第6話 酔っ払いサリー

 僕達を乗せたアルカディア号がやってきたのは、ベルン領から北側に向かい、お義父様が営んでいるガロデアンテ領をさらに越えて北側に向かう。


 国境を越えると、隣国シレル王国が見える。


 僕達が向かうのは、シレル王国のとある地方。


 緑が広がる敷地にアルカディア号で降りた。


 近くの大きな屋敷から大勢の人がテラスや玄関口からこちらを見守る。


 アルカディア号を降りるのは僕とサリーだけ。他のみんなは船で待機だ。あまりにも大勢でやってきても迷惑だろうし、招待されたのはサリーだから、僕はその相棒として一緒に入るのだ。


 屋敷に着くと、大勢のメイドさん、執事さんが出迎えてくれた上に、当主と思われる中年男性と、今回主役である娘さん、その旦那さんが一緒に出迎えてくれた。


「サリー様! いらっしゃいませ! まさかクラウド様にもお越しいただけるとは、とても感激です!」


「お邪魔致します。この度、お嬢様のご結婚おめでとうございます」


 貴族の当主同士の挨拶が終わってやっと、ご本人達とも挨拶をする。


「結婚おめでとう~!」


「サリーちゃん……ありがとう……!」


 彼女はサリーが遊びに行った際、山賊に襲われていたところを救った人で、すぐに友達になってよくお茶をするとのことだ。


「この度、ご結婚おめでとうございます」


「クラウド様……! まさかクラウド様に祝っていただけるなんて……とても感激です!」


 あはは…………多分、教団の方かもな。サリーが仲良くしている人の大半が僕を敬う教団に所属しているからね。


 本当はやめて欲しいんだけど、辞めさせようとするとみんな大泣きしちゃうから、変な誤解をさせてしまうのだ。


「こちらはお二人の結婚を祝い、スロリ街の近くにある旅館の招待状です。いつでも泊ってください」


「まあ! あの旅館に泊まれるのですか!? 本当に嬉しい……ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」


 旦那さんも何度も感謝を言った。

 

 それから中で案内を受けて、会場に入る。


 既にたくさんの人達が集まっており、式典が始まるのをずっと待っていた。


「サリー。コートもらうよ」


「うん! ありがとう。お兄ちゃん」


 サリーのコートを受け取ると、サリーの可愛らしいドレス姿が見えた。


 周りの人達から「おぉ……」という声が聞こえてくる。


 近くで待機していた執事達もサリーに目を奪われて、中々コートを受け取ってくれない。


 こういう式典やパーティーはコートを預かってくれるのが普通だが、みんな足が止まっている。


 それくらいサリーのドレス姿は圧倒的な可愛さを誇る。


 通常ドレスは、あまり露出はなく、衣装の綺麗さを全面的に出すのだが、今日サリーが着ているドレスは通常ドレスからだいぶ変わっている。


 胸元から肩まで全部出しており、綺麗な鎖骨が見え、あわよくば上からドレスの中が見えそうになる。


 ただ、そこはアーシャのアイデアで見えないように作っている。が、男性陣としてはどうしても目がいくよね。元々そういう魅力を伝えるためのデザインだし。


 すぐにサリーのドレスを褒める女性陣達。サリーが一人になるとすぐに囲まれてラウド商会のクテアブランドなのか聞かれる。


 これが次の流行になりそうだ。


 式典が始まり、アーシャがデザインしたウェディングドレスとタキシード姿の新郎新婦が登壇した。


 みんなから祝福されながら、誓いの言葉を終えて、二人は晴れて夫婦となった。


 割れんばかりの拍手が終わり、食事会が開かれた。


 新郎新婦に順番に挨拶を終えて、フリーになると、多くの人達が挨拶に来てくれた。


 気のせいか会う人全員が右拳を心臓に当てて挨拶をしてくれる。


 全員教徒ってことだね……。


 サリーはずっと新婦の隣で一緒にいてあげている。


 少なくとも話題が僕やサリー自身に向かないように空気を読んでいるんだと思われる。


 いつも破天荒に遊んでいるサリーだが、誰よりも優しくていつも誰かを守ったり、誰かを救おうとする優しい妹だ。


 これからも優しい妹が好きなように生きれるように、僕も力になりたいと思う。


 結婚式も終わり、珍しくお酒を飲んで酔ったサリーと共にアルカディア号に戻った。


「おにぃちゃぃん~」


 サリーがこうして誰かに甘えるのは僕くらいなので、たまにはこうしてあげる。


「サリー。今日はお疲れさま。お友達凄く喜んでいたね」


「そうらね~えへへ~」


 サリーの頭を優しく撫でてあげる。


 お姫様抱っこをしてソファーに置こうとすると、両手で僕の首を抱きかかえているので離れられない。


 そのまま一緒にソファーにゴロンとなった。


 サリーのだらしない姿は中々見れないので、今日は少し得した気分だ。

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