第27話新年度

 有紗の誕生日からあっという間に四月に入った。 そこから、澪の入学式の準備、新年度を迎えるための準備で忙しい日々を送っている間に新学期を迎えた。


「澪ちゃん、準備は終わってる?」

「終わってるよ」


 あいも変わらず有紗は澪に対して心配のまなざしを送っていた。

 それを少しめんどくさそうに返事をする澪を見てクスッと笑ってしまう。


「有紗、そろそろ時間だぞ」

「え!? もうそんな時間!?」


 驚いている有紗も時間を見て、食べかけの食パンを口の中に放り込んで準備をする。


「ちゃんと歯磨けよ」

「ふぁい」


 そう返事しながら二階に上がっていく有紗を見ながら俺も学校に行く準備を進める。



 学校の前に来ると後ろか肩を組んでくる人物がいた。 まぁ、一人しかいないんだけど。


「武人、朝から暑苦しい」

「おはよう、拓斗。 暑苦しいとは何だよ」


 そう言い合いながらクラス票を見に行く。

 二年生に上がったことで、クラス替えが行われている。 それが、校舎前に張り出されているから、それを見る。


「おっ、またおんなじクラスじゃん」

「そうだね」


 クラス票を見ていると、クラスの中に有紗、常坂さん、結花さんの三人の名前があった。 それを見て、少し自分の頬が引きつっていることが分かった。

 それに対して武人は楽しそうにケラケラと笑っている。


「結花もおんなじクラスじゃん」

「絶対に面倒になる」


 そう朝からげんなりしながら俺と武人は教室に向かう。 教室に入って黒板に張り出されている席次表を見て自分の席に座る。

 その前に武人が座る。 今回は、武人の前に二人ほどいるため廊下側の真ん中あたりになった。

 ここからいつものようにカフェオレを飲もうとストローを刺したところで後ろから背中を叩かれた。


「おっはよー!」

「おう。 おはよう、結花、亜紀さん」


 後ろを振り返りながら僕も挨拶をする。 元気そうな結花さんとは対照的に常坂さんはうつむき気味にこちらを見ていた。


「常坂さんもおはよう」

「……おはようございます」


 ゆっくりと顔を上げて僕の目をしっかりと見てそう挨拶する常坂さん。 僕も常坂さんに何か返そうとするとまたうつむいてしまった。

 それを見ていた結花さんは呆れたように笑っていた。 武人も俺のことをおかしそうな目で見ていた。


「なんだよ」

「別に、何でもないけど」


 そう言った武人の目が少しづつ左を向いていくのがわかる。

 問い詰めようとする前に教室の中が騒がしくなった(特に男子が)。


「金崎さんが来たみたいね」

 

 結花さんが面白くなさそうに有紗のほうを見てそう呟いた。

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