第161話 エンド王都決戦、決着
リヴァイさんが持っていたネックレスから禍々しい姿の黒い竜が現れる。
すぐに後方から数発の魔法が飛んできて、黒い竜に命中すると爆風で力なく飛ばされるリヴァイさんをイレイザ先生と一緒に捕まえて急いで本陣に戻って来た。
「お兄ちゃん!」
「サリー! ありがとう!」
黒い竜が現れた瞬間に指揮を執ってくれたみたい。
迎撃隊が順よく魔法を放ってけん制し続けた。
「え!? ティナ!?」
帰って来たところに、普段と全く違う姿のティナが笑みを浮かべて立っていた。
変わり過ぎじゃない!?
そもそもティナって人だよね!?
どうして背中に天使の羽が生えているの!?
「私の本当の専属武装が解放されたの」
「えっ? でもいつも……」
「腕輪は仮の姿だったみたい」
「そ、そっか…………その、何というか、とても似合ってるよ、ティナ」
「えへへ、ありがとう!」
「お兄ちゃん達! 戦場でイチャイチャしないの!」
隣からサリーの鋭いツッコミが入る。
「それにしてもあれは何なんだろう?」
その時、ロスちゃん達が黒い竜と戦い始めた。
大きさはクロと遜色ないので、クロがメインでぶつかり、ロスちゃんとロクが魔法のような攻撃を仕掛けている。
黒い竜も反撃を試みるが、三体の従魔達の猛攻に成す術はなかった。
「クラウド。私も行って来ていい?」
「えっ? でも危ないよ?」
「大丈夫。私、ちゃんと強くなったから」
「…………無理しない?」
「しない!」
「分かった」
ティナは大きく深呼吸をして、黒い竜に飛んでいく。
クロの背中に乗り、そのまま物凄い速度で黒い竜に――――腹部にパンチを決める。
肉を叩く音がここまで響いてくるほどで、黒い竜の目が真っ白になった。
何だか……みんなで子犬を虐めている光景な気がしてならない……。
倒れ込んだ黒い竜の頭の前に、天使が降り立つ。
「
天使は気を失っている竜の頭に
黒い竜は全身から粒子のような光を周囲に拡散させ、消滅していった。
「僕が負けただと!?」
消えた黒い竜の跡地に一人の男が変な仮面を被って立っている。
その腕には小さな黒猫が一匹抱きかかえられていた。
【ご主人! あの子を逃がしちゃだめ!】
珍しくロスちゃんが慌てる。
急いで周囲に僕のオーラを全力で守護バリアを張る。
これなら内外の行き来は出来ないはずだ。
「なっ!? なんなんだこの結界は!?」
すぐにティナが男を攻撃し始める。
「ぼ、僕がこんな所で死ねるものか!」
男が反撃を試みるが、ティナには全く効かず、ティナのビンタを数発受けると、仮面が吹き飛んで素顔が晒される。
青い髪の綺麗な灰色の瞳で、整った顔立ちの彼は――――――どこかアレンに似ていた。
「が、が、がは…………」
仮面が取られた彼は苦しそうに自分の顔を触り始める。
「ち、ちくしょ…………ナンバーズで一番はこのナイン様のはずなのに! リヴァイを使って魔王まで手に入れたのにここで死ぬのか! 僕はナンバーズで一番の男だ! 死にたくない! 死にたくな――――」
彼は息が出来ないようで、そのまま息絶えた。
◇
エンド王国――――もとい、フェアレーターとの決着がついて丸三日。
現在、ラウド商会の力を持ってディアリエズ王国の名の下に復興を全力支援を行っている。
エンド王国もヘルズ王国もフェアレーターによって上層部が壊滅。
不幸中の幸いで、住民達には全くの犠牲はなかったが、それも『呪魔術』を使うためなだけだったから、それ以上の被害が起きなくて本当に良かった。
エンド王国もヘルズ王国も上層部がいなくなり、政治を行う人がいないため、中立を求めて今回戦いで最も功績をあげたベルン領に配属されたいと申し出があった。
離れになってしまうが、両王国がそれぞれ王国として立ち上がれるまではベルン領になる事が両国民達の嘆願により決まった。
父さんが涙と鼻水だらけの顔で、これ以上面倒ごとは増やさないでくれるって約束したじゃないか~! って泣きついて来たけど、僕が決めたんじゃなくて、両国民達が決めた事なんだから仕方ないと説得すると、父さんはもうこれ以上王家に悪い目で見られたくないらしい。
両王国が自立したらベルン領じゃなくなるんだし、うちの王国も大した事は思わないと思うけどね。
僕の従魔達にお願いして、エンド王国にあった全ての工場や機械人形の骸は、ベルン領に運んで貰った。
他の勢力に悪用させないために厳重に保管しようと思う。
両国民達には、暫く税金免除や仕事の斡旋、ラウド商会による仕事の拡張を行って、ラウド商会のリーダーを任せていたキリヤさんは会頭に任命して両国の発展を優先させた。
意外にも両国ともに、自然素材に溢れているようで、特にエンド王国から取れる宝石類は全世界でも有名だそうだ。
シレル王国が密かにエンド王国を狙っていたけど、ベルン領から厳重注意しておいた。
現在シレル王国は国軍を大きく減らし、第二隊隊長のベラルさんが将軍に着任してベルン領に永遠の忠誠を誓っていた。どちらかといえば、ベルン領じゃなくて僕だけど…………。
こうして戦いも終わり、世界には再び平和が訪れた。
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