第156話 エンド王都決戦開幕

 三日後。


 北側のヘルズ王国の各地を見て回ったアレンくん達のおかげで、機械人形はヘルズ王国には殆どいない事が発覚した。


 現在はエンド王国の王都に集結しており、今回前線の全滅を重く見ているのだろうと父さんは予想していた。


 連日父さんやグラハム、ベラルさん達が集まり、エンド国攻略戦の作戦を決めた。


 まずエンド王国攻略組は、十傑が中心の中央隊、アレンと聖騎士さん達の切り込み隊、ティナやサリー、学園長達の迎撃隊を選定した。


 僕はというと、彼らが戦っている傍で、王城に直接殴り込み、ボスと言われている者を狙う形になった。


 ヘルズ王国は、意外にも住民達は誰一人ケガすらしてないらしいが、各町に大型機械が設置されていて、そこから大きなケーブルがエンド王国の王都まで伸びているそうだ。


 そのことから、各町で『呪魔術』のための『怨念』集めだと予想される。


 おかげで住民達が無事なのが一番の朗報かも知れない。


 各地の大型機械も壊して回った方が良さげなので、その破壊工作隊は僕の従魔達をアーシャとアリアさん、ヘイリくんが率いて担当する事となった。




「皆様、現在エンド王国を牛耳っている者達は、エンド王国の者達ではないようです。彼らは自分達を『フェアレーター』と名乗っているそうです。これからエンド王国及びヘルズ王国の解放のため、『フェアレーター』と戦うことになります! 先日も戦った通り、相手は人ではなく――――オートマタと呼ばれている兵士達で構成されています。クラウドの予想では、その兵士達が全て『呪魔術』で作られたと思われます。その証拠に、先日の戦いで普通の攻撃が通らない場面がございました。ですのでこれからの戦いで攻撃が通らない敵が出て来た場合、迷わず退避してください! では皆さんのご武運を祈っています!」


 ティナの演説で、会場は割れんばかりの声援で包まれた。


 すぐにエンド王国の王都を目指してグラハムやアレンくん達が出発する。


 それに続いて、中央の戦力増強のためのベルン領の警備隊が後に続く。


 彼らが出発してすぐに今度はアーシャ達が従魔を連れてヘルズ王国方面に向かう。


 それを見送って、最後に僕もロクに乗り込み、グラハム達の後を追った。




 ◇




「…………フェアレーターと決着を付けるのね」


「はい。主様はあの力を嫌っていますから」


「『呪魔術』か…………まさか私があの力に頼る事になるなんて、今思えばとんでもない事をしたわ」


「エリシア様。主様なら貴方の悩みも聞いてくださるかも知れません。この戦いが終わったら相談してみましょう」


「私の悩みごとか…………私にはもう何も残っていないもの。あの人は二度と帰ってこないのよ」


「それでもです。まだそうだと確定したわけではないのでしょう?」


「…………もう数百年が経っているわ。彼が生きているはずなど………………ありはしない」


 遠くを見つめていたエリシアの瞳は悲しみの色に染まる。


「まもなく貴方の元に行くわ。だからもう少し待っていて――――――










 ミナト




 ◇




 僕達が集まっていたシレル王国の国境から、エンド王国の王都までは馬車で一日の距離にある。


 移動に一日消耗し、次の日には、王都の目の前にやって来た。


 『フェアレーター』も僕達の事を待っていたようで、既に機械人形が列をなしていた。


 そして、奥に『呪怨砲』が三台見えている。


【『呪怨砲』破壊担当は、ロスちゃん! クロ! ロク! 頼んだよ!】


【あい~!】【御意!】【了解!】


「最初にロスちゃん達が『呪怨砲』に向かうから、みんなはその後から続いて!」


「「「「「はっ!」」」」」


 こちらの戦いの準備が整うのを待ってましたと言わんばかりに、三台の『呪怨砲』が黒い光を発し始める。


 ロスちゃん曰く、ロスちゃん達でもあの砲撃は十分に対応出来るらしいので、今回は従魔達に任せる事にした。


 数分が過ぎ『呪怨砲』から赤黒い光の玉が射出され、こちらに向かって飛んでくる。


 そのタイミングを見計らったように、ロスちゃん達が飛び出る。


 ロスちゃん達はぐっと力を溜めると、一斉に爆炎のブレスを放った。


「ええええ!? ロスちゃん達ってあんな攻撃も出来たの!?」


 まさかの光景に思わず、口にしてしまった。


 隣で聞いていたアレン達がクスクスと笑う。


 爆炎のブレスと赤黒い光の玉が衝突すると、予想以上の大爆発が起きる。


 戦場の予定だった平原は、大爆発により灼熱の地獄と化した。


 大きなクレーターを残した爆発を機に、向こうの機械人形がこちらに動き始める。


「えび!」


【あいあい! ご主人しゃま~!】


 水精霊のえびを呼び、灼熱地帯に水魔法を展開させ冷やす。


 そのままえびの大魔法を発動させ、クレーターに一瞬で水を溜めさせて、凍らせる。


 これなら歩いて渡れるはずだ。


 すぐにロスちゃん達がフェアレーター軍に向かって走り出し、グラハムたちもそれに続く。


 その後ろをアレン達とサリー達も続き、氷の道を渡るとアレン達は中央軍を遠く回る形で別な場所に向かう。


 サリー達の援護魔法がフェアレーター軍に降り注ぎ、戦争が本格的に始まりを知らせた。

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