第171話 前世の産物

「私はこの『ここあ』っていうのが好き!」


 みんなで分け合って飲んだ飲み物を囲って話し合っている。


 サリーは甘いココアが好きなんだね。


 他のみんなもそれぞれ試して飲んだみたい。


 アレンくんとソフィアさんは意外と同じ物が好きみたいで抹茶ラテ。


 ティナは意外にも普通のコーヒーが好きなようで、アーシャは僕と同じカフェラテだ。イメージから二人が真逆なのが少し微笑ましい。


 アリアさんはミルクティーが好みのようで、甘さ控えめにしている。元々紅茶が好きだしな。


 エルドくんは温かい飲み物よりは、冷たいコーラが好きなようで、炭酸飲料に驚いていた。そういえば、この世界で炭酸飲料は飲んだことがなかったね。


 その他にもレモネードなんてあるけど、似た飲み物はあるもんな。



 飲み物を堪能し終えて、今度はリバーシを教える。


「まず、盤面は横縦8マスになっていて、この前後色が違う石を使うんだ。石は全部で64個あって、まずそれを半分ずつ分ける」


 サリーとアレンに32個ずつ石を渡す。


「では先行と後攻を決めるんだけど、まずはサリーが黒でアレンが白ね。まず盤の中央の4つのマスに先行から好きな場所に石を置いてみて」


 サリーが石を黒面にして置く。


「次はアレンも中央の4つのうち好きな場所に置いて、次はサリー、次はアレンが置いて準備完了だよ」


 盤面の中央に白黒の石が2つずつ置かれる。


「次からはルールがあって、必ず相手の石を挟む形で置く事。まずサリー、こちらに石を置いてみて」


 サリーが白石の隣に置く。


「こうやって挟んだ形になると、間の石を逆にするんだ」


 白石に挟まれた黒石を反転させて白石に変える。


「あ! だから全部白と黒色が染められているんだ!」


「そうそう。置けるのは隣だけじゃなくて、斜めでもいいけど、必ず挟む形にする事。もし置けない場合はパスになって、次の人の番になるんだ」


「ん? お兄ちゃん!」


「うん?」


「もしそのパスというのがなった場合、どちらか先に石を使い切る事になるんだけど……?」


「パスした石は使用不可のところに石を置くんだ。これで両側石が無くなったら試合終了って所だね」


「う~ん。どちらかパスした場合、盤面は全部埋まらないって事だね?」


「そうそう」


「ふぅ~ん……………………これは上手く行けば、7連打でボコボコに出来るかな」


 サリーがしれっと恐ろしい事を呟く。


 7連打……?


 リバーシに連打という言葉って存在していたっけ……?


 サリーに促されアレンも進める。


 悩むアレンに対して、サリーの1打は迷いが全くない。


 ノンストップで打って来るサリーの威圧感にアレンの表情が段々強張る。


 サリー…………? リバーシって初めてだよね?


 そこから盤面が進むと、アレンの最後の1打が放たれた。


 あ…………7連打ってそういう意味だったんだ…………。

 

 まさに圧勝で終わった戦いに、落ち込むアレンを宥めてあげるソフィアさんの二人が微笑ましい。


 サリーが狩人の目になって相手を探す。


 誰も相手にしたがらないので、最終的に僕とやることに。


 先行が僕ということで、盤面を進める。


 サリーが石を置くと、次に置く場所が何となく見える気がして僕もすぐに置く。


 たった20秒で盤面の殆どが石で埋まった。


 その時点でサリーが一瞬手を止めて盤面を見つめる。


 30秒ほど悩んで、打ち進めると、結果的に僕の負けとなったけど、みんなから歓声があがる。


「負けてしまった~」


「うふふ。お疲れ様。クラウド」


 その中で盤面を食い入るように見つめるサリー。


 久しぶりに見る凛々しい顔の妹が愛おしく思える。


「はへ? お兄ちゃん? どうしたの?」


 気が付けばサリーの頭を撫でている自分がいた。


「サリー? これはお遊びなんだから、もっと気楽に楽しんでね?」


「うん!」


 ぱーっと笑うサリーが本当に可愛い。


「それじゃ他の部屋も探索してみようか! どうやら地下もあるみたいだから」


「地下!?」


「エリシアさんが面白いモノが見れるかもって」


「行く~!」


 リバーシから興味が移ったようで、素早く片付ける。


 みんなを集めて操縦室に入って行く。どうやら地下はここから入れるらしい。


 操縦室の前方に地下に続く扉があって、扉を開くと下に階段が続いていて、そのままサテライトの中央に目指す作りになっている。


 そこからゆっくり階段を降りると、サテライトの中心部と思われる広い場所が出て来た。


 ただ、広い場所で何も置いてない。


「ん!? 魔導エンジンが無くなってる!?」


 一番先頭を歩いていたエリシアさんから、何やら不穏な言葉が飛び出した。

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