第2話 爆発の正体

「ティナ! ラティ達をお願い!」


「うん!」


 ティナにラティ達を預けて、スロリ街に急行する。


 いつの間にか子供達を置いたまま、頭の上にロスちゃんが乗ってくる。


 全速力でスロリ街にやってきた。




 スロリ街の建物には特殊な装置が設置されていて、外からの攻撃・・・・・・は全て防ぐことができる。


 幸いにも爆発で周りの建物に被害はなく、多くの人が遠くから爆発を見守っていた。


「みんな! 何があった!」


「クラウド様! そ、それが…………」


 領民の一人が苦笑いを浮かべて指差すのは――――


「サリー!?」


「ん? お兄ちゃん~!」


 満面の笑顔で左手を振りながら挨拶するのは、僕の妹のサリー。


 その隣では無愛想な表情を浮かべて手を振るもう一人の妹シア。


 爆発の正体は、サリーによる爆裂魔法のようだ。


「街の中で魔法を使うなんて、どうしたの?」


「えっとね~この人達が領民に悪さをしようとしたから、脅かしてやったの」


 そう話すサリーの足元には、全身がボロボロになった大柄の男達が六人も転がっていた。


 爆裂魔法でボロボロになったというよりは…………。


「なるほどね。最近こういう乱暴な人が増えているから、パフォーマンスでやったのね」


「そうだよ~さすがお兄ちゃん! すぐに分かったんだね」


 そりゃ……二人のことは誰よりも知っているつもりだからね。


 両手を伸ばして二人の頭を撫でてあげる。


 シアの頭には大きな兎耳が付いているので、可愛くぴくぴくと動く。普段表情が少ないけど、耳で表情が出るシアはとても可愛らしい妹だ。まあ、実際は神なんだけど。


 この二人はいまや世界で一番強い戦士と魔法使いとして名高い。


 知ってるのは王族などの数人しかいないけど、知る人は全員彼女達の力を知っている。


 ただ、まだ世間にはあまり知られていないのもあって、抑止力にはなっていない。


「お兄ちゃん? そろそろ平民達にも知らしめないと、いつか領民が傷ついちゃうんじゃない?」


「う~ん。サリーの言うことも一理あるけど、それをやるとベルン家ばかりが強くなっちゃうから……」


「もう十分過ぎるくらい強すぎる気がするんだけど…………」


 サリーが指差した場所には、ベルン家に仕える警備隊がやって来ていた。


 そして――――






「「「「クラウド様ああああ! 申し訳ございませんでしたああああ!」」」」





 僕に向かって全力土下座を披露する警備隊だが、世界の全ての騎士団の中でも最強戦力を誇る。


「み、みなさん! これは仕方のないことですから、顔を上げてください。いつもみなさんのおかげで領民達が安全に暮らせて、とても助かってますから!」


「「「「ありがたき幸せ! クラウド様! 忠誠を誓います!!」」」」


 あはは…………僕が学園を卒業して何年か経っても、まだこうして僕に忠誠を誓う人がたくさんいる。


 むしろ、いまでも増え続けていたり、見た事ない人までもが忠誠を誓ってくれたり、僕のいない場所で忠誠を誓われたりする。


「やっぱりクー兄ちゃん最強~」


 最近シアの口癖である。


「お兄ちゃん、それよりラティくんたちは?」


「ラティ達は~」


 丁度その時、僕達に近づいてくるティナの姿が見えた。


「ラティ~! ラシャ~!」


「わあ! やっぱりサッちゃんの魔法だったんだね」


「ティちゃん~!」


 結婚前は時々険悪な様子だった二人だが、それも全部なくなった。ただ、サリーは甥っ子姪っ子大好きで、いつもラティとラシャと遊んでくれる。


 シアはまだ抱くのが怖いらしくて、サリーの横から覗くだけだ。


 警備隊によって爆発は鎮火させられて、広場に平穏が戻った。


 すると僕達をぐるっと囲むように、多くの領民や観光客が覗いてくる。


「ねえ、見て見て、サリー様よ!」


「ティナ様もいらっしゃるわ! 相変わらず美しい……!」


「シア様もクールビューティーでいいわ!」


 相変わらず黄色い声援が飛び交う。


 異世界に転生して十数年。


 特に世界が平和になって、ベルン家によって各国を繋ぐ鉄道のおかげで、流行が一気に広がるようになった。


 それに伴って前世でいう――――アイドル現象が起きている。


 中でもティナとサリーはアイドルの筆頭者でもある。


「あ~お兄ちゃん!」


「うん?」


「アレンくんが近々生まれるって」


「そういや、もうそんな歳だったな」


 学園を卒業してソフィアさんにちゃんと求婚して結婚した二人。


 アレン達のところもそろそろ生まれるのか。


「ティナ。近々ラティ達を連れて王都に行こう」


「わかった!」


「私達も行く~!」


「そうだな。母さんにも言わないと」


「それなら私が伝えてくるわ」


「任せた」


 子供達はサリーが離さないから、ティナがスロリ領の端に建てられている巨大な僕の屋敷――――というよりお城に向かった。


 屋敷でいいとあれだけ言ったのに……秘密裏でお城計画が進んでしまって、世界で一番大きなお城が建ってしまった。


 一応王国の貴族なのに、その王国のお城より大きいって…………でも王様は気にすることもなく、むしろ当然でしょうと言わんばかりに言ってくれた。


「お兄ちゃん~! クレープ奢って!」


「はいはい」


 満面の笑顔を浮かべた妹のわがままで、大人気クレープ屋に向かった。

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