第4話核心

 日が沈むのが日に日に早くなっていき、6時前ですでに暗くなり街灯の光が辺りを照らしていた。

 コンビニでコピーを取って駅に向かった。

 有紗からの連絡から計算して駅に着いた頃に有紗も駅に着くころだと思う。


「それにしても寒いな」


 近くの自販機でココアを買って俺は駅に向かった。

 


 買ったココアを飲み終えた頃にマフラーを巻いた有紗が目の前にやってきた。


「お帰り」

「待たなくてもよかったのに」

「こんなに暗いのに一人で帰って来いって言うわけないだろ」


 はぁっと、ため息をつきながら有紗の頭をなでた。

 そのまま「ほら行くぞ」と言っておれは歩き始めた。

 その後ろで有紗の顔が赤くなっていることに気が付かなかった。


「あっ、そうだ。 今日泊まるから」

「は?」

「澪ちゃんに話しようっていわれたからさ」

「それで泊まるのかよ」

「そういうこと」


 いたずらが成功した子供のような笑みを浮かべた有紗にまた深いため息をついた。




「ただいま」

「お帰り、牛乳買ってきた?」

「あ、忘れてた」


 家の目の前で荷物を取りに帰った有紗と別れて家に帰るとそう言われた。

 有紗との話に夢中になり過ぎて母さんに頼まれていたものを忘れていた。


「ご飯は作っておくからコンビニで買ってきて」

「了解」


 そう言われてもう一度コンビニ行って牛乳を買って家に帰ると母さんと有紗が何かを話していた。

 何を話しているのか分からなかったが、母さんが満面の笑みで有紗の肩を叩いているところだった。


「何してんだよ」

「特に何も、ねぇ」


 胡散臭いと思ったけれども口には出さない。 出したところで何にもならないし、実際に何かしているわけではなかったので無視をする。

 俺の横を通り抜けようとした有紗にコンビニでコピーしてきたプリントを渡した。


「お前用の問題と澪用な」

「いつもありがとう」


 そう言って階段を上がっていく音が聞こえる。


「あんたもあんたよねぇ」

「なにが?」

「澪の勉強の進み具合も知ってるのに有紗ちゃんが教えてるっていうことにしていることよ」

「仕方がないから、俺は有紗に助けられているからな」


 自嘲気味に笑い、牛乳を冷蔵庫にしまった。 そこからは俺も今日の復習と明日のために予習をしておく。

 高校は言ってすぐに2年まで予習はしているけれども、忘れないように定期的に復習と予習を繰り返している。



 晩御飯を食べ終えた有紗と俺は俺の部屋にいた。


「で、なんで昨日と今日やったところがまるっきりできていないんだ?」

「えっと、その~」

「はぁ、いつものように復習せずに遊んでたんだろ」


 髪をいじりながら気まずそうにそう言った有紗に俺は深くため息をついた。

 有紗はいつもテストが終わった後に気が緩んで勉強を全くしない癖がついているから、いつもこうやって有紗の勉強を見ている。

 

「んじゃ、さっきのやつここに置いておくからやってみろ。 俺は飲み物取ってくるから」


 そう言って部屋から出てリビングに向かった。

 リビングでは母さんが缶ビール片手につまみを食べていた。


「父さん帰ってくるまでに飲み終えておきなよ」

「父さんは帰ってきません」

「あ、そう」


 冷蔵庫から麦茶を取り出しながらそう言う。 倒産が帰ってこないということは、会社にでも泊まるということだろう。


「ちょっと待ちな」


 コップと麦茶を持って二階に上がろうとしたところで呼び止められた。


「ん? どうした?」

「……あんたはさ、有紗ちゃんのこと好き?」

「……は?」


 危うくコップを落としかけた。 


「んなわけねだろ」

「ほんと?」

「当たり前だろ」


 そう言って俺は部屋に戻っていった。



『澪視点』


 お兄ちゃんとは廊下ですれ違った。 コップ二つ重ねて自分の部屋に入っていった。


「ママ、お風呂空いたよ」

「これ飲んだら入るわ」


 そう言って楽しそうに笑っているママを見る。

 

「どうしたの?」

「んやぁ、青春してるなぁと」

「ああ、お兄ちゃんとお姉ちゃんのことね」


 そう言いながらため息をつく。 お互いに一歩引いたところに居ながら、両思いなのがはた目から見てもわかるあの二人のこと。


「お兄ちゃんは嫌い」

「何? 有紗ちゃんを取られるかもしれないから?」


 そう、おかしそうに笑うママの顔面に手に持っていたタオルを投げつけた。

 ただ、引きこもりの兄よりもいい人がお姉ちゃんにいるのではないかとついつい思ってしまう。

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