にいる二人を見たことがあるみたいだ。
「今とほとんど変わりませんよ。 いつもケンカしててそれでも仲が良くていいカップルですよ」
そう若干呆れたように笑いながら言った常坂さんの目はどこかあの二人にあこがれを抱いているように見えた。
「うらやましいよ、友達のことをそう言えて」
胃から液体が逆流しそうになるのを無理やり抑え込んで笑う。 常坂さんには、僕が自嘲気味に笑っているように見えただろう。
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