第34話 初めての魔法実践

「ベラトリクスさん、大丈夫ですか?」


 アンドロメダが、ベラトリクスの元へ向かう。


「大丈夫と、言いたいところだが、さすがにそうもいかないな。

 だが、それより、ケフェウス1人で奴と戦うのはまずい!」


 ベラトリクスは、立ち上がろうとする。


「動かないでください!お体に触ります!」


 アンドロメダが、それを静止する。


「しかし…」


「ケフェウスは、ベラトリクスさんの治療をする時間を、稼いでくれてるんです。

 無理はしないように言ってありますし。

 ベラトリクスさんは、脚の治療に集中してください。」


「脚の治療?

 お前、そんなことできるようになっていたのか。」


「ええ、ステラさんに、教わりました。」


 アンドロメダは、ベラトリクスの脚をくっつける。


「いっつ…」


「大丈夫ですか?」


「あ、ああ。」


「ポルックスさん、脚を押さえて貰っていいですか?」


「分かりました。」


 ポルックスが、慌ててベラトリクスの脚を押さえる。

 アンドロメダが、傷口に治療の魔法をかける。

 水のマナが、傷口の消毒をし、切断部位を凍らせ、固定する。

 さらに、治癒力を増大させ、足の治療を終わらせる。


「あとは、氷を溶かして…」


 アンドロメダの手から、水を出し、脚の氷をゆっくりと溶かす。


「終わりました。

 けれど念の為、どこか安全な場所にいてください。」


「驚いたな。まさかもう治ってしまうとは。」


 ベラトリクスが、自分の足を触り確認する。

 アンドロメダは、治療が無事終わったことを確認すると、ポルックスに言う。


「それじゃあ、ポルックスさん。

 ベラトリクスさんを安全な場所にお願いします。」


「はい。」


 ポルックスは、ベラトリクスに肩を貸し、建物の影に移動する。


「よし。

 次は…」


 アンドロメダは、ケフェウスとキャンサーの方を見る。


 ――――――――――


 剣を構え、キャンサーに突撃する、ケフェウス。

 それを、腕で受け、返しにもう片方の腕を振る、キャンサー。

 互いに引かず、攻撃は激しさを増す。


「キャハハー。すばしっこいねぇキミ。

 ああ、早く、貴方の血が見たい。」


 キャンサーが、目を開いて、笑う。


「お前は、なんで、そんなに人を斬ろうとするんだよ。」


 ケフェウスが、キャンサーの腹を蹴る。

 吹き飛んだキャンサーは、地面に倒れる途中、体をひねり、足から着地をする。


「キャハー!簡単な事だよ。

 アクーはねぇ、目が悪いんだよね。実際、君の顔もよく見えてないんですよね。それでも、皆と同じように見えるものがあるんだ。


 それが、赤!アカアカアカアカアカアカアカ!!

 素敵でしょ?素敵だね。アクーも、皆と同じ光景が見える。アクーも、皆と同じ人間である証拠!!」


 キャンサーが、くねくねしながら叫ぶ。


「何が、同じ人間だ!そんな理由で、無差別に斬って良いわけねぇだろ!!この化け物が!!」


 ケフェウスは、怒りの眼差しで、キャンサーを見る。

 当の彼女は、不思議そうに首を傾げていた。


「なんで?」


「は?」


 思いもよらないキャンサーの言葉に、呆気にとられる、ケフェウス。

 キャンサーは、そのまま続ける。


「アクーのパピーもそうだったよ?


 もうアクーには、よく見えないけど、アクーの腕って傷だらけでしょ?

 パピーも、アクーの血を見ないと、アクーをアクーって分からないみたいで、アクーを斬りまくってたよ?


 アクーとの違いは、パピーは耳が遠かったかな?

「痛い」って言っても、無視されたしなぁ。


 だからね、よく知りたい人の血を見るのは、普通なんだよ?痛い思いしたくないなら、斬られない体になればいいんですよ。

 アクーみたいに。」


「他人にされたから、自分もやっていいってことかよ…」


 ケフェウスが、静かに怒る。


「はい?何か言いましたですか?」


 キャンサーが、耳に手を当てる。

 その態度に、ケフェウスの怒りは増大する。


「ふざけんなよ!!お前!!」


「きゃう!急に怒鳴らないでよ。」


 頭を抱えるキャンサーに、剣を振り下ろそうと走るケフェウス。

 その足は、1人の少女の声によって止められた。


「待って、ケフェウス。

 私も、戦うわ!!」

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