最終話 あらゆるモノから愛される転生者はあらゆるモノを愛す
「クラウド! 準備は――――――うむ。とても似合っているな」
「父さん」
鏡越しに父さんが見え、その後ろから興味ありげに部屋の中を覗くサリーと
「お兄ちゃん~大丈夫~?」
「ああ。何とか落ち着いているよ。サリー。シア」
「入ってもいい?」
「もちろん」
そう話すとすぐにサリーが中に入ってくる。
その後ろをシアが同じポージングで入ってくる。
すっかり仲良しとなった二人だ。
「クー兄ちゃんかっこいい」
「ありがとう。シア」
シアの頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑みを浮かべる。
彼女もすっかり
「お兄ちゃん~めちゃめちゃ似合ってるよ!」
「ありがとう。サリー」
今度はサリーの頭を撫でてあげると、ご満悦な表情を浮かべる。
「兄さん! そろそろだよ!」
開いた扉からビシッとスーツを着込んでいるアレンが慌てて入ってくる。
「ありがとう。アレン」
自分の身だしなみをもう一度チェックして、家族と一緒に部屋を後にする。
◇
建物を出ると目の前にはスロリ街の広場が広がっている。
そして僕の視界には広場からスロリ街を埋め尽くすかのような沢山の人々が映った。
僕の登場でスロリ街が割れんばかりの声援に包まれる。
僕は目の前に続く青い絨毯を緊張した面持ちで一歩ずつ歩いて広場の中央を目指す。
歩く度に通り過ぎる両隣から花吹雪を掛けられた。
誰もは満面の笑顔で僕を祝福してくれる。
ゆっくりと、でも確実に一歩ずつ進んだ僕は、広場の祭壇に到着した。
「いらっしゃい。クラウドくん」
「イクシオンさん」
「さあ、間もなく花嫁の登場だよ。見守ってあげなくてはね」
「はい」
ミナトさんから解放された僕の先祖様であるイクシオンさん。もといハーレクイン枢機卿。
祭壇では神々しい神父の服装で、慈悲に溢れた笑みを浮かべて祭壇で僕を迎え入れてくれる。
イクシオンさんに会釈して、後ろを向くと、大きなラッパの音が響くと、僕が出て来た建物の大きな扉が開いた。
そこから4人の人影が見える。
ティナとバルバロッサ辺境伯様。
アーシャとガロデアンテ辺境伯様だ。
4人はゆっくりと僕に向かって歩き始める。
ティナとアーシャの美しいドレス姿に僕だけでなく周囲の人々が息をのむ。
お互いに青と赤の色合いが対になった作りは、アーシャの沢山の想いが込められているようだ。
彼女達が近づくにつれ、僕の心臓の鼓動もどんどん大きくなっていく。
直視できるように日々イメージトレーニングしてきたつもりだけど、こんなに美しい二人を見つめるとどうしようもない。
4人が祭壇の前に到着すると、僕は上がっていた祭壇を一度降りて、二人に深く頭を下げる。
「クラウドくん。ティナを頼んだぞ」
「お義父様。任せてください」
「クラウドくん……アーシャを…………」
「はい。お義父様。必ず」
意外にもガロデアンテ辺境伯様は感極まっているようで大粒の涙を流している。
二人が席に向かうと僕とティナ、アーシャは深く頭を下げた。
「二人とも。行こうか」
「「はい」」
祭壇を向いた僕の右手にティナ。左手にアーシャの手が添えられる。
二人と共に祭壇の階段を一つ一つゆっくりと登って行く。
祭壇の上に立つと、イクシオンさんの誓約が続き、僕達は永遠の愛を誓った。
僕達3人は晴れて夫婦となった。
◇
「イクシオンさん……」
結婚式から数日後。
僕達の前にはイクシオンさんがベッドに横たわっている。
「クラウドくん…………ありがとう」
「いえっ! 僕こそ……イクシオンさんが頑張ってくださらなかったら、今の僕はいませんから」
「ふふっ。俺の息子も……きっと……君のような…………素晴らし……」
僕の手の中。先祖様は晴れた表情でその生涯に幕を下ろした。
既に先祖様の体は限界を超えていて、呪魔術で辛うじて生きていた。
僕の結婚式をどうしても見届けたいと、シアにお願いして何とか今日まで耐えてくださった。
どうか……安らかに。
その日は、ベルン家の一番の
そして、その日を『イクシオンの日』として毎年『イクシオン祭り』を行う事となった。
◇
彼らは恐る恐る仮面を外す。
本来なら仮面を外して素顔を晒すと亡くなってしまうのだが、僕とシアの連携によって彼らの
目の前に僕やアレンに似た彼らに自然と笑みが浮かび上がった。
「まさか僕にこんなにも
弟達が目を潤わせて僕を見つめる。
