第193話 覚醒する父

 僕が父さんを連れて来たのはとある倉庫である。


「クラウド? どうしてこのような場所に?」


「えっと、何かに使えないかなとカジさんに直して貰ったモノがあるんだけど、これなら父さんの大きな助けになるんじゃないかなと思って」


「た、助け?」


「まあ、駄目なら駄目で、また違う方法を考えるよ。いつも書類の仕事ばかり押し付けてごめんなさい」


「い、いや……そこまでは…………ま、まぁその力になるとやらで上手く行く事を願うよ」


「そうだね! きっと父さんも気に入ってくれると思う!」


 そのまま倉庫に近づいて行く。


「これはクラウド様! いらっしゃいませ」


「お疲れ様です。異常はありませんか?」


「はっ。ネズミ・・・が一匹侵入しようとしたのですが、すぐに追い払いました」


「えっ? ネズミ?」


「はっ。既に報告はあげているのですが、丁度クラウド様とすれ違いになったのかも知れません。どうやらどこかのスパイのようです」


「スパイ……それにしてもここを狙うなんて……」


「恐らく一番警備が厳しかったから狙った犯行だと思います。ただ凄まじい逃げ速度でして、捕まえる事は出来ませんでした。逃げたというよりは、消えた感じです」


「消えた……なるほど。分かりました。ただここの警備も今日まで・・になるかも知れません」


「そうでございますか?」


「ええ。上手くいけば、この中にあるモノは全部外に出しますから」


「かしこまりました。クラウド様の仰せのままに」


 警備組の一番強い部隊で守らせている倉庫に入って行く。


 入口を守っていた警備員が中に合図を送って、扉を開かせる。


 僕と父さん、サリー、ゼイルの4人で中に入って行く。


「こ、これは!?」


「お兄ちゃん!? これって!?」


 倉庫の中に並んでいる大量の機械人形・・・・を見た父さんとサリーが大きな声をあげる。


「サリーは見た事あると思うけど、去年の戦争の時、フェアレーターが使っていた機械人形と呼ばれている兵器だった・・・モノだよ」


 あの時、大量に壊した機械人形だが、呪魔素はすっかり消えて無くなっているし、呪魔素の受け皿となっていたのが、小さな禍々しい魔石で、それを僕は『呪魔石』と呼んでいて、その石は全て浄化させて再利用している。


「元々は軍用に開発された機械なんだけど、それを再利用して人々の役に立つ機械人形に変えてみたよ。中に入っている『呪魔石』と呼んでいる物は僕が浄化させて、光の力を蓄えるようにしてあるから普段活動させていても、ほぼ無限に動き続けられるよ。ただ、一つだけ難点があって、僕がこちらを再利用しようとして色々変えてしまって、普通の使い方が出来ないんだ」


「普通の使い方が出来ない?」


「うん。この子達は機械なんだけど、中に入れた『浄化した魔石』が生きるようになったんだ。だからこの子達は自分達と繋がれる主人・・を待っているの。何となくだけど、父さんならこの子達を正しく導いてくれる気がして、ここに連れて来たよ」


「正しく……導く?」


 父さんがそう呟くと、並んでいた機械人形達から小さな光が発し始めた。


「な、なっ!? クラウド? これはどうしたんだ?」


「どうやらこの子達が反応しているみたい。実際初めてだから僕も良く分からないよ」


「ええええ!?」


「でも嫌な感じはしないし、このまま見守ってみようよ」


「そ、そうか……分かった。クラウドがそう言うならば、間違いあるまい」


 心配そうな表情の父さんだったけど、少し表情が柔らかくなって目の前に光を発している白い機械人形達を見つめる。


 以前は真っ黒い色合いで、姿も攻撃的なデザインだったけど、今はアーシャのおかげで白色の可愛らしいデザインに変わっている。


 アーシャ曰く、ロスちゃんを模してデザインしたようで、ロスちゃん風メイド人形って感じだ。


 暫く光を発していると、機械人形達から一斉に光のが父さんの頭の繋がった。


「う、うわああああ! クラウド!? 僕の頭に変な光が当たってるぞ!?」


「へぇーこんな風になるんだね~多分だけど、僕が考えた思考伝達を具現化したのがその形だと思う」


「し、思考伝達?」


「うん! でもこれだけの数が繋がれるのかな……?」


 いくらなんでも全数から父さんと繋がると、父さんが逆にパンクしてしまうんじゃないかと少し心配にはなるが、嫌な感じはしないので見守る。


 もし術者に負担が掛かりそうなら外れるようになっているので、大きな心配はない。


 数分が過ぎると光の線が消えていった。




「お、おおおおお!? お? うわああああ! こ、これは凄いぞ~!」




 急に大声を上げる父さん。


 どうやら大成功のようだね。


「クラウド! これは凄いぞ! 僕が思った事を彼らに自然に命令することができる! まるで手足のように動かせるぞ!」


「本当に!? これだけの数を父さん一人で繋がれるなんて、父さん凄いよ! やっぱり父さんにお願いして良かった! これからこの子達も光の下で暮らせられるよ!」


「ああ! 言葉を話すことは出来ないが、この子達からクラウドに感謝の気持ちが伝わってくるぞ!」


「そっか! それは凄く嬉しいな!」


 何となくだけど、言葉はないし、表情も変わらないけど、そんな無機質な機械人形達から心が温まるような感触が伝わってくる。


 きっと、僕のオーラを経由して喜んでくれているんだね。


「みんな! これから父さんをお願いね! 家族想いの凄く頼りになる父さんだから、色々助けてくれると嬉しいよ!」


 こうして、父さんは遠隔操作機械人形軍団を従える事となった。


 その数、総数300体。


 その後、父さんに彼らの武装・・を説明すると、顔が真っ青になって首を横にブンブン振っていた。


 もしもの時のために用意した彼らの武装を装着すると、1体でも上級魔物くらいなら殲滅・・するのも簡単だろうね。


 それに――――――――


 それを聞いた父さんはその場で気を失うほどだった。

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