第20話 受験後
昨日野菜がたくさん余っていたのを見てしまったから、昼は焼きそばにした。
「お前、少しは落ち着けないのか?」
今日の朝からリビングにあるダイニングテーブルの周りをグルグルと回っていた。
初めはまたかと思って無視をしていたが、数時間目の前でやられるとさすがに鬱陶しくなってくる。
ジュワァァと肉と野菜の焼けるいい匂いが鼻孔をくすぐる。
「そろそろできるから机の上開けろ」
「はぁい」
有紗はそう返事をすると机の上を片付けて、机を拭く。
俺はそこに鍋敷きを置いて、焼きそばソースで大味をつけた焼きそばの入ったフライパンを置いた。
「皿とってきて食べるぞ」
そう有紗に言って焼きそばを食べ始める。 時間的に正午を少し過ぎたぐらいの時間を時計は刺している。
「そういえば、あいつ弁当ちゃんと食ってるかな」
「食べてるんじゃない。 私はちゃんと受験を受けられてるかどうかのほうが気になる」
「学校に行ってんだから大丈夫だろ。 それに、今日はちゃんとお前と一緒に最終確認してんだろ? だったら大丈夫だろ」
大口で焼きそばを食べる。 それから、俺と有紗の間に焼きそばを食べ終わるまでの間会話が一つもなかった。
これ以上は、澪自身が頑張らないといけないことだからということで俺と有紗の中で結論が付いたのだと思う。
♦
焼きそばを食べ終えて、それから一時間後。 昼の二時を過ぎたころ、二人でまったりしているとガチャッと玄関が開く音が聞こえた。
「ただいま~」
「お帰り、ね、ね、どうだった?」
「うん、全部できた!」
そう元気な声が聞こえて俺は一回伸びを入れる。 座っていたソファーを立って澪と有紗のいる玄関に向かう。
「今日は何が食べたい?」
「お刺身!」
「オッケー、有紗。 ついてきてくれ」
そう言って買い物カバンと財布を持ってもう一度玄関に立つ。 もうすでに準備を終えた有紗がまだ? という表情でこっちを見ていた。
「澪はどうする?」
「寝るー!」
「わかった、それじゃあ、玄関閉めていくからなー!」
そう言って俺と有紗は出かける。 魚一匹さばければいいけど、さすがに俺一人じゃ、魚はさばけない。
「どこに行くの?」
少し歩くと有紗がそう聞いてきた。 何にも言わずに有紗を連れてきたから気になっているようだった。
「少しだけ特別なところ。 というか、近くに魚屋ができてたからそこで魚をこうかなと」
「わかった、そこでボクに選んでほしいんだね」
「そいうこと」
それから、二人でどんなのを買えば澪が喜ぶか話し合った。
♦
結局のところ、魚はタコ、イカ、マグロなどの赤身、それから白身魚を買った。
「これ買ってきたの?」
「そう、お前が頑張った記念にな。 もし、合格したら父さんにでも好きなものを頼め」
机の上に並んだ刺身に目を輝かせながら澪はそう言った。
俺は、澪のご飯を持ってきて「食べていいよ」と言うと、好きなだけ刺身を食べ始める。 父さんと母さんの分は避けているとはいえ、澪の食いっぷりには苦笑してしまう。
「さ、有紗、俺たちも食べようぜ」
有紗に食べるように促し、お互いにご飯を持ってきて食べ始める。
今日の夕食は楽しい食事だった。
次回、バレンタイン
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