「みんな。これからみんなも自由に生きて欲しい。でもこれだけは覚えておいて。みんなベルン家の一員だよ。困った事があればいつでも僕を訪ねて来て。ここには君達の兄も姉も母も父もいるのだから」
彼らの嬉し泣き声が僕を包み込んだ。
◇
「ロスちゃん。体は大丈夫?」
【ご主人。大丈夫】
僕は弱ったロスちゃんの体を優しく撫でてあげる。
命に別条はなさそうで本当に良かった。
「気持ち悪いとかない?」
【ん。むしろぜっこうちょ~】
「あはは、でもすぐに動くのは駄目だからね?」
【あい】
「まぁ、焦らなくても――――彼らは誰一人欠ける事なく元気だから」
僕の後ろにティナ、アーシャ、サリー、アレン、シアがそれぞれ小さな白い赤ちゃん犬を抱いてこちらを覗いた。
【ん。ご主人がいるから、心配してない~】
ロスちゃんの信頼のこもった言葉にどこか嬉しくなる。
彼ら5匹は――――なんと、ロスちゃんの子供だ。
先月結婚式を迎えた僕に、子供を産むと淡々と話したロスちゃんには随分と驚いたものだ。
彼らの
それがどういう意味なのかは分からないが、深く聞かない方が良さそうなので聞かないようにしている。
ただ……一つだけ物凄く気がかりなことがあるなら…………。
「わあ! これはお兄ちゃんのオーラなんだね?」
「僕のというか、僕のオーラに似てるな~って感じかな」
「へぇー!」
サリーが声をあげているように、赤ちゃん犬達のオーラの形というか、色というか、どこかロスちゃんと僕に似てるのは気のせいなのだろうか。
それに生まれながら僕の従魔となっているのも不思議だ。
◇
一年後。
屋敷内に元気な
「ティナ! アーシャ!」
僕の両脇のベッドに横たわるティナとアーシャ。
僕の両手をぐっと握りしめた彼女達。
「二人ともありがとう。無事生まれたよ」
メイドさん達に抱き抱えられた可愛らしい赤ちゃんが元気な産声をあげている。
二人は疲れたようで、赤ちゃんの元気な姿を見ると安堵したように眠りについた。
そんな二人の頭を優しく撫でてあげる。
頑張ってくれてありがとう。
その日、僕は父親となった。
――――【完結】――――
『転生してあらゆるモノに好かれながら異世界で好きな事をして生きて行く』を最後まで読んでくださり、心から感謝申し上げます!
まずこの作品を最後まで書ききれたのは、沢山の読んでくださり、日頃から応援してくださった皆様のおかげです。今一度感謝申し上げます。
この作品は作者の人生において大きな転換期となった作品となりました。
いつか到達出来たらいいなという想いで執筆を続けてきて、まさかカクヨムコンテスト7でコミックウォーカー賞を受賞し商業化できるとは、書いてるときは夢にも思いませんでした。
それもあって、こちらの作品は必ず完結まで書き切りたい想いが強く、さらに日々面白いコメントを沢山いただいて沢山笑いながら書き進めた事が何よりも大きかったです。
ここで作品が終わりだと思うと寂しい気持ちもありますが、皆様に完結を必ず届けたいという気持ちが強いので、ここで一区切りとして完結とさせてください。
ですが!
諸々事情(?)があり、作者もこの作品でまだ書きたいイベントが多々あります。
ですので、完結してしまいましたが、次から【番外編】としてショートストーリーを好きなだけ書いて行こうと思います!
ただ連載時と違いどうしても更新頻度は落ちてしまうと思いますが、ここまで読んで面白かったと思う方がぜひ番外編も楽しみにしてくださると嬉しいです。
それと現在もコミカライズは大変良い感じで進んでおり……なんと! 既にキャラデザが届いております! 全員可愛いのはもちろんですが……個人的にナンバーワンを決めると言うならやっぱりクーママ最強(爆)。コミカライズもどんどん近づいておりますので期待しててください!
最後になりますが、もしこの作品が面白かったと思う方は、作品のおすすめレビューの★を好きな数だけ入れてくださると、より沢山の読者様にこの作品が届くと思うので、ぜひよろしくお願いいたします! もし3つでも足りないよ!と思った貴方! ぜひおすすめレビューと共に、レビューコメントも残してくださると作者が鼻息を荒れながら大喜びすると思いますのでお願いします!
これからも御峰は沢山の物語を紡いでいきます! これからも新作期待してるよと思った方は作者フォローをしてくださると新作の通知が届きますのでぜひ! 他にも完結作や連載作が多数あるので覗いてみてください!
最後まで読んで頂き、心から感謝申し上げます! ありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます