第186話 動き出す思惑

※お詫び。もしかして名前の間違いがあるかも知れません……元ヘルズ王国の王都の名前を今まで出してないはずなので、もし出してて間違ってたらすいません。





「あ、あれは何だ!」


 マスターと呼ばれている男が玉座から立ち上がり、目の前に映るを見て手に持っていたワイングラスを落とす。


「マスター。あれが例のベルン領から作られたという船だそうです」


「ベルン領だと!? ベルン…………領…………くっ…………う、うるさい! お前は黙っていろ! く、クソ!」


 マスターの周囲に激しい空気が広がって行く。


「おい! 魔剣はどうなった!」


「も、申し訳ございません……未だ何らかの封印が施されたのか、全く見つかりません」


「くっ! ナインなんかに預けるべきではなかった…………王都の教会本部は探したのか!」


「はいっ。聖騎士の宝物庫にもありませんでした……」


「そんな事がありえるのか! この世界で最強戦力の聖騎士の宝物庫にもないだと! 一体どこに隠せると言うのだ!」


「も、申し訳ございません……」


「クソ…………魔剣はいい。今すぐベルン領を調べろ」


「マスター……大変申し訳ございませんが……」


「今度は何だ!」


「あの地は魔王狂気が守っております……」


「は!? 狂気!? 何故ロック鳥があんな地を守っているんだ!」


「それは分かりませんが、あの地には狂気以外にも、暴虐と地獄が目撃されてるとの事です」


「な、なんだと……!? どうしてその二体まで…………それに……地獄まで…………くっ、お前は黙ってろ! まもなくだ……まもなく……まもなく俺の復讐が遂げれるというのに、どうしてこんな時に魔王達が集結しているんだ! もう人間にイクシオン・・・・・は存在しない! どうして魔王達が人間を味方するんだ!」


 既にマスターの怒りで周囲の物がボロボロに崩れて行く。


 目の前に跪いているナンバーズの身体も傷が増えていくほどに、マスターのオーラの凶悪さを見せる。


「マスター。一つ耳よりの情報がございます」


「…………ワンか。何だ?」


 怒りに支配されたマスターの鋭い視線がワンに刺さる。


「かの地のベルン家の嫡男が現在結婚の準備を進めているようです」


「……それがどうした」


「はっ。相手はこの地、バルバロッサ辺境伯の娘です。結婚式の前に一度こちらの街に寄るはずです。そこを叩いてみてはいかがでしょう」


「ほぉ……?」


「現在のベルン領には魔王が守っていますが、嫡男を手に入れる事が出来れば、あの地に潜り込むのも難しくないでしょう」


「…………くっくっくっ。良いだろう。ワン。今回の作戦の指揮は全てお前に任せる」


「はっ。必ずや」


「ツー!」


「はっ! ここに」


「もしもの時のために、お前は例の作戦の準備を進めておけ」


「!? か、かしこまりました」


「嫡男とやらの結婚式か…………皮肉なもんだな。なあ? ――――――イクシオン」




 マスターの顔は邪悪な笑みが浮かび上がる。


 だが、何故かその頬に一筋の涙が流れた。




 ◇




 スロリ街からうちの王国の王都まで3時間。


 そこから北に船を進め、ホルン王国を横切り、そのまま北ベルン領の一番大きな街、元王都でもある北領都ヘルザイアに辿り着いた。


 元々王都からヘルザイアまでは馬車で一か月は抱える距離だけど、真っすぐ飛んでくれば、たったの5時間で着けた。


 アルカディアの中は遊ぶ場所も多いので5時間なんてあっという間だった。


「イレイザ先生? 行ってもいいんですよ?」


「ほ、本当!?」


「もちろんです。彼らには罰として北ベルン領を守って貰ってますけど、規制は全くしていませんから。これからはいつでも会いに行けます」


「……うん! ありがとう! クラウドくん!」


 イレイザ先生は僕を一度抱きしめると、真っすぐ彼らに向かって走って行った。


「あら、モテるのね」


「あはは……そうなの……かな?」


「ふふふっ。それにしても彼らにはこの地を守らせているけれど、私はこのままでいいのかしら?」


「そうですね…………エリシアさんもフェアレーターの一員でしたから、本来なら彼らとこの地の人々を守って貰いたいんですけど……」


「けど?」


「何となく、エリシアさんはスロリ街にいるべきだと思ったんです」


「何となく? ふふっ。変な事を言うのね」


 そう話すエリシアさんも仲間達のもとに歩いて行った。


 お互いに事情を知っているだけに久しぶりに会う仲間達と笑みを浮かべて話し合うエリシアさん。


「主様」


「ムーちゃん! いつもありがとうね」


「いえいえ。主様の命を遂行出来て、とても嬉しいです」


 相変わらず無表情の美少女のムーちゃん。


 久しぶりに頭を撫でてあげると、無表情が少し緩んでますます可愛い。


「これからもエリシアさんをお願いね?」


「かしこまりました。それにしても主様はエリシアさんをとてもお気になさるのですね?」


「う~ん。そうだね。なんとなく凄く気になってさ。なんというか、こう、守ってあげたくなるような?」


「く~ら~う~ど~?」


「へ? ティナ? どうしたの?」


 ティナが満面の笑顔を浮かべて寄りかかって来る。


守ってあげたい・・・・・・・ってどういうこと?」


「え? う~ん」


「う~ん?」


「拾った子猫みたいな感じ?」


「ひ、拾った子猫?」


「うん。いつか飼い主さんに届けなくちゃってなる感じかな~」


「…………ねえ? クラウド」


「うん」


「エリシアさんを奥さんに迎えたい時はちゃんと相談してね?」


「えええええ!? そ、そんなことしないよ!?」


 ティナが寄りかかった理由って……そういう事だったんだ…………言葉って難しいね。

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