土の精霊③
簡単な間食を堪能して、再度周辺を探し始めた。
土の精霊の気配は感じられるんだけど、どこにいるのか全く分からない。
「そもそも土の精霊さんってどういう姿をしているんだろう」
「どういう姿って?」
「ほら、トゲくんの場合、溶岩の中に入っていたでしょう?」
そう言われてみれば、トゲは溶岩の中に隠れていたっけ。
「土というくらいだから土の中にいるのかな?」
「う~ん。でも中じゃなくて、外な気がするんだよね」
「そうか~それだと岩に化けているとか?」
岩…………か。
周りをゆっくり眺めると、どれも同じ岩に見えるが、どの岩も同じ岩は存在しない。
色が少し黒いモノ、明るいモノ、尖っているモノ、平べったいモノ。
そんな中、一つの岩だけが周りより違和感を覚えた。
丁度ティナ様が立っていた横の岩。
「っ! ティナ様! こちらに――――」
僕の声が届く前に、岩が変形し始め、そのままティナ様を喰おうとした。
その時、
大きな岩のワームのような形を成したそれがティナ様を喰らおうとした直前、身体がくの字に曲がり周囲に爆音を鳴り響かせる。
音が鳴り響くと共に、巨大な身体は後方に大きく吹き飛んだ。
くの字になった場所には、空中に飛んでいる――――ロスちゃんの姿が見えた。
「ロスちゃん! ありがとう!」
すぐにティナ様を化け物から守るためにティナ様の前に立つ。
「ティナ様。もしもの時は全力で反対側に走ってください」
「クラウド様! わ、私っ!」
「いいですね?」
「…………うん」
ゆっくりと起き上がる岩でできたそれは、ワームのような長い体を持ち、顔はドラゴンを連想させるような姿だった。
「土の精霊よ! 僕達は敵対に来たわけじゃないんだ!」
すると、コメが姿を現す。
「ノーム! 私が分からないの? 風の精霊だよ~!」
グルアアアアアアア!
コメの言葉でも変わらず、こちらに敵意を向けて来る。
「お兄ちゃん!」
「分かった!」
土の精霊の全身から土の魔法が放たれて、こちらを襲い始める。
全力で飛んでくる岩を叩き落とす。
絶対にティナ様とサリーには傷一つ付けさせない。
飛んでくる無数の岩は火力自体は大した事がなく、どちらかというと広範囲に撃っているだけな感じ。
何となく…………時間稼ぎをしている?
「ロク! すぐにティナ様とサリーを連れて上空に飛んで!」
【了解~!】
ロクは大きな足でティナ様とサリーを掴み、全速力で上空に飛んだ。
飛び上がる時に二人が僕の名前を叫ぶ声が聞こえてくる。
「ロスちゃん!」
【あい~!】
「時間稼ぎをするって事は、何かしらくると思う! 気を付けて!」
【あいっ!】
土の精霊の魔法が止んだ瞬間、思いっきり走って本体を殴り飛ばす。
殴った感触は思ったより軽いと思う。
吹き飛んだ場所にロスちゃんが先回りして、また体当たりで本体を吹き飛ばす。
やっぱり感触から、これは本体ではない?
確かに土の精霊の力はものすごく感じられる。
でもそれにしては愚直で軽すぎる。
その時、地面が揺れ始める。
急いで周囲を確認すると、東方面から大きな――――砂の津波がやってくるのが見える。
狙いはこれだったんだ。
「コメ! 風魔法であの津波を追い返せる?」
【私一人では厳しいです! でもご主人様とならやれると思います!】
「じゃあ、僕の力を好きに使っていいから、あの砂の津波を追い返そう!」
【了解~!】
コメを通して僕の中にある力が抜かれる感覚に陥る。
それと共に、コメに強い力が溢れて暴風の魔法を発動させて砂の津波と衝突した。
転生してから初めて見る広範囲の災害にも似た光景に思わずその場に座り込んでしまった。
何とか岩場に
その時、後ろの岩から土の精霊の気配が強く感じられた。
【もぉ~! ノームったらこんなところにいたの!?】
その岩に降り立ったコメがクチバシで岩を突きながら、嫌みを言い始める。
その姿がどこか愛おしいと思える。
とにもかくにも砂の津波は止まった事だし、土の精霊と話せそうで良かった。
安全が確認できたから降りてきたロクから解放された二人は、真っ先に僕に飛んで来て涙を流しながら僕の無事を喜んでくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます