土の精霊②

 久しぶりにやってきた砂漠。


 ここは以前ゴーレム達と会った場所で、砂漠でいうと丁度入口に当たる場所だ。


 砂漠の前は緑色に広がっている森が続いていて、黄金の海と新緑の海がお互いを主張しあっている。


 サリーとティナ様は楽しそうに砂漠の砂場に走り、靴を脱いで素足のまま砂で遊び始めた。


 ここは森からの涼しい風が吹いて来て、砂漠の前だというのにまだ涼しさを感じるが、空高くから僕達を照らす太陽の光は暑いと思うには十分すぎる。


 ロクが周囲を調べてくる間に、俺とロスちゃんで芝生に座り込み、二人が楽しそうに遊んでいるのを眺める。


 10歳の時はまだ幼さが残るティナ様も、すっかり大人びてきて、女子は成長が早いと聞くのも納得いくかな。


 それにしても暑いのに楽しそうにはしゃぐ二人は、中々見ているだけで幸せな気分になれるものだ。


 あっ。サリーが倒れた。


 一緒にティナ様も倒れた。


 …………。


 …………。


 うん。良いモノを見れた。


 とりあえず、見てないふりはしておこう。




 ロクが帰って来て、気配がする方にどうやら岩場があるという事で、早速そこに向かう事にした。


「ん~暑くなってきたね~」


「そうだね~」


 後ろからゴソゴソと服が擦れる音が聞こえる。


 恐らくティナ様とサリーが服を脱いでいるのだろう。


 誰も見てないとはいえ、あまり素肌を晒して欲しくはないけど、暑いモノは仕方ないよね。


 僕も上着を脱いで半袖になっているしな。


 ロクが飛んだ先に砂だらけの砂漠から岩が目立つ地域が現れた。


 ゆっくりと降下して降り立つと、普通の砂漠とは少し違い、暗いイメージの場所だった。


「こんな所に土の精霊がいるの? お兄ちゃん」


「何となく気配が強いかな?」


 土の精霊かは分からないけれど、精霊の気配を強く感じる。


 ただ、他の精霊達とは違い、どこかくらいしか感じられない。


 どこかに隠れているのだろうか?


「サリー。ティナ様。あまり離れないでね」


「「は~い」」


 ゆっくり岩場を歩き回って、土の精霊の気配を探っていく。


 しかし、どれだけ歩き回っても見つからない。


「う~ん。見つからないな」


「特に変なモノも見当たらないね」


「少し休憩しようか」


「うん!」


 近くにあった広めの岩に上がり、上に敷物を敷いて持って来た間食を広げる。


 バケットの中には美味しそうなサンドイッチが入っている。


 ただ、いつものサンドイッチとは少し違う感じがする。


 一つ取り口の中に入れると、やっぱりいつものお母さんが作ってくれるサンドイッチとは違う。


 それでも、美味しい事に変わりはなく、どちらが美味しいという訳ではなく、どちらも美味しいがそれぞれ個性があるのかな。


 この感じ、味付けが違うのか。


「今日のサンドイッチっていつものと違って美味しいね」


「ふふっ。お兄ちゃん。これどれくらい美味しい?」


「う~ん? そうだな――――最近食べたサンドイッチの中では一番好きかな?」


 お世辞ではなく、本心からそう思う。


 というのも、お母さんが好む味はとても洗練された整った味なのに対して、こちらのサンドイッチは少し荒さを感じる。


 でもそれはお母さんの味付けに比べればの話であり、普通の味と比べれば凄く美味しいし、どちらかというと少し味が強い方が僕は好きかな。


「ふえ~ですって。ティちゃん」


 サリーの視線がティナ様に向くので、それに釣られて僕もティナ様に視線が向く。


 そこには少し顔を赤らめたティナ様が見えた。


「あれ? もしかしてティナ様が作ってくれ……た?」


「う、うん! クラウド様の口に合ってよかった…………」


「と、とても美味しいです」


「え、えへへ……」


「あはは…………」


 まさかティナ様が作ったとは思わず、思った事を口にしてしまった。


 そんな僕をジト目で見るサリーから、


「むぅ。お兄ちゃん。サリーの前でイチャイチャは禁止~!」


「え!? い、イチャイチャはしてないよ?」


「してた!」


「し、してな――――わ、分かった……」


 してたかも知れない。


 恥ずかしがるティナ様が世界一可愛いのと、少し拗ねる妹が世界一可愛かった。

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