土の精霊①

 トゲがうちにやってきて数か月後。


 スロリ町もカジさん達の頑張りのおかげで、どんどん発展し続けた。


 昔のスロリ町の面影は殆どなくなり、町を囲っていた壁がすっかり取り払われて、新しい壁が元々の広さの数十倍の範囲を囲っている。


 スロリ町の発展を考えればこれくらいの広さでも足りないかも知れないと言っていたけど、その報告を一緒に聞いていたお父さんの表情が絶望に染まっていたのは記憶に新しい。


 最近はお父さんも色々諦めたようで、「なるようになれ…………」と増えていく書類作業に追われる毎日を送っていた。


 そんなある日。


 スロリ町の商店を任せているキリヤさんから、そろそろ隣町であるアングルス町との道を整備したいと申し出があった。


 というのも、最近うちの狩人チームが狩る量も増えてきて、ペイン商会との交流がとても増えてしまったのが原因である。


 その原因の主な理由もあり――――アレンくんとサリー、エルドくんのせいである。


 三人の実力がめきめき上がってしまって、北から流れてくる魔物を狩り尽くす勢いで狩り続けている。


 ただ、それでも狩り尽くされないのだから、世界に魔物が溢れる仕組みが気になるところだ。




「サリー先生!」


「あいっ! お兄ちゃんくん!」


「道を整備したいんだけど、何か良い案はないかな?」


「道?」


 サリーにキリヤさんから受けた相談事を伝える。


 ふむふむと言いながら真剣に聞いてくれた妹は、目を瞑って考え込み始めた。


 普段活発なサリーの周囲に沈黙が訪れて数十秒。


 何かを思いついたかのように目を開いた妹の目がキラキラ光り輝いていた。


「それなら、いっそのこと、道を整備してくれそうな精霊を仲間にしたらいいんじゃない?」


「精霊?」


「トゲくんは鍛冶を手伝ってくれているし、コメちゃんは森で農業を手伝ってくれるでしょう? それなら道路作りを手伝ってくれる土の精霊を仲間にしたらいいんじゃない?」


 なるほど!


 ただ、コメもトゲも強制しようと思ってるわけではないんだけど……好きなように楽しそうに生きて欲しい。


 だからこそ、土の精霊を仲間にしても道路整備を強制させるわけにはいかない。


「もしかして、強制させちゃうから嫌?」


 どうやら僕が難しい顔をしていたからか、笑みを浮かべて下から覗き込んでいた。


「そうだね。トゲもコメも好きなように自由にして欲しかったから。だからこそ、今の生活を好きに楽しんでくれているみたいで嬉しいんだ。でも道路整備をさせるために仲間にするのは…………」


「それなら、考え方を変えて、土を作って貰ったらいいんじゃない?」


「土を作って貰う?」


「道路整備に必要な土だったり、そういう必要な分だけ手伝ってもらうだけで、後は土の精霊の好きなように、ここで楽しんで貰ったらいいんじゃないかな~それにコメちゃんもトゲくんもいるから、きっと楽しいと思うんだ」


 コメもトゲもうちに来て毎日楽しそうに過ごしている。


 コメはエルフに、トゲは鍛冶組と毎日一緒に時間を過ごしていて、時にはほかの場所に遊びに行ったり、町民達や子供達と遊んでいたりもしている。


 それを思えば、土の精霊もうちに来て楽しんで貰えたら嬉しいかも。


「選ぶのは土の精霊だし、向かうだけ向かってみようか」


「うん!」


「コメ~! 土の精霊ってどこにいけば会えるかな?」


 僕の声に反応して、サリーの肩に緑の小さな光が現れて周辺に優しい風が吹いて光が小鳥に変わった。


【土の子はここから西に進んだ場所にある砂漠という地域にいますよ~】


「砂漠か! ゴーレムくん達が来てくれた場所だね。では早速行ってみようか!」


「うん!」


 すぐにロクを呼んで、ロスちゃん、サリー、ティナ様と共に砂漠に向かった。

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