第18話 新学期

 年が明けて一度父さんの実家に行き、学校が始まった。


「おはよう、拓斗」


「おはよう、武人」


 いつものようにコンビニでカフェオレを買って飲んでいると目の前に武人が座った。

 僕は一度カフェオレを飲む手を止めて目の前に座る武人を見る。


「あけおめ、今年もよろしく」

「おう!」


 武人はそう言うと笑った。 

 こいつにはいつか本当のことを話てもいいかもしれないと思ってしまう。

 

「なぁ、冬休みの間どう過ごしてた?」

「普通に家でゴロゴロしてたよ」


 僕がそう言うと武人は「あぁ~」とそう呟きながらうなだれた。


「ど、どうした?」

「お前も暇なら誘えばよかったぁ」


 武人はゴンと音を鳴らしながら僕の机の上に倒れた。

 かなりいい音が鳴って倒れたから少し心配する。


「お前も初詣とかクリスマスパーティーとかに誘えたなって思ってよ」

「あ、その時は暇じゃなかった」


 そう言うともう一度、ゴンと机に倒れる。 それを見て僕は笑う。 

 武人は僕が笑っているのを見て殴ろうとこちらに拳を振るう。 その拳を受ける。

 思っていた通り拳には力が入っておらずポスポスと胸に当たる程度に止まっていた。

 もし、これが本気で殴れば肋骨にヒビがはいるかもしれない。 それをわかって、というか怒ってもないのに本気で殴るわけない。


「わかった、今度どこかに行こうか」

「マジで!?」


 そう言うと殴っていた手を止めてガシッと肩を掴んできた。


「それじゃあ、今度会ってほしい人がいる!」

「それ、お前の彼女さんだろ」

「よくわかったな。 お前にも彼女の素晴らしさを知ってほしい!」


 はぁ〜と深いため息をついてカフェオレを飲み始める。

 飲み終えてカンッと音を鳴らして机に置くと武人を見る。


「わかった、今回だけな」

「愛してるぜ!」


 そう言って抱きつこうとする武人の額を抑える。

 しばらくの間そうしていると武人は諦めたようにチェッと舌打ちをしてもとの体勢に戻った。


「なぁ、お前は彼女作ってねぇのか?」

「ん? あぁ、そうだけど」


 そう言うと少し残念そうな顔を武人は作った。


「お前って妹といるか?」


 そう聞かれてなぜこんなことを聞くのかと思ってしまった。


「いるけど、どうしたのか?」

「昨日、たまたまお前が女と歩いてるのを見たから気になってよ」

「あぁ、妹のことか、昨日、荷物持ちとして連れて行かれたんだよ」


 俺はそう言いながらも内心で危ないと思ってしまった。

 確かに昨日は澪の荷物持ちとしてついていったが、有紗も一緒に着いてきていたからもしかして見られたかもしれないと危ないと思う気持ちの奥でそう考えていた。


「そろそろ始まるぞ」


 そう言って武人を前を向かせて少し気持ちが緩んでいる自分の心を引き締めるために自分の頬を叩いた。

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