第189話 神の方舟
空飛ぶ船こと飛空艇と呼ぶ事となった旅客船『アルカディア』が空を飛んだその日。
なぜか僕が神様と言われるようになった。
最も大きいのは、大勢の人々を運べる船を作った功績だと父さんは言っていたけど、最近流行り始めている『クラウド神教』となるモノが急速に広がっていると聞いて、立ち眩みがした。
僕の神教はともかく置いておいて、飛空艇が無事稼働出来る事が決まり、次の日から毎日同じルートでそれぞれの街を移動し続けている。
一応毎日2便で、昼と夜に分かれている。
こちらの船は二通りの券があり、宿泊コースと素乗りコースというものに分かれている。
宿泊コースというのは、一般室や高級室を借りて宿泊を目的として乗船する事で、値段は普通の宿屋より3倍ほどの値段となっている。部屋は基本的に1日分を借りる仕組みになっていて、例えば昼に王都から乗った場合、次の日の昼に王都に着くまでが期間となる。
降りる場所は好きなように決めていいのだが、帰りの分は値段に込められていないので、もしスロリ街で一度降りて滞在すると帰りの便に乗れないので、その時は帰りの賃金を払う必要が出て来る。
宿泊コースと違い、素乗りコースは部屋を借りずに乗るコースとなっていて、こちらの方が一般的な使い方となる。
これは必ず『スロリ街で降りる事』になっている。
例えどこの街で乗ったとしても終着点であるスロリ街で全員降りるのだ。
帰りの際は、同じく素乗りコースでもいいし、宿泊コースでもいいけど、もし素乗りコースで飛び立った場合、スロリ街から大陸を一周してまた戻ってくるのも出来る。
素乗りコースは宿泊コースよりも大幅に安く、一般馬車より少し高くなっているが、とある方法でそれが半額になる方法がある。
それは大きく分けて二つあり、一つは『ラウド商会』の商品を持ち込んで見せる事で半額の対象となる。例えば、ロスちゃん人形やアレンくん人形から、ラウド商会でのみ売っている衣装などが当てはまる。
正直に言って、素乗りコースに乗るほぼ全ての人はこれに当てはまるので、ほぼ全員が半額だ。
もう一つの方法があって、こちらはなんと、無料になる方法だ。
方法は非常に簡単で、『クラウド神教徒』にのみ与えられる『神教徒民聖痕』と呼ばれるモノを見せれば、ただになる。これはサリーが決めた事だ。
そもそも『聖痕』って何かというと、サリーと魔技師のエンハスさんが作り上げた物で、手のひらに紋章を付ける技術を完成させた。その技術を使い、丸い円に不思議な絵が描かれた紋章を刻む。
この紋章は簡単にはがす事が出来るし、体内に被害は全くなく、普段も消えて見えない。心の中で念じる事で自身のオーラを使い光らせる事が出来るのだ。
現在、『アルカディア』は母さんの案で船首には僕の銅像が掲げられている。
本当はやめて欲しんだけど、既にベルン領の全ての町で僕の銅像が建てられているので、今更だと思って仕方なくつけたままにした。
そんな『アルカディア』は毎日飛行を続け、多くの人々を各町に運んだり、スロリ街に運んだ。
スロリ街では、暑い夏を過ごす『温泉プール』や『ペンション』を楽しみながらスロリ街の休暇を楽しんでいる。
最初は全くお客様が訪れず不安だったのだが、ちゃんとスロリ街にアクセスさえできれば、大勢のお客様が『温泉プール』に歓喜してくれた。
安価で売り出した水着も次第にどんどん売れて、『温泉プール』だけじゃなくて、川や水浴びでも使えるととても喜ばれた。水着は作るのにも素材はあまり使わないし、布面積がそもそも少ないので大量生産が可能だからね。
こればかりは魔族の多くが働いてくれるおかげだね。
そういえば、初日の航空の時、まさか王都から王様が乗ってくると思わなかった。
いつも厳格な表情を浮かべていた王様だが、船に乗るや否や柔らかい表情を浮かべ、わりとだらしないポーズで船の甲板に設置したビーチチェアに横たわり、空の旅を満喫したそうだ。
真っ先に僕のところにやってきて、これほど素晴らしい船を作ってくださりありがとうございますと何度も感謝された。
その日、スロリ街の歴史に残るほど、王様は大量の買い物をしてくれたのは後から知った事実である。
それとアルカディアが空を飛ぶようになって、一番嬉しかった事といえば、毎週の休日。
必ずイレイザ先生がスロリ街に向かう事。
その理由は、毎週リヴァイさんもスロリ街に向かうからだ。
二人が会う事は全く規制していなかったのだけれど、会うのに距離が遠いから会えていなかったけど、アルカディアのおかげで、二人が毎週顔を合わせる事が出来るのは、生徒である僕にとっても嬉しく思う。
そのほかにも、お義父様達も良く家族を連れて遊びに来てくださるようになった。
そんな飛空艇『アルカディア』は、いつしか
そして夏が終わる頃。
僕が進めていたとある事業が完成を見せる中、とある事件が起きようとしていたのだが、夏を楽しんでいた僕には全く想像だに出来なかった。
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