第184話 着々と進むそれぞれの思惑
二月。
つまり、夏が始まって以来、学園の同級生や後輩達がよく溜息を吐くようになった。
「イレイザ先生」
「……ん?」
「何だか最近、みんな元気がないですね?」
「…………そりゃそうわよ」
「どうかしたんですか?」
「……全部クラウドくんのせいね」
「ええええ!? 僕!?」
「ラウド商会から『温泉プール』となるモノが出来たって宣伝されたでしょう?」
「そうですね」
「…………行きたくて仕方ないのよ! ねえ? クラウドくんはいつからこんなドSみたいになったの!? あれかな? 私達の布教活動がまだまだ足りない事に対する罰なのかな!? 休みなんて1日しかないし、ベルン領には入れないし、でもラウド商会では『温泉プール』なんて宣伝されると私達はどうしたらいいの! ねえ!」
「お、落ち着いて! イレイザ先生!」
「落ち着いてなんていられないわよ! 私も『温泉プール』行きたいもの! 『水着』来てみたいもの! ねえ!」
イレイザ先生が俺に詰め寄り、それを見守る同級生達が小さい声で「イレイザ先生頑張れ……!」と応援していた。
「まもなく行けるようになりますから」
「へ?」
僕の答えを聞いたイレイザ先生がポカンとなる。
「そろそろアナウンスされると思いますけど、これから働く日と休みの日が変わりますから。それにスロリ街に行く手立てもラウド商会が大急ぎで準備中ですよ」
「ほ、本当に!?」
凄まじい反応を見せるイレイザ先生が俺に詰め掛かると――――――これわざと当ててるんじゃないよね!?
「ほ、本当ですから! 先生! 当たってますから!」
「あら、私なんてティナちゃんやアーシャちゃんと比べて大した事ないでしょうに」
「そ、そんな事ないですけど! そもそもそんなに比べないでくださいよ!」
いたずらっぽく笑うイレイザ先生から詳しい説明を求められて色々説明してあげた。
その後、昼食の時にティナと会った時、一瞬目線が下に下がってしまって、それに気づいたティナが「触りたいの?」と何でもないように話して来て、その日は目が覚めたら保健室だった。
◇
数日後。
王国から大々的に、これからは4日働き2日休みを正式的に決めたと知らせがあった。
最初は動揺していた人々だったが、その下に知らせよりも大きな文字で『ラウド商会の新しい事業のため』と書かれていて、大勢の人達が大喜びしていた。
母さん…………一体どんな交渉をしたのだろうか…………。
「これはこれは、クラウド様! いかがでしょうか!」
スロリ街の『マンション』の隣に建設した『大型工場』。
ここはこれから何かしらの大型建造物の為に建てておいた工場なのだが、早速『船』の作りに取り掛かって貰っている。
代表は忙しいカジさんに代わり、ゲルマンさんが指揮を執っている。
ゲルマンさんもすっかり慣れたようで指示を送っている。
それにしても、ゲルマンさんのおかげで、あまり人と関わらないと有名なドワーフ族も増えて来て、作業がとても速く進むようになったね。
「この短期間でこんなに! 凄いです!」
「ははっ! 今まで培った全てのノウハウをつぎ込みました! この後、念のためもう一隻作るので、そちらにはもっと良い工夫が出来ると思います!」
「それはとても楽しみです。引き続き無理はせずに頑張ってくださいね!」
「はっ! ありかたき幸せ!」
あはは……ゲルマンさんは大袈裟だな。
それにしても、こんな巨大な船がこんなに早く完成するなんて、思いもしなかった。
試運転はもう明日から行うそうだ。
母さんやみんなもソワソワした気持ちで、明日を楽しみにしていた。
◇
北ベルン領の各町代表の会議。
その日は、各代表達が5日に一度集まって開催される会議であった。
議長は元エンド王国の王都を任されているハンゾウである。
彼は昔からエンド王国を陰から支えつつも、その子孫を各国の諜報員として派遣する生業をしていた『シノビ一族』の長である。バルバロッサ辺境伯の諜報員で活躍中のカインもまたこの一族の一人である。
「では、会議を始める」
いつもならもっと明るい雰囲気で進むはずの会議は、会議史上最も重い空気の中で始まった。
「まず最重要の件の報告だ。ラウド商会頭のキリヤ様から例の
「「「「おおおお!」」」」
「だが、これは考え方を変えれば、我々の
会場に溜息の音が広がる。
「そこで、キリヤ様の伝手で知り合えたエンハス様にお願いして、
「「「「おおおお!」」」」
「明日にはクラウド
「「「「やるしかない!」」」」
「ではここに我が北ベルン領の
「「「「お~!」」」」
「明日を照らすクラウド神教のために~!」
「「「「明日を照らすクラウド神教のために~!」」」」
「クラウド神様!」
「「「「クラウド神様!」」」」
「
「「「「命を捧げます!」」」」
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