第162話 リヴァイの真相
僕はイレイザ先生やティナ達と共に、牢の前に来ている。
罪の疑いがある貴族を監禁するような、貴族牢と呼ばれている場所で、中には包帯を全身に巻いているリヴァイさんが入っているのだ。
「リヴァイさん、そろそろ話せそうですか?」
「ああ。何でも答えよう」
「ではまず、今一度聞きます。こちらの女性について答えられますか?」
『呪魔素』に侵された身体で、暴走したことがあるリヴァイさんの記憶が正しいか分からないので、再度確認を行う。
「イレイザ…………俺達は『バハムート』というパーティーを組んでいた…………」
「はい。本人で間違いないみたいですね」
「リヴァイッ!」
「イレイザ…………どうして君が生きて…………」
「寧ろリヴァイが生きている事がびっくりだよ! どうして……どうして帰ってこなかったのよ…………」
二人は大きな涙を流し、牢越しで見つめ合う。
「…………あの日。俺が魔王と一騎打ちに残った日。結果から言えば、俺の完敗だった。ただ、俺が記憶しているのは、魔王に吹き飛ばされて気を失った所までだ。その後、目を覚ますとあの洞窟から先は焼け野原になっていた……。俺も全身が焼けてしまい、このざまだ…………。その時、とある男がやってきた。変な仮面を被った青い髪の男だ。そいつは自分をナインと名乗って、俺に現状を教えてくれたのだ」
リヴァイさんは悔しそうに手を握りしめる。
「俺達に魔王討伐を依頼したヘルズ王国が密かに魔王の首を狙っていた………………彼らは俺達を囮にし、俺達が敗北するのを知り、俺達もろとも焼いたと教わった。既に魔王の姿はなく、俺の仲間達は死体すら残らないほどに焼かれたと言われた。
だから俺はヘルズ王国に復讐する事を決意した。ナインが教えてくれた『呪魔術』なんてものを使い、俺はヘルズ王国に恨みがあるやつらを集めた。暫く復讐のために活動をしていてナインが『ソロモン』という集団に属している事が分かった。ソロモンがどこの誰で、どのような構成かは全く分からない。ただ、一つ確かなのは、『呪魔術』を使える事だけだ。ナインを通してソロモンから強力な力を多く授かり、俺達はエンド王国を制圧。それから『呪魔術』を使うための『呪魔素』を集めながらゆっくりエンド王国とヘルズ王国を飲み込んだ」
一瞬言葉が途切れる。
『呪魔術』を使い、多くの兵士が亡くなった事を気にしているのだろう。
「…………エンド王国を飲み込んだ際、一度だけ危険な時があった。エンド王国のセスリオンという地域でエンド王国の兵士達と対峙してしまってな。ナインの策略だった…………俺や四将軍が誰もいない状態での戦いとなり、俺らの配下の者が多く殺された。そして、配下の者にもしもの時に使えと預けていた自爆装置を発動させて、その場にいた全員が亡くなった。配下も相手の兵士も周囲の住民も全員吹き飛んだ………………だから俺達はそのような参事を起こさせないように、配下を作らず、ナインとも手を切った。それからは、お前達が知っている流れになっている」
リヴァイさんのオーラに一つの曇りもない。
全て事実を話してくれて良かった。
リヴァイさんの話しから予想すると、この戦いの裏には間違いなく『ソロモン』という組織がいて、その組織による犯行だ。
先日仮面が吹き飛んで死んでしまったナインと語っていた人こそが、リヴァイさんをたぶらかした人物で間違いないだろう。
何故かロスちゃんが、ナインのような存在は少なくともあと三人はいると教えてくれた。
理由はまた今度聞くとして、あの仮面を被った者を辿る事が出来れば、いずれ『ソロモン』にたどり着けると思う。
「真実を話してくださり、ありがとうございます」
「これくらい容易い事だ。お前達には死んでも返せない恩義がある」
「恩義…………ですか?」
「ああ。俺は仲間の復讐といいながら、イレイザ達をこの手に掛けたかも知れない。それを救ってくれて、ありがとう」
「リヴァイさんも騙された側ではありますからね…………ただ。二人には申し訳ないのですが、リヴァイさんはフェアレーターとして多くの命を奪ったのもまた事実です」
「ああ。その報いはきちんと受けよう…………」
「リヴァイ………………」
イレイザ先生の悲しい声が牢の中に響く。
「ではリヴァイさんに罰を受けていただきます。これから常時監視下で両国の住民達を魔物の脅威から守る警備隊の仕事を命じます。30年。死んでいった全ての人々の代わりに、今度は貴方の力で住民達を守って頂きます」
「…………分かった。その罰、この身が朽ち果てるまで受けよう」
「それから毎週全ての町で黙祷が続きます。それにも参加して頂きます」
「分かった」
これは父さんたちと決めた罰である。
シレル王国とホルン王国に主犯だった五人は死亡したと伝えてある。
五人の存在を知るモノは実は誰もいない。
だから死亡したと伝えても誰も疑わないはずだ。
ここ連日、罰について色々議論を交わしたが、極刑に値する罪なのは理解していても、誰も極刑には手を挙げなかった。
その理由としては、彼もまたソロモンに騙された被害者であること。
配下を失ってソロモンと手を切ったこと。
そして、何よりも彼らを待っている人がいることだ。
これからもイレイザ先生は彼の帰りを待ち続けるだろう。
イレイザ先生が知り合いだから――――という訳ではない。
彼が復讐心に駆られた理由がイレイザ先生であり、お互いに生きている。
これで極刑にすれば、今度はイレイザ先生が復讐心に駆られると思う。
復讐を復讐で洗ってしまっては、一生終わらないはずだ。
だから、亡くなった多くの人々には申し訳ないけど、代わりに彼らの家族を守る罰を与える事にした。
いつか、イレイザ先生と笑顔で出会える日を僕も楽しみにしている。
「
広場に鳴り響く爆音とティナの声。
それを受けたリヴァイさんの全身から光があふれだす。
少しずつ、少しずつ焼け跡が消え、元の肌に戻って行く。
そして、包帯がするりと落ちて、優しい顔を覗かせる。
しばし別れのイレイザ先生とリヴァイさんが抱き合うのを最後に、リヴァイさんは新たなベルン領の警備隊へと旅立った。
「クラウドくん。本当にありがとう」
「いえ、リヴァイさんも被害者の一人でもありますから」
「……うん。でもそれだけじゃないわ。リヴァイにも希望を灯してくれてありがとう」
「はい。イレイザ先生も元気出してくださいね?」
「あら、当たり前じゃない! これからびしばし生徒達を鍛えるわよ~!」
イレイザ先生も希望に満ちた表情を見せた。
――――【報告】――――
このたび『転生してあらゆるモノに好かれながら異世界で好きな事をして生きて行く』がカクヨムコンテスト7にてComicWalker漫画賞を受賞しました!
いずれクーくん達が漫画の世界にまで進出します!
これも全てここまで読んでくださり日頃応援してくださった皆様のおかげです!本当にありがとうございます!
わーい!
クラウド様!
作者も忠誠を誓います!
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