少女の処遇




「妓女ですって?」


扇で口元を覆った楊才人が高い声でころころと笑う。


「まあ、可笑しなこと。ならば主上は、妓女の野卑な踊りに心を奪われたというの?」


本当に可笑しそうに声を立てて笑うと、彼女は小さく首を傾げた。

菫青石の耳環がゆらりと揺れる。


「もしそうであるならばこれは大罪よ?恐れ多くも下民の分際で王の心を惑わしたというのだから」


片側の口角を吊り上げ薄く笑う妃に、少女は身を固くしたまま立ち尽くす。


楊才人はおっとりとした笑みのまま、少女の頤に扇を向けた。


「琳麗といったわね。貴女はどう思って?」


少女は瞳を揺らしながら才人を見上げる。

髪に挿した竜胆が小さく揺れた。


「も、申し訳ございません……っ」


「何を謝るというの?王の心を惑わしたと認めるの?」


「卑賎の私にはなにもわかりません、」


少女は震える声で答える。楊才人は笑わない眼で少女を見つめながら、ふふっと口元を緩める。


室にはむせるような花の香りが漂っている。

才人は卓に置かれた葡萄を長い爪飾りを付けた指でつまむと、真っ赤な唇に運んだ。


「そう。ならば別のことを聞きましょう。貴女が舞っていた数刻の間、主上のお悩みが晴れたわ。とても素敵なことよ」


楊才人の言葉の含意がわからず黙し続ける少女に、内人が小さく咳ばらいをする。


少女はびくりと飛び上がり、怯えるようにきょろきょろと視線を彷徨わせた。


「も、申し訳ございません、私めには、」


泣き出しそうに震える声で繰り返す少女に、才人はふう、と小さくため息をつく。

指先でとんと卓をたたくと、悩ましそうに呟いた。


「やはり粗末な者と話すのは苦手だわ」


扇で口元を隠し、ちらと傍らの侍女に視線を向けると、侍女は小さく傅いて内人にくいと顎で合図を送る。


「失礼いたします」


こくりと頷いた内人は琳麗を侍女と共に後ろ手に捕らえ引きずって下がった。


少女は震えながら抵抗もせず、おとなしく引きずられる。


室の片隅で控えていた太った宦官が、嫌らしく口元を歪めた。








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