第151話 エンド国の前線
僕はロクの背中に乗り込み、ロスちゃんやコメ達も連れて、空を駆け抜ける。
現在、戦時中のシレル国の上空だ。
遠い景色にエンド軍と思われる兵達が見え始める。
真っ黒い軍服が目立っていて、地平線が真っ黒く染まっている。
それと全く初めて見かける大きなモノが見えていた。
あれは…………巨大な――――兵器?
黒赤色で作られている巨大な兵器のようなモノが佇んでいる。
何故あれが兵器だと思うかというなら、前世でよく見かけていた砲台に似てるからだ。
寧ろ、異世界に来て、今まで全く気にもしなかったけど、魔道具があるのにどうして兵器がないのかと今更ながら違和感を感じる。
【ご主人様、向こうに人間達が沢山集まっているわ~多分シレル王国軍かしらね~】
「先にシレル王国側の話しを聞いてみようか。ロク、そこに降ろして~」
【了解~!】
空を飛んでいたロクが、エンド国軍から遥か遠くに離れた場所に急行する。
丘の上にシレル王国の旗が立っていて、シレル王国軍が沢山見えていた。
まだシレル王国軍には何も話してはいないけど、そのままシレル王国軍の前に降りる。
兵士さん達がこちらに武器を構えて緊張が走る。
「初めまして! ディアリエズ王国のバビロン学園の生徒です!」
生徒証を高く掲げて、彼らに近づいて行く。
一人の兵士さんが走って来ては、僕の生徒証を確認して向こうに手を上げる。
「まさか……生徒が戦場にくるとはな……」
「緊急事態でしたから。急に来てごめんなさい」
「ふむ。君が乗って来たあの魔物は?」
「僕の従魔です」
「じゅ、従魔!? わ、分かった。すぐに隊長が来るはずだから、待ってくれ」
「分かりました」
兵士さんはロクから目を離さず、少し身体が震えていた。
オーラの色的に怖がっているのかな?
少し待っていると、隊長と思われる男性がやってくる。
「初めまして、バビロン学園の生徒のクラウドです」
「本当に生徒か…………俺はシレル王国軍第二隊隊長のベラルという」
「急な訪問なのに対応してくださってありがとうございます。本日は戦況を知りたくて、うちの王国軍よりも一足早く来ました」
「そうか…………あの魔物が従魔というのは本当か?」
「ええ。ロクといいます」
ベラルさんもロクを見て、小さい声で唸る。
「分かった。中に案内しよう」
「ありがとうございます。ロクはそこで待っていて」
【了解~!】
僕は頭の上にロスちゃんを乗せたまま、ベラルさんに案内されテントの中に入る。
中には先程出て来てくれた兵