第179話 リバーシ大会本戦激突!

 お昼休憩を挟む。


 選手達には昼食に『特別ベルン家セット』をご馳走する。


 本戦に進んだ128名の選手達の中の大半は、ご馳走を泣きながら食べていた。


 食事時間もステージでは、サリー達が色んな新作を身に包み、周囲のお客様達から喝采を受けている。


 そんな昼食時間も終わりを迎える。




「では、栄えある第一回目のリバーシ大会の本戦を始めます~!」


 わあ~! って大きな声援があがる。


「ルールは予選と同じですが、ここから戦い方が変わります! 総当たり戦だった予選とは違い、ここから毎回くじ引きによる1回のみの対戦となります! 選手達にチャンスは1度のみという事になります! それでは各ブロックから勝ち上がった1位の64名様がくじ引きになります~! 1ブロックからくじ引きに来てください!」


 くじ引き箱を持って、可愛らしいフリフリのドレスに帽子を被ったサリーがくじ引きを担当する。


 次々くじを引いていき、64名がそれぞれの2位の人達との戦いが決まった。


「では――――本戦1回戦を始めます~!」


 ソフィアさんの号令と共に、試合が始まった。



 次々戦いが進み、1回戦で64名が落ち、2回戦で32名が落ち、3回戦で16名が落ち、4回戦も8人が落ちて、5回戦でさらに半分となり、運命の4人の戦いとなった。




 ◇




「ではこれから準決勝を行います~!」


「「「「わあああああああ!」」」」


「準決勝もこれまでと同じく、くじ引きとなりますが、ここからのくじ引きは我らサリーちゃんが行います!」


「は~い!」


「この戦いで勝った2人は決勝戦に進む事になりますが、勝った時点でお二人には『スロリ街の一等地の居住権利及び豪邸』の賞が確定します~!」


「「「「うわああああああああ~!」」」」


「では、早速サリーちゃんにくじを引いて貰いましょう~!」


 サリーが箱の中から番号を引いて26番を引いた。


「26番のシリュー選手が初戦となります~!」


 次に引いたのは、91番だ。


「シリュー選手の相手になるのは、91番のカカ選手です~!」


「「「「わあああああああああ~!」」」」


「次戦は40番のキイエ選手と、128番のアーサー選手との戦いとなります! 今回は一戦ずつの戦いとなります~! 最初にシリュー選手とカカ選手の戦いです! 皆さんも大きな声援で応援をお願いします~!」


「「「「頑張れ~!」」」」


「「「「わああああああああ!」」」」


 王都は黄色い声で包まれる。


 広場だけでなく、周囲の高い建物の窓や屋上からも見ている観客達も多い。


「では――――――試合、始め~!」


 二人の男の戦いが始まった。


 最初に迷いのない打ち筋のシリュー選手に比べ、カカ選手は10秒をしっかり考え込むようにしている。


 お互いに進んでいくと、リバースで一番強いとされているかどを先に取ったのは、カカ選手だ。


 だが、不思議とシリュー選手は落ち着いた感じで、相変わらず早指しを続けている。


 寧ろ、焦って来ているのはカカ選手のように見える。


 段々手が進んでいくと、次の角を取ったのは意外にもシリュー選手で、次の角もシリュー選手が取った。


 カカ選手の顔が悔しむ表情に染まっていき、考慮の持ち時間180秒もどんどん減っていく。


 そして、最後の最後。


 手を打つ事なく、カカ選手が180秒を使い切り、負けましたと頭を下げた。


 広場が喝采に包まれ、シリュー選手の名前ももちろん持ちあがるが、良い戦いを見せたカカ選手の名前もあがり、二人に大きな拍手が送られた。




 続いてキイエ選手対アーサー選手。


 二人の戦いは、先程の戦いとは打って変わり、二人とも長考するタイプだ。


 序盤は二人とも1手に20秒ほど使い、持ち時間を良い感じで使いながら戦いを進める。


 お互いに10手ずつ進めた頃、持ち時間も半分を切った当たりから、アーサー選手がノンストップで打ち始める。


 まだ落ち着いた感じで戦いを進めるキイエ選手だが、その顔に焦りが見える。


 アーサー選手の早指しに、少しずつ押されていき、最終的には持ち時間を使い切り、キイエ選手もまた負けましたと頭を下げた。


 そんな二人にも喝采が鳴りやまない。




 そして、勝利した二人の戦いが始まる。


 最初に仕掛けるのは、シリュー選手だ。


 相変わらずの早指しで攻めるが、アーサー選手は先程と同じく1手に20秒を使いながら戦いを進める。


 1手ごとに広場に歓声があがる。


 すでに賞品は手に入れているが、このあと控えているサリー戦のために二人は今まで以上に真剣な戦いを見せている。


 お互いに12手が進んだ時、アーサー選手が仕掛ける。


 迷いのない手が放たれると、負けじとシリュー選手もノンストップで次の手を放つ。


 たった5秒で6手も進んでしまって、観客から声をあげるタイミングがなく、その場の全員が息を呑んだ。


 止まる事なく、次から次の手を打ち続ける二人。


 僕の見立てだと、どちらも負けておらず、たった一つのミスで負けてしまいそうだ。


 そんな二人の手がお互いに25手を過ぎて、盤面が石でいっぱいになる。


 あと7手。


 二人の手がぴったりと止まる。


 最初に長考するシリュー選手。


 その時間を有効活用するために盤面を食い入るように見つめるアーサー選手。


 シリュー選手が放った手に、今度はアーサー選手が長考するが持ち時間はわずかに60秒。


 その半分の30秒、長考する。


 次の手を放つと、また長考するシリュー選手。


 長考が終わると、シリュー選手が放った1手から二人は最後までノンストップで放ち続ける。


 そして、最後の1手が放たれ、試合が終わった。


「試合の結果は――――僅差でアーサー選手の勝利となります~!」


「「「「「「うわあああああああああ~!」」」」」」


 その日、一番の喝采が広場に響いた。


 戦いを終えた二人はお互いに握手を交わすと、その目には悔し涙と嬉し涙が浮かんでいた。




 その次から行われるエキシビション。


 自信満々のサリーと、王者として胸を張ったアーサー選手の戦い。


 5戦3勝制の戦いは、持ち時間180秒から1秒も減る事なく、3戦ストレートにサリーの圧勝で終わった。


 アーサー選手がその場で崩れて泣き出し、それをシリュー選手が宥めに入ったのがとても印象的な大会だった。

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