おまけ話 リコはメイド長に呼び出されちゃった〜、てへぺろ☆

 私、リコはレミちゃん十才のお誕生日会のあと、メイド長に呼び出された。

 

 ぷるぷるとふるえながら……メイド長のお部屋のドアを開ける。

 

 中にはメイド長が背中を向けて一人で佇んでいた。怖っ……まるでホラーゲームの演出みたい。足を踏み入れたら振り向いて飛びかかってきそう。

  

 おそるおそる、脚を踏み入れる。すっ……とメイド長は音も立てずに振り向いた。

 

「ぴぃ!!」私は思わず悲鳴をあげてしまう。それに驚いたのか、メイド長もびくっと身体を強張らせる。

 

「……なんですか急に大声上げて」

 

「い、いやびっくりしちゃって」

 

「それは私のセリフです。とりあえず部屋に入りなさい」メイド長はそう言いつつ、手招きをする。

 

 ああ、ついに私はここではかない生涯を終えるのだ。

 

 メイド長は……とても厳しい、とメイドの中で噂されていた。もし何かやらかして部屋に呼ばれたら最期、生きて帰ってはこれないと。

 

 ……まあでも、実際に行ったと言う人は見た事はない。帰ってきてないからかもだけれど。

 

 メイド長は、私を部屋の真ん中にある一人掛けの椅子に座らせ、自分もテーブルを挟んだ正面の椅子に腰掛ける。うぅ、威圧感がすごくてもう泣きそう……。

  

「さて、あのとき……私が『私が抱きしめてもずっと泣きっぱなしでしたから』と言ったとき、貴方はなんて言いました?」

 

「ぴぃ……『それ、メイド長だからじゃ』って言いました」

 

「……そうですか」ふう、と彼女はため息をつく。その表情は少し悲しそうだった。 

 

「す、すみません……ふざけたこと言っちゃって」

 

「別にあやまる理由はないですよ。素直に言っただけでしょう?」

 

「う……はい」私は思った事をそのままパっと口にだす性格だった。スイは「わかりやすくていいじゃん」とほめてくれるけれど、たまにこう、余計なことまで言ってしまうのだ。

 

「まあ、普段の私を見てるとはそう見えるのも無理ないですよね」ふう、とまたため息をつく。

 

「単刀直入に聞きます。私は怖いですか?」メイド長は私の目をじっとみつめ、たずねてくる。

 

「ぴぃ……そ、そんなことは」そう嘘を言いかけるけれど、冷たい視線を感じて、言葉がとまる。

 

「正直に答えてください。別に怒ったりなんてしませんから」

 

「はっ、はい。はっきり言って、怖いです。二人きりで一緒にいると、震えるぐらいには」嘘をつかずに、思ったことを伝える。ぷるぷると、私は子犬のようになってしまう。

 

「なるほど……みんなを束ねるメイド長として、厳しくしていたのが仇となってしまったのね」またまたふう、とため息をつく。

 

「でっ、でも私がそう勝手に思ってるだけで、他のメイドたちはそんなにこわがっては……」

 

「そうなの?」

 

「はい、私が『メイド長怖いんだよねー』って言っても『そうかなぁ』って返ってくることが多いんで。厳しいってのは同意してくれるんですけど」

 

「なるほど。なら、まずは貴方の誤解をときましょう」メイド長は椅子から立ち上がり、部屋のドアに向かった。カチャリ、鍵が締められる音が響く。それは……私にとって終わりの始まりの音に聞こえた。

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