第14話クリスマス
『拓斗、今日ひよりたちも来るから豪華な料理よろしく』
という電話をケーキを焼き終えた昼の三時過ぎに来た。 母さんが言っているひよりさんとは、有紗のお母さんのこと、つまり有紗の親と一緒にクリスマスを楽しむからという電話だ。
これどうしよう、冷蔵庫にそこまで入っていないから豪華と言えるほどの料理ができるわけない。
買い物に行こうとカバンを手に持つと焼きあがったケーキを眺めていた澪と有紗がこちらを見つめていた。
「どこに行くの?」
「買い物に行く」
「行ってらっしゃい」
そう言われて「はいはい」と適当な相槌を打って買い物に出かける。
♦
結局、近くのスーパーにはよさげなものがなかったため、一駅行ったところにある(前に行ったところとは別の場所)複合施設で買い物することになった。
目的のものも買って、家に着くころには気が付くと四時を回っていた。
そろそろ家に帰ってきてる頃かなと思っていたが、まだ帰ってきてはいなかった。
「帰ってくる頃にできたらいいけどなぁ」
誰もいなくなっていたリビングで呟いた。
ケーキは、冷ますために置いといてくれと言っていたからかそのまま置いてあった。 そのケーキを買ってきたものと一緒に冷蔵庫に仕舞い、夕食を作り始める。
♦︎
母さんたちが帰ってきたのは、一品目が仕上げに入ったぐらいの時だった。
「父さんは?」
「お酒買いに行ってもらってる」
「あぁ、もう少ししたら出来上がるから座ってて」
「はぁ〜い」
そう返事して、椅子に座る母さんを見て、ひよりさんのことを思い出した。
「ひよりさんは?」
「着替えてくるって」
ふぅ〜んと言って俺は料理を仕上げる。
ギシギシと階段を降りる音と一緒に楽しそうな会話の声が聞こえる。
「有紗、澪。 そろそろ出来るから手洗ってこい」
「「はぁい」」
リビングの扉が開いて、二人が顔を覗かせたとほぼ同時にそう言った。
♦︎
いつのまにか有紗が居なくなっていた。
澪は、食べ終えるとさっさと自分の部屋に戻った。
食器の片付けのためにリビングに残っていたが、酔っ払いの相手が面倒くさくなったから、片付けを後回しにしてリビングから出た。
自分の部屋に戻る途中、ベランダに有紗が居た。
「月が綺麗だな」
「ッ……びっくりした。 声ぐらいかけてよ」
声をかけるとビクッとした後にため息をつきながらこっちを向いた。
「ボクは雪が良かったな。 そっちの方がロマンチックでしょ」
「電車が止まるからヤダ」
口をへの字に曲げてそう言うと、有紗は頬を膨らませていた。
「拓人ってそういうところあるよね」
「ひねくれてるってことか?」
「よくわかってんじゃん」
そう言われて俺は、ケケケッと笑ってやる。
自分でやってみて似合わないと思ってしまう。
「まぁ、今日は雪が降らなかったけど、年明けすぐに降るって言ってたぞ」
「本当に?」
「あぁ」
「楽しみ」と呟く有紗を見て俺も「楽しみだな」と言い返した。
作者狐火キュウより
次回は長いはず
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます