第153話 エンド国軍と開戦
「――――以上がロスちゃんから聞いたあれの正体だよ。恐らく再使用まで丸一日が必要だと思う」
みんなに現状を報告した。
戦いに直接関係がある訳ではないけど、父さん母さんも真剣な表情で聞いてくれている。
「兄さん。一つ聞いていい?」
「どうぞ?」
珍しく真っ先に手を上げるアレン。
「兄さんはこの戦争に参加するつもりなの?」
「そうだね。あの力はあまりにも悲しい。だから自分で出来る事ならやりたい。いや、やらなければならない。ロスちゃんがあれを知っていて、正体を知ってしまった以上、僕達にはあれを止める義務があると思う」
「うん。兄さんのやりたい事をやった方がいいと思う。僕も全力で力になるよ」
「私も!」
サリーも手を上げる。
それに呼応するかのように、みんなも手を上げてくれる。
みんなが僕の背中を押してくれる。
これからエデン国を全力で対応する事にする。
すぐに対策本部として、作戦会議が開かれた。
意外にも参謀役を父さんが務める事になって、シレル王国軍の皆さんとも打ち合わせを始める。
地図やら戦況を聞いた父さんは次々指示を送る。
父さんって、人材配置が上手いと噂だったけど、本当にテキパキ決めていて、迷いが一切ない。
戦いの切り込みは魔族のグラハムを擁する魔族十傑達が攻め入る。
僕は真っ先にあの破壊兵器に行く事になった。
「では、みなさん。急な戦いではありますが、『呪魔術』を使うエンド国の暴虐を止めるため、頑張りましょう! 作戦は予定通り、もし異常が起きた場合は、避難優先でお願いします!」
ティナの言葉に全員が大きく頷く。
あまり時間がないこともあり、急遽決まった編成でエンド国軍に対応する。
意外にもエンド国軍の規模が大きくて、三つの隊に分かれる事になった。
もっとも戦力が集まっている正面には、グラハムの十傑が対応、右翼はアレンを中心とした聖騎士さん隊、左翼はティナを中心にベルン領の面々で対応する。
シレル王国軍は、僕達の戦いのサポートをして貰う事にして、もしも漏れた敵軍がいたらその対応をお願いした。
それぞれが別れて攻めていく。
シレル王国軍に居残る家族やアーシャとアリアさんに挨拶を終え、戦場に駆けつけた。
真っ先に仕掛けるのは、十傑の鉄壁の異名を持つアイアン。
一際大きな身体から、魔力が膨れ上がると大きな黒い城壁のような壁を作り出す。
そのまま真っすぐ攻めていくと、エンド国軍からの魔法攻撃をその一身で受けた。
それでも全く傷一つ付かないのは、彼の高い防御力が物語っている。
中央軍がぶつかり合ってすぐに、左翼の方で大爆発が起きる。
恐らくティナと一緒に参戦しているサリーの大魔法なのだろう。
出来れば無傷でエンド国軍を捕獲したかったけど、仕方ないね。
それにしても、エンド国軍の兵士達の様子が普通ではないように感じる。
何と言うか…………どこか機械的な動きがみられる。
こちらの突然の攻撃にも全くうろたえる雰囲気はなく、もくもくと反撃を試みている。
それに彼らが使っている武器。
あれって……まさに『銃』そのもので、銃口に魔法陣が出現するとそこから魔法が放たれる仕組みになっていた。
今度は右翼で大きな爆発が起きる。
すぐに上空に無数の光の剣が現れ、エンド国軍に降り注いだ。
上空から戦場を見渡して一つ分かった事がある。
既に戦場では大きな戦いが始まっていて、エンド国軍に大きな被害があるはずなのに、一切の
代わりに、真っ黒い液体が散乱していた。
どうやら彼らは普通の人ではないんだね。
【みんな! エンド国軍は普通の人ではないと思うので、遠慮せず吹き飛ばしていいよ!】
相手は同じ人間なら多少は手加減していたと思うけど、そうでないなら遠慮する必要はないと思う。
みんなも理解したようで、セーフしていた力をさらに解放したようで、大きな爆発が次々起きる。
その時、奥の方に大きな轟音が聞こえる。
視線を向けると、巨大な何かが起き上がる。
真っ赤な目が光り、戦場を睨んだ。
【クロ! 頼んだ!】
【主! お任せあれ!】
召喚したクロは真っ先に巨大な物に突撃していく。
戦場に響く轟音と共に、エンド国軍が吹き飛んで行った。
彼らが人間じゃないのが分かっていたら、最初からクロに突撃して貰っていたのに……。
巨大なドラゴンの形をしたモノに、クロが体当たりをする。
大きな爆風が周囲の兵達をさらに吹き飛ばす。
しかし、クロの体当たりでも敵はびくともしない。
それからクロとドラゴン型巨大機械はお互いに殴り合う。
お互いにあまりダメージはなさそうだけど、クロと殴り合える存在がいる事に驚きだ。
クロが巨大機械を引き付いてくれている間に、僕はロクとともにさらに奥にある砲台に向かう。
砲台に辿りつくと、その前には銀色の髪が綺麗な女性が一人、こちらを静かに睨みながら砲台の前に佇んでいた。
それにしても、あの腰に刺さっている剣。
とても見覚えがある。
いや、どちらかといえば、見た事はないというか、初めて見るけど僕はそれを知っていた。
彼女がその腰に下げている剣。
それは――――――
間違いなく
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