第192話 東ベルン領大森林公園

 東ベルン領大森林公園を歩いて行く。


 駅を降りると、目の前が入口になっていて、入場料を払う必要はないが、入口以外からの入場は遠慮して貰っている。


 何故なら森の中は人にあまり見せたくない従魔達の巣があったり、子供達が遊んだりしているので、あくまで道沿いと広場でのみ利用してもらうようにしている。


 サリーが書いた注意書きに『森の中には凶悪な従魔も多数いて、森の中に迷い込んで食べられても責任は取りません~』と大きく宣伝しているので、恐らく大丈夫だろう。


 とまぁ、この文言は正直に言えば、全くないと言える。


 従魔達には決して人を傷つけるなと命令している。ただこちらを攻撃した者にだけ容赦するなとは伝えているが、子供達が間違えて石を投げたりするのは従魔達から逃げるか威嚇するように伝えている。


 従魔達はみんな賢いからちゃんと言う事を聞いてくれるから問題は起きないと思う。



 入口から入ると早速巨大な樹木達が道の両脇を埋め尽くして出迎えてくれる。


 道沿いには色とりどりの花が沢山植えてあって、新しく設立された『公園管理組』が力を注いで育ててくれている。


 そのおかげもあって、美しい花々に癒されながら、とっても良い新緑の香りと優しい風を感じながら散歩を楽しんでいく。


 それにしても最近はまとまって行くより、それぞれのカップル・・・・で過ごしている事が多い気がする。


 先頭は母さんとティナ。


 すぐ後ろにアーシャとアリアさんが一緒に並ぶ。


 その後ろにはアレンとソフィアさんが仲睦まじく手を繋いで楽しそうに歩いている。


 そこから距離を置いて、エルドくんがミロさんと一緒に歩いているが手は繋いでないけど、二人は普段から仲が良いので、すぐにくっつくと思われる。


 僕の前には父さんが幸せな笑みを浮かべて歩いていて、それをゼイルが見守る形だ。


 僕の隣にはサリーが歩いていて、手を繋いだり、腕に絡んだり、一人で走って花を眺めたりと、とても楽しそうにしていた。


「そういえば、ロスちゃん達って森の中かな?」


「うん~みんなで森の中を見回るみたい。お兄ちゃんの従魔達がロスちゃんに会いたがってるみたい」


「へぇーそうなんだ」


「ぷろちゃん曰く、ロスちゃんって物凄く人気あるんだって。うちでいうお兄ちゃんみたいな感じだって」


「あ、あはは……それは嬉しいな。ロスちゃんも今日はゆっくりしてくれればいいね」


「ロスちゃんはいつもゆっくりしているけどね~」


「あはは~それもそうか」


 ロスちゃんはいつも誰かの頭の上でぐだっとおぶさっているよね。


 でもなぜか頭から落ちないでくっついているから、時折自分でも気づかない時があるんだよね。




 道を進んで行くと、大森林公園の中央にやって来た。


 入口から随分と歩くかな?


 中央には大型休憩所や食事スペースが設けられている。


 既に母さんが色々作って・・・テーブルに並べて待っていた。


 腹が空いてたのもあって、みんなで食事を楽しみながら大森林に癒される。


 本来ならここから同じくらい奥に歩いていくと『キャンプ地』があるのだが、まだ完成していないので、今日はここまで。


 そして、今回公園内のみ乗れる、とある乗り物に乗る事にした。


 これは完全有料でいつでも乗れるわけではなく、彼らが乗せたいと思った時にしか乗れない――――ウルくん達である。




 全員がそれぞれウルくん達に跨ると、ウルくん達が森のに向かって走って行く。


 森の景色が素早く通り過ぎて、ウルくん達の速さがとても涼しく感じる。


 森の中は外からは見れない美しさもあり、空の上から降り注ぐ光がとても神秘的で、色んな従魔達が視界に入る。


 あれ?


 こんなに従魔達が増えていたっけ?


 何だか初めて見る従魔達もいるし、ウサギさん達なんて従魔にしたことあったっけ……?


 あれ?


 大森林の中にこんなに従魔達が多くいるの?


 しかもこの地域で住んでいない魔物達の姿まで見える!? あれ? でもちゃんと僕の従魔になっているね?


 ちょっと不思議だなと思いながらも、みんなが楽しそうにしていたので、疑問に思わない事にしよう。


 森を走り回ったウルくん達はそのまま入口まで送ってくれて、帰りのシャングリラに乗り込んだ。




「ロスちゃん。大森林公園は楽しんだ?」


『うん~凄く良い~』


 ロスちゃんを膝の上に乗せて、なでなでしながら外の景色を楽しむ。


 最近では空を飛ぶ事が多いけど、空を飛ぶと景色が壮大にはなるのだが、細かく見えないので地上の景色とはまた雰囲気が違うね。両方とも素晴らしいんだけどね。


「あ~そういえば、従魔達が増えたみたいだけど、なにか知らない?」


『ん~ご主人の従魔になりたいって。連れて来た~』


「やっぱりロスちゃんが連れて来たのか~」


『ん~』


 それにしても餌とか大丈夫かな? 従魔達で喧嘩とか起きないといいけど……。


『みんな殆ど食事をしないから大丈夫~』


「そっか。みんなが仲良く出来るんならいいと思う」


『ん~ご主人の従魔に喧嘩を売る魔物、多分存在しない~』


 あはは……でも会った事ない魔物とかだと…………最近は通り過ぎるだけでその場で跪いてくるんだもんな…………。


 最近従魔が増えた原因が分かって良かった。


 そんなこんなんでシャングリラはスロリ街の駅に辿り着いた。


 スロリ街に着いて早々にとある場所に向かう。


 もちろん、父さんとゼイルとサリーを連れて。

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