第185話 アルカディア号
「わあ~! おっきぃ~!」
サリーが目の前に雄々しく聳え立つ巨大船――――『アルカディア1号』に歓声をあげる。
みんな声には出してないけど、あまりの大きさに驚いていた。
「ゲルマンさん。お疲れ様です」
「いえ! これも全ては
「あはは……本当に無理だけはしないでくださいね?」
「ははっ! それと以前クラウド様から依頼があったもう一つの事業にも早速取り掛かります! それはそうと」
「はい?」
「アレン様のモノはどうなっておりますか?」
「あ~アレンくん~」
「うん? どうしたの? 兄さん~」
アレンとソフィアさんがやってくる。
「ゲルマンさんから、あれはどんな感じか聞かれたけど、どう?」
「あ~ゲルマンさん。ごめんなさい」
「むっ!?」
「実はあれは僕に相性が合わないようでして……」
「そ、そうだったのでございますか! そ、それは大変――――」
「ですが」
そう話すアレンくんが足を崩し、足元にいたレオくんの頭を撫でる。
「レオくんがとても相性が良いみたいで、レオくんに使って貰う事にしました! ゲルマンさん。本当に素敵な神器をありがとうございます!」
「おおお! レオ様が付けていたのですね! こちらこそ、使って頂き感激でございます!」
ゲルマンさんが興奮するのは、昔、カジさん、ゲルマンさん、エンハスさんに作って貰った神器をカジさんのを僕、ゲルマンさんのをアレン、エンハスさんのをサリーに渡しているのだ。
アレンくんに渡した神器は――――――
「とてもお似合いですぞ! レオ様! ――――――『王者のベルト』が輝いております!」
本来なら僕のベルトになる予定だったけど、3つも要らないというか、持て余してしまうからとアレンくんにあげた物だ。
アレンくんが使うとあの大きなベルトが腰に掛かるというよりは、タスキのように肩から斜めに掛けられるくらい大きかった。
それもあってアレンくんも使えなかったようだけど、レオくんの腰…………というよりは背中(?)に丁度良い大きさになっている。
余談だが、レオくんが大きくなっても既にベルトは同化しているのでベルトも大きくなるらしい。
「さて、『アルカディア』に入ってみようか!」
「「「「は~い!」」」」
僕達は初めて完成した大型旅客船『アルカディア』に入った。
中の構造は全部で5階構造になっており、3階から5階は全てお客様部屋となっていて、3~4階は一般室で、5階は高級室となっている。
1階はフロントとお店が並んでいて、お店の数だけでラウド商会直営店がほぼ全て入っている。
これならスロリ街に降りなくても買える仕組みになっているのだ。
2階はロビーとその他娯楽が楽しめるように作られていて、リバーシが出来る部屋はもちろん、食事やお酒を楽しめるお店もある。食事は共通で昼食、夜食が付いているので、部屋の中で食べる事が可能となっている。
そして、一番の目玉。
それは船の甲板であり、僕の魔法が掛けられているので、外から何かが侵入する事は出来ず、中から外に身を投げ出す事も出来ない。僕のオーラの濃さよりも強い方がいるなら突破出来るけどね。
基本的に風も通さないというか、風を通してしまうと立っていられないので風も通さずに、空の上から広がる空を楽しめるようになっている。
と言っても、各部屋に大きな窓があるので、そこから外を眺める事も出来る。
では、こんな大きな船をどうするのか。
それはとても簡単だ。
船を丸ごとスラの魔法で空に飛ばせばいいのだ。
ただ、それだけだと船の操作が難しいので、操作を簡単にするためにこの船にもう一つの秘密装置を付けている。
それが船の後尾に設置した――――『魔導エンジン』である。
これはスラではなく、僕の従魔であるコメにお願いして、風を噴射して貰うように作った。
それを最先頭に作った『操舵室』から操作出来るようにして、前進、減速、停止、左回り、右回りが出来るようになり、スラの分体に船の上下を指示を出す作りだ。
「では早速、王都に向かおう~!」
予行練習も兼ねて、旅客船の船長や操舵手、その他の全従業員が乗り込んで、実戦さながらの予行練習となった。
まあ、来週の週末から早速出番なので、それまで毎日予行練習が開かれる予定ではあるのだ。
早速空を旅して、最初に着いたのは、隣領のバルバロッサ領都エグザの隣に作られた着陸場だ。
スロリ街からここまで馬車だと半日はかかるのだが、アルカディアだと15分くらいで着くんだな。
お義父様とお義母様が出迎えてくれて手を振ってくれる。
そういえば、この街にアイラ姉ちゃんがいるはずだが…………もう2年半も会ってないんだけど、元気にしてるのだろうか?
今日はスケジュールがびっしりなので、挨拶には行けなさそうだ。
お義父様に挨拶を終え、領都エグザの住民達にも見守られる中、船を浮かせて、王都を目指した。
以前王都まで馬車で一週間程掛ったのだが、アルカディアは無事3時間で着けれた。
そこから北ベルン領の二つの元王都にも行くので、王様やイレイザ先生に船を見せてそのまま北ベルン領に向かった。
イレイザ先生も王都から合流して空の旅を楽しんでくれた。
だが、この時。
僕が知らない場所で僕が想像していたよりも大きな事が起きようとしたのは、想像だにしなかった。
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