第3話
ぼくは暫く男の家にいる。
この家のこたつで眠ること、3日。
ぼくはもう男の名前を知っている。
男の名前は
因みにそのふうさんは、ぼくのことを『ひよこちゃん』と呼んでいる。
仮の名前なのだろうな。
この家は少し寂しい。
生活用品は一通り揃っているし、殺風景な訳ではないんだけどね。
しかし所謂『思い出の写真』や『思い出の品』などはない。
だから少し寂しい感じがする。
そうそう、あの練習していた台詞は少しずつ完成して遂に完成したらしいんだ。
予定では『今日、何の日か知ってる?分からない?今日はね、記念日になるんだよ。じゃーん!ひよこちゃん!』と言うらしい。
果たして、予定通りにプロポーズすることはできるのかな。
きっとできるのだろうな。
ふうさんは紳士で、何でも苦なくこなしてしまうのだから。
本当に、いい男。
そのまた数日後の朝、ふうさんは起きてからなんだか落ち着かない雰囲気。
ぼくは彼を抱きしめて『ふわふわ~もふもふ~』をしたいけど、今日はしないみたい。
ふうさんは部屋をどんどん様変わりさせていく。
少し大人っぽい飾りが飾られていく。
今日は一体何の日なんだろう。
夕方になるとふうさんは出かけた。
数十分した時、ふうさんの車の音が聞こえてきた。
帰ってきた!
ぼくはいつもふうさんが帰ってくると嬉しいのだ。
ふうさんが出かけると寂しくて嫌なのだ。
だから帰ってくると嬉しくて仕方がない。
ふうさんは部屋に入るなり、僕を暗くて狭いところに慌てて隠した。
なんで?
ぼくは邪魔?
すると知らない女性が付いてきて部屋におどおどと入った。
一体誰なんだ、この人は・・・。
『布』の話 玉井冨治 @mo-rusu
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