第169話 遺跡の入口
スラに案内されて道を進む。
前を歩くサリーがルンルン気分で歩くのがどこか可愛らしいと思う。
それにしてもずっとこんな森で住んでいたエルフ一族って凄いんだね。
「サリー」
「うん~? どうしたの? お兄ちゃん」
「ここに遺跡があるって言ってたけど、どうして知ってたの?」
「んとね~キルアさんに魔法を教えてた時に、森の話になって、森に変な場所があるって教わったの~」
サリーは普段から領民に
「何だか不思議な作りになっているって聞いてたから楽しみにしてたの!」
そんなサリーの頭を撫でてあげるともっとご機嫌になる。
暫く徒歩を楽しむと、11体に増えたスラの身体のうち遥か前方に進んだ10体のスラが飛び跳ねている。
「お兄ちゃん! 遺跡の入口みたい~!」
遺跡の入口を見つけたサリーが、真っ先に走って行く。
そんなに慌てなくても遺跡は逃げないのに、余程楽しみだったのだろうね。
僕達もゆっくりと遺跡の入口に向かった。
◇
到着した遺跡の入口は、ただの洞窟だ。
「この洞窟の中に遺跡とやらがあるの?」
【そうですぜ~! 旦那様!】「そうですぜ~! 旦那様!」
「へぇー! スラくんってクラウドを旦那様って呼んでるんだ?」
面白そうにそう話すティナ。
「そうだね。みんな僕の呼び方が違う気がするかな?」
「そうだったんだ! 今度ぷろちゃんに翻訳して貰おう~」
「いつでも呼んでくださいね! ティナ様!」
すっかりみんなと仲良くなったみたいで良かった。
まぁ、ぷろちゃんも人懐っこいからそれほど心配はしてなかったけども。
洞窟の中に入ろうとすると真っ暗で何も見えないなと思ったら、すかさずアレンが大量の光の剣を召喚して、洞窟の道々に松明代わりに設置してくれた。
「…………とんでもない光の剣の使い方だな」
エリシアさんがボソッと呟く。
洞窟をゆっくりと進んでいく。
僕達の足音だけが洞窟内に反響していて、周りからは生き物の気配が全くしない。
道を真っすぐ進んでいくと、一番奥と思われる場所に辿り着いた。
「あれ!? これって…………」
僕の目の前に広がっているのは、前世の映画で出てくるような近未来的な
「これが遺跡!」
サリーが白い壁に手を触れる。
少し叩いてみたり、色々触ってみるが、壁からは何の反応もない。
「やっぱり入れないのか~ここが入口じゃないのかな?」
「いや、ここは入口であってると思うよ」
「お兄ちゃん? なんか知ってるの!?」
サリーの食いつきが凄くて、僕の腕を引っ張る。
「う~ん。何となくなんだけど、ここの部分が入口になっている気がするんだ」
生命にはオーラがあるように、物にもオーラのようなモノが存在する。
ここの壁には扉のような切れ目のオーラが見えているのだ。
「う~、全然見えないよ……」
「あはは、ちょっと特殊なオーラっぽいから仕方ないさ」
サリーが肩を落とす。
ここの壁を壊したら中に入れるかな?
というか、壊していいものだろうか?
その時。
ずっと一番後ろで僕達にぎりぎりついて来たエリシアさんが前に出て来た。
「そこが入口で合ってるわよ」
「エリシアさん? ここを知ってますか?」
「…………ええ」
その言葉にサリーの目がキラリと光る。
「エリシアさん~! 詳しく教えてよ~! 代わりに無詠唱魔法教えてあげるから!」
「無詠唱魔法!? す、凄いわね…………まぁ、このままではクラウドくんに壊されそうだし……」
えっ!? ば、バレてる!?
「ここは『サテライト』という
「サテライト~! かっこいい名前ね!」
とサリーが興奮している傍ら、僕の記憶にある言葉で一つ確定した事がある。
これを
「エリシアさん? これを作った方のお名前を聞いてもいいですか?」
「そうね。ミナト――――――
そうか。
やはり、この世界には僕以外にも転生者がいたんだね。
ただ…………エリシアさんの悲しそうな声から、彼が生きていない事も知る事が出来た。
「ミナトって綺麗な名前だね」
「そうだね」
「エリシアさん? ここを開けるための鍵って、どんな物ですか?」
「鍵は『召喚の短剣』と呼ばれている4つの短剣でしか開かないようになっている」
召喚の短剣!?
意外な答えにティナと目と目が合う。
僕が持っている『風神の短剣』こと『召喚の短剣』を取り出した。
「!? まさか『召喚の短剣』も持っているとは…………」
「たまたまですけど、エルフ一族が見守ってくれたものなんです」
取り出した短剣が淡い翡翠色に光り始める。
遺跡の壁に同じ色の魔法陣のようなモノが浮かび上がった。
そして、僕がオーラで確認した扉の形をした部分に切れ目が入り、扉の部分が消え、遂に遺跡の中が外からでも見れるようになった。
「お兄ちゃん! 扉が開いたよ~! 入ってもいい!?」
「ふふっ。いいけど、あまり荒らさないようにね?」
「うん!」
駆け足で入るサリーに続いて、僕達もミナトさんが残してくれた遺跡の中に入った。
「たまたまではないわ…………運命かも知れない」
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