第33話 アンドロメダの作戦

 ケフェウス達が村人達を避難用の馬車に乗せ、避難担当の騎士に任せる。

 ケフェウス達が『エルナト』に戻ってくると、彼らの目に映ったのはベラトリクスの脚が切断され、宙を舞うところだった。


「ベラトリクスさん!!」


 ケフェウスはその光景を見て、走り出そうとする。

 それを、アンドロメダがケフェウスの腕を掴み、止める。


「待って!!」


「メダ!なんで止める!!

 ベラトリクスさんの脚が、飛んでいるんだぞ!!」


「だからって、勢いのまま突っ込んでちゃ、私達もああなる!!」


「じゃあ、どうしろって言うんだ!!」


 ケフェウスの叫びに、アンドロメダがゆっくりと深呼吸をしてから、静かに話す。


「聞いて、私はステラさんから、少しだけど魔法を教わったの。

 その中で、人を治療する魔法も教わった。


 私はこれから、ベラトリクスさんに治療の魔法をかける。

 だから、ケフェウスはあのキャンサーという人の、気を引いてほしいの。


 無理をして倒そうとするんじゃなっくて、ただ時間を稼いでほしい。

 出来る?」


 ケフェウスは、アンドロメダの意見に、「分かった。」と頷き、キャンサーの方に走り出す。


「ありますか?なにか。

 出来る事、ボクに。」


 アンドロメダの後ろにいた、ポルックスが、彼女に質問する。


「ポルックスさんは、治療が終わったら、そのことをケフェウスに報告することと、ベラトリクスさんを避難させることを、お願いできますか?」


 ポルックスの「分かりました。」を聞いたアンドロメダは、ポルックスを連れて、ベラトリクスの所まで移動する。


 ——————————


 突如、くねくねさせたキャンサーに、剣が振り下ろされる。

 その剣を振るったのは、ケフェウスだ。

 キャンサーは、首を曲げ、その剣を首で受ける。


「あらぁ?新手か。

 初めまして、アク―は『星神教十二座集せいしんきょうじゅうにざしゅう』…」


 首を傾げたまま自己紹介を始めるキャンサーに、ケフェウスは蹴りを入れる。

 キャンサーは、その蹴りを腹で受け、吹き飛び倒れる。


「自己紹介なら、すでに聞いたぞ。」


 剣を構えるケフェウスに向かって、腕を使わない奇妙な動きで立ち上がったキャンサーが睨みをきかせる。


「人が話してる途中で、蹴りを入れるなんて。

 貴方、結構ひとでなしですね。」


「お前にだけは言われたくねぇよ!!」


 ケフェウスは、キャンサーの睨みに、怯むことなく、斜めに走り出す。


「どこへ行こうというのかしら!」


 キャンサーは、走るケフェウスに向かって、腕を振るう。

 走るケフェウスを、追いかけるように、地面に切れ込みが入る。


 しばらく走ったケフェウスは、突如向きを変え、キャンサーに向かって走る。


「逃げるのは、おしまいですか?」


「ああ、ここからは、こっちのターンだ!」


「何を言っている。まだまだ、アク―のターンなのさ!」


 キャンサーは、ケフェウスに向かって腕を振るう。

 しかしその腕は、振り切る前に、ケフェウスの剣によって、受け止められる。


 ケフェウスは、剣でキャンサーの腕を押し出し、よろけた彼女の頭に、頭突きを入れる。

 頭突きを入れられたキャンサーは、頭を押さえ再びケフェウスを睨みつける。


「いったいですねぇ!この石頭がよぉ!」


 ケフェウスの耳には、キャンサーの暴言など、届かない。

 ケフェウスの意識は、キャンサーの後ろ、ベラトリクスを治療するアンドロメダとポルックスに向かう。


「(よし、この位置なら、あいつの攻撃も、メダ達に当たることはない。)」


「無視ですか?シカトかぁ?アク―の話聞いてないよねぇ?」


 反応のないケフェウスに腹を立てたのか、キャンサーは地団駄を踏む。


「お前の話なんて、鼻から聞く気ねぇよ。

 構えろ。ここで終わらせてやる。」


 ケフェウスは、キャンサーに向かって剣を向け、そう宣言する。

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