第180話 夏のプール①
サリーが企画した『リバーシ大会』が終わって数日。
上位8名の人には『スロリ街の居住権利』が渡され、いつでも引っ越しが出来るので、早速8人の引っ越しが決まった。
その中の2人、アーサーさんとシリューさんは優勝、準優勝者として『豪邸』を送る手はずになっていたのだが、2人がこれを拒否した。
理由としては、エキシビションでサリーに完膚なきまで負けた事で、貰える資格がないと、来年のエキシビションで少しでもサリーを追い詰める事が出来たら、その時に貰うとの事で、『豪邸』は一旦保留という形を取った。
来年の大会では、アーサーさんとシリューさんの2人は参加が認められないのだが、エキシビションとして2人ともサリーとの再戦が確約されたので、その戦いに向けて武者修行に出掛けるそうだ。
これからはスロリ街の一人の住民となって、仕事をしつつ腕を磨くと宣言していた。
春が過ぎ、夏の月となった。
最近はネメアの背に乗り、大陸を往来している母さんが世界的に有名となり、母さんが現れた地域で『ベルン家の炊き出し』が行われると噂されている。
母さん…………頼むから彼らにまであれを言わせないで欲しい…………。
今年の夏は、去年から進んでいたあの計画が完成する月となる!
暑い夏を乗り切る為に作られた――――――『温泉プール』だ!
「えび! トゲ!」
目の前にえびとトゲが現る。
「運営は順調にやれそうかな?」
【ご主人しゃま~完璧です~】
【主様! 完璧でやんす~】
2人の頑張りのおかげで、明日には温泉プールが開店出来そうだ。
目の前に5つの大きな体育館のような外観の建物は、全部で3種類に分かれている。
一番奥に作られた黒色の建物は、『上級者用』温水プールで、深さが4メートルほどになっている。
ここは泳ぐのが得意な人用のプールで、遊ぶというよりは、泳ぐ練習のためのプールとなっていて、プールには水泳競技用のような浮きラインが敷かれている。
泳ぐ向きも決まっていて、立ち台を作っている。
その手前――――つまり、中央に位置する2棟のプールは、『アトラクション』温水プールで、深さは1メートルほど。
中にはアーシャが考えた『アトラクション』が作られていて、高さ20メートルから降りてくる温水滑り台はスリリングな遊びアトラクションとして大人気になるに違いない。
他にも滑り台以外に、乗り物に持って20メートルから落ちる系のアトラクションもあれば、脇に一台だけだが、水を一気に切って走り抜ける乗り物もある。これは安全を期して、この乗り物の水場には人が入れないような作りになっている。透明な硝子のようなモノで囲われているのだ。
最後に一番手前にあるプール2棟は、子供用プールだ。
どちらにも2種類のプールがあり、一つは深さ30センチほどのプールが面積的には2割くらい、もう一つは深さ60センチのプールが面積の4割、残り4割はプールはなく、子供達が走って遊べる場となっていて、ボール遊びも出来るし、走り回れるスペースとなっている。
この割合はいつでも変更出来るような設計になっているので、人気の具合で変更していく予定だ。
今回一番の主役はどのプールにも天井からくるくると回りながら周囲に温水の雨を降らしている『温水玉』である。
これはえびとトゲの合体魔法で、魔力は僕のオーラを繋げているので、僕のオーラが減らない限り半永久的に温水を降らし続ける。
実施丸一日5棟分を降らせてみたけど、僕のオーラはちっとも減らなかったので、運営には全く問題なさそうだ。
アトラクションにはもう一つの専用アトラクション温水玉が別に設置されて、アトラクションに水を沢山流していたりする。
そんな温水プールの開店前に、僕達家族や知り合いを呼んで、温水プールパーティーが開かれた。
「広~い!」
サリーが両手を広げて目の前に広がるアトラクションに興奮気味に声をあげる。
「こ、こほん。クラウドや」
「どうしたの? 父さん」
「そ、それがだな……あの服装は何ともならなかったのか?」
父さんが言う服装って、水着の事である。
「ベルン殿」
「これは、バルバロッサ様」
「こほん。ベルン殿? あれは素晴らしいモノじゃ」
「へ?」
「珍しいな、熊よ。わしも同じ考えじゃ」
「ほお! 虎よ。珍しく意見が合ったな?」
お義父さん達はお互いを、熊と虎と呼ぶ。
熊がティナの父、バルバロッサ辺境伯様。
虎がアーシャの父、ガロデアンテ辺境伯様だ。
「見るがよい! うちのティナの素晴らしい水着姿を!」
「何をいう! うちのアーシャの水着こそ最高ではないか!」
あ~はいはい。二人とも素晴らしいですからね~。
二人が言い争いを始めたので、父さんに仲裁役を押し付けてプールに移動する。
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