第166話 王家からの圧力?

 今日はイレイザ先生に頼まれて、1年生の訓練を見てあげる日となった。


 訓練所に着くと、1年生が…………全員集まっている!?


「イレイザ先生!? 1年生全員いません!?」


「そうね。私が1年生の主任になって、みんなに自由参加にしたら、全員来てくれたみたいね」


 イレイザ先生……1年生の主任になったんだ……。


「「「「クラウド様! 忠誠を誓います!」」」」


「まだ何もしてないよ!?」


 そんな彼らの後ろに隠れる影を見つける。


「…………サリー? 何してるの?」


「見つかってしまった! てへっ」


 可愛らしい表情でぴょーんと出てくるサリー。


「お兄ちゃんの偉大さを知らしめなくちゃね!」


「偉大じゃないよ!?」


「ほら、ティナちゃんも手伝ってくれているよ~」


 サリーが指差した先には、戦士科を率いたティナが見える。


 こちらを見つめて満面の笑顔で手を振る。


 仕方ないので、サリー達とともに1年生の訓練を見て上げると、何故か泣いて喜ばれた。


 泣くほどなのだろうか……。




 ◇




 1年生の訓練を見てあげてから数日後。


 学校が終わり、屋敷で寛いでいると、とある一団がうちにやって来た。


「クラウド~」


「どうしたの?」


 ティナがお客様を出迎えに行って、駆け足でやってきた。


「クラウドに会いたいって方が訪ねて来たんだけど、会う?」


「急用かな? どなたが会いにきたの?」


「えっとね。――――――















 王様」


「今すぐ会いましょう。寧ろ、待たせるべきじゃないと思うんだ。ティナ」


「そうね。せっかく来てくださったから、会った方が良いかもね~」


 ティナは仕方ないね~と言わんばかりに王様を迎えに行く。


 僕はアーシャと一緒に客間に急いだ。


 客間でお茶の準備をすると、すぐに大きな身体に王冠を被った男性と宰相様が部屋に入って来る。


 間違いなく王様だろう。


「ど、どうぞ!」


「うむ。感謝する」


 王様はそのままソファーに座り、その後ろに宰相様が立つ形になった。


 後から入って来たティナに促されて、王様の向かえに僕を中心に両側にティナとアーシャが座る。


「初めましてだな。わしがディアリエズ王国の国王だ」


「初めまして。ベルン子爵家嫡男のクラウドです」


「「お久しぶりです」」


 大貴族である二人はさすがに面識があるようだ。


「うむ。二人とも久しいな。本日は急に訪れてしまい悪い事をしたな」


「いえ、わざわざご足労いただきありがとうございます」


 挨拶が終わり、一度お茶を飲み、本題に入る。


「それで、王様? 本日はどのような用件で?」


「うむ。単刀直入に聞こう。クラウドくんに一つ聞きたいのだが、ベルン家はこの先、我が国に対してどうするつもりなのだ?」


「王国をどうする? ってどういう事ですか?」


「現在ベルン家の活躍は王国だけでなく世界的に凄いモノとなっている。もちろん、それに対する納税もしっかりしていて、我が国で最も納税も多い家としてとても誇りに思う。しかし、もう二年もバビロン学園から王国に入る学生が居ず、先日調査では今年も一人も入って来ないという」


 ううっ…………。


「学生達に王国へ就職するように強制する事はしたくない。いや、するべきではないと思っておる」


「そう……ですね。僕としても個人の自由は尊重するべきだと思ってます」


「うむ。わしもそう考えておる。だからこそ、この現状を何とかしなければ、多くの貴族に示しが付かないのだ…………それにもっと大きな問題が起きた」


「えっ!? 起きた!?」


「そうだ。どうやら国に仕えている貴族の中からも、退職願いが出ているそうだ」


「ええええ!?」


 すると後ろに控えていた宰相様が何枚かの紙を前に出した。


「こんなにですか!?」


「ああ。全部・・がそれだ」


 ざっと見て100枚はありそうだけど…………。


「そこで、王国として…………いや、王としてベルン家に頼みに来たのだ」


「頼み……ですか?」


「ああ。彼らを止める事も、これから新入学生を望む事も難しいだろう。だから違う方法を選択しようと思う」


 王様からどんな無理難題が付けられるか心配にはなるが、出来る事なら王国民として協力しなくちゃね。


 これも全部僕達が招いた結果でもあるから。






「王国から出せる権利は出来る限り譲渡しよう。代わりに、王国に人材を派遣して貰いたいのだ」






「え!? 人材を派遣?」


「そうだ。聞くに、どうやらベルン家の待遇の良さは飛んでもない好条件だそうだが、その内容を聞いて、我が国がそれ以上の好条件を出す事は、不可能だと判断した。そうなれば、敢えてベルン家と契約を結んでしまう方が早いと判断したのだ」


 後ろの宰相様も大きく頷く。


 宰相様の顔が真っ青なのが余程気苦労しているのかが見えるな……。


「僕としては王国を困らせたい訳ではないので、王様の提案で落ち着けるのであれば、協力します。ただ、僕ではその交渉が出来ないので、違う責任者との交渉の場を設けても宜しいですか?」


「もちろんだ。我々王国側としてもベルン家に無理難題を言いたい訳ではない。交渉の場を設けてくれれば、必ず成功に持って行けると思っておる。それにベルン家の主であるクラウドくんが前向きなら尚更良いだろう」


「ええええ!? 僕は主ではありませんよ!?」


 僕はただの嫡男で……。


「クラウド? お父様はもうクラウドにベルン家を託したって公言なさっているわよ?」


「ええええ!? 聞いた事ないよ!?」


「うふふ。クラウドなら大丈夫だと思う!」


 いやいや!


 大丈夫じゃないから!


 父さん!?


 当主を渡すの早くないですか!?


「うむ。ではベルン家の当主クラウドよ。これからもよろしく頼む」


 僕はまだ当主ではないんですけどぉおおおおお!





 多分…………。

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