第25話彼女2
武人に連れられるまま二駅先のカラオケ店の前に来ていた。 武人が言うには後二、三分で来るみたいだった。
「そういえば、二人のなれそめは?」
「突拍子もないこと聞くな」
「聞きたくなってさ」
まさかの質問に驚かれたけどゆっくりと語ってくれた。
「今年の体育祭で知り合って、文化祭で告白した。 それだけ、これ以上は有料だからな」
そう言った武人の頬が少し赤くなっていたことから、彼女さんのことを本当に好きなんだなとわかる。
僕もそういう相手が欲しいなぁと思うと、有紗のことが頭の中に浮かんでくる。
「あぁ、クソ」
武人に聞こえないほどの大きさで呟く。 有紗の隣で立てるような人間になりたいと思っている。
「おい、来たぞ。 おーい! こっちこっち!」
物思いに更けていた僕を肘でつつかれて現実に引き戻された。 目の前を見ると黒のショートカットでかわいらしい笑みを浮かべ、チェック柄のマフラーをつけた女の子がこちらに手を振りながらやってくる。
なんか、家にいる有紗に似ていた。
「初めまして
「こちらこそ初めまして僕は
お互いに挨拶をして、結花さんを見る。 先ほどのかわいらしい笑みに似ているが、どうしてもあざといと思ってしまった。
おねだりをしてくる澪に似ている。
「拓斗さんはいつも図書室にいる人ですよね?」
「そうですね、お昼はいつも図書室にいますね」
「やっぱり! 亜紀がいつも拓斗さんの事を楽しそうに話すんですよ」
結花さんは武人つながりかと思っていたけど、常坂さんつながりか。
楽しそうに話しているということに少し引っかかりを覚えながら僕は「へ~」と相づちを打つ。
常坂さんと話すことはあっても、ほとんどが事務的なものになっているから返事に困ってしまう。 本当に楽しそうにしてもらっているのかもわからないから曖昧な表情になる。
「ふふ、本当に亜紀に聞いてた通りになった」
「な、何が?」
「そろそろ、中入ろう。 武人」
聞き返そうとしたけど、その前に結花さんは武人を引っ張って中に入っていた。
常坂さんが結花さんにどんなことを言っていたのか気になるが、聞くタイミングを失ってしまった。
「本当に俺のことをなんて言ってたんだ」
カラオケ店の前でぼやくがそれを聞いている人は一人もいなかった。 まぁ、いいかと勝手に結論付けて武人たちが入っていった後ろをついていく。
武人たちに追いついたときには丁度受付が終わってこれから部屋に案内されるところだった。
それからは、普通にカラオケを楽しんでしまった。 聞きたいことがたくさんあったのに普通に楽しんで帰路についたときに聞きたいことがあることを思い出した。
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