第3話日常生活
教室はいつものように静かだった。 コンビニのことを見ていた人もいるのだろうけれど誰もそのことを話している人は誰もいなかった。
席について武人と少し話すと予冷が鳴る。
「今日の一時間目ってなんだっけ?」
「体育、5組と合同で」
「おっ、有紗さんのところか」
そう言う武人を見ながら僕はため息をついた。
ホームルームでの朝礼が進んでいく中で僕はふとあることを思った。
「なぁ、武人」
「何々、どうした?」
「お前彼女とかいるの?」
朝礼が終わって女子が教室を出ていき、男子たちが着替え始めたころに僕はそう聞いた。
「いるよ。 可愛い彼女が」
「へぇ~、いるんだ」
「聞いてきたくせに興味なしかよ」
武人は興味なさげに呟いた僕に苦言を申し立ててくるが、知らないとばかりに学校指定のジャージに着替えていく。
「じゃあ一つだけ、この学校にはいる?」
「いるよ。 あ、でも有紗さんじゃないよ」
「当たり前だね」
「少しは否定しろよぉ!」
着替え終えた僕はさっさとグラウンドに出る。 そのあとを追いかけてくる武人から逃げた。
「お前、ふざけるなよ」
「体力なさすぎだろ」
昇降口から始まった追いかけっこは50メートルはほど離れていたグラウンドまで続いた。 僕に追いついた武人はすでに息が上がっていた。
それを見て俺はこの後の体育も体力が持つかが心配になった。
♦
「はぁ、負けたぁ」
全く悔しそうではない声音で武人はそう言った。 今日の種目はサッカーだった。
僕はボールが来たら適当の位置まで運んで誰かにパスをする。 それだけやっていた。
「体育館見に行こうぜ」
武人はそう言うと試合の待ち時間を利用して体育館に向かって歩き始めた。 その後ろ姿を見ながら後を追った。
体育館内では、女子がバスケをやっていた。 ちょうどタイミングが良かったのか、有紗が試合に出ていた。
女子バスケの人もいるはずなのに、それすらも圧倒している有紗。
特に何かをやっているわけではないのにこれを見ると圧倒的センスを感じる。
「相変わらずすごいな有紗さんは」
「そうだな」
「興味なさげだな」
「興味ないよ」
そう言いながら僕は塀に腰を掛けた。 グラウンドでは、サッカーの試合が一区切りついていた。
「そろそろいくぞ」
「あいよ」
武人に声をかけながら体育館のほうを見ると有紗と目が合った。
気のせいとかではなくばっちりと目が合った。
(頑張れ)
口パクで有紗に向かってそう言った。 武人にも気が付かれずにやったため、有紗も気が付いていないだろうと思っていたが、有紗も同じように返してきた。 しかも、ファイトという意味でガッツポーズもしてきた。
それに思わず顔が赤くなってしまうほどの威力があった。
「おっ、どうした?」
「どうもしてねぇよ」
武人に悟られないように素っ気なく接しながら僕はグランドに走っていった。
♦
体育も終わりいつものように4限目まで受けて昼になった。 昼は昨日のハンバーグのあまりを使って作った弁当を食べている時だった。
ポケットに入れていたスマホが鳴った。
『今日。カラオケ行ってくる』
有紗からの連絡だった。 返信を素早く返す。
『行ってらっしゃい。 遅くならないように』
『わかってます。 ボクだって子供じゃないんだからさ』
『はいはい』
そうして僕はスマホの画面を閉じた。
♦
放課後、いつものようにスーパーで買い物をして家に帰ってくると、靴が二つあった。
澪ともう一つは……。
「帰ってきているのか」
そう呟いて家の中に入っていった。 リビングに近づくにつれて話し声が大きくなっていく。
「ただいま」
「「お帰り」」
家にいたのは澪と母さんだった。
というか、この時間帯に母さんがいること自体がいつもならあり得ない。
「今日どうしたん?」
「仕事がなかったから早めに上がらせてもらったのよ。 あと、久しぶりに有紗ちゃんと話したいし」
「久しぶりって、1週間あってないだけだろ」
「1週間もあってなかったら久しぶりでしょ」
そこまで聞いて俺ははいはいと流しながら今日買った食品などを冷蔵庫にしまう。
その姿をじっと母さんに見られていた。
「本当にどうしたんだよ」
「何もないわよ」
どうしたんだよと思いながら髪をかく。
冷蔵庫にすべて片付け部屋に戻った。
俺の部屋には少女漫画が数多く本棚に並んでいる。 これは、俺が集めた漫画。
ほかには、ゲーミングPCが置いてあり、あとは、床机が置いてあることぐらい。
ゲーミングPCは有紗が部屋に入らないからとなぜか俺の部屋に置いていった。
「どこまでやってたっけ」
カバンを下ろしてノートを取り出す。 ノートを見てやろうとしているところまでやっていることを確認して部屋を出ようとしたときに有紗から連絡が来た。
届いた連絡はあと一時間後ぐらいに解散する~と来た。
そこから一時間勉強して解散したときた。
「ちょっと出てくる」
「ついでに牛乳買ってきて」
「了解」
そう言って俺は家を出た。
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