第17話二年参り②

 俺は学校の女子と有紗が話しているのを遠くで眺めるしかなかった。 参拝は人が少なかったから、結構早く終わったけれども二人を探すのに時間がかかった。

 見つけたときには、年を越す数分前ぐらいだった。


「隠れる必要はなかったんだけどな」


 年を越していることをスマホの時計を見ながら、学校の女子と別れたのを見て二人の前に姿を現す。


「見てなくてもよかったのに」


 戻って来て早々に有紗にそう言われて俺の心にグサッと刺さった。

 俺は、ごまかすように頬をかきながら有紗を見た。


「向こうで甘酒配ってたからもらいに行ってくるわ」

「あ、逃げた」


 後ろから有紗の声が聞こえたがその声を無視して俺はもう一度屋台のほうに歩いて行った。



「ほれ、甘酒」

「そっちは?」


 有紗が紙コップを受け取り、俺が手に持つ紙コップを見てそう言った。 有紗は、俺が甘酒を飲めないことを知っているから俺が手に持っている紙コップが気になるのだろう。

 対する身は俺が持っているのに興味がないようですでにもう甘酒を飲んでいる。

 

「おしるこ」

「お餅は入ってる?」

「入ってないよ」


 そう言うと有紗は興味をなくして、手元にある甘酒を飲み始めた。

 別に餅が入っていなくてもおしるこは普通においしいのに何を言ってるんだか。



 温かい飲み物を飲んで体がほんのり暖かくなったところで俺たちは神社に向かった。


「なにお願いするか決まったか?」

「二回連続で行くもんじゃないと思うけど」

「別にいいだろ」


 俺はそう言って神社に向かう参道をゆったりと歩いていく。

 歩いている間何をお願いするか考える。 澪の受験がうまくいきますようにとか、今年も健やかに過ごせますようにとか、無難なものが思いつく。


「なぁ、何かいいの思いついたか?」

「それさ、ボクが思いついたとしてもいうと思ってる?」


 ジト目で正論を叩きこまれてしまった俺は有紗から視線を逸らす。

 澪は少し眠そうに目をこすっているが倒れるほどではなさそうだった。


「澪、眠いなら帰るか?」

「ん、大丈夫」


 そう言われ俺はそうかと、笑った。 少し昔の自分を見ているようでおかしかった。

 俺が笑っているのがわかった澪は、不服そうにこちらを見ているのを見てもう一度笑みを浮かべる。 さらに不服そうな顔がもっと不服そうになっていっていた。


「こら、拓斗も澪ちゃんで遊ばないの」


 そう言われて、笑みをひっこめる。 澪も一応不服そうな顔はひっこめていた。



 それからしばらくしてやっと俺たちが参拝できる順番が来た。

 さっきまでは、待つということがなかったが、年が明けたことによって人が増えたからだろう。


「なにお願いした?」


 参拝が終わり帰路について俺はそう言った。

 有紗と澪がそう言った俺のことを汚物を見るかのような目で見てきた。


「いうわけないじゃん」


 そう言われて俺はガクッとうなだれるのだった。

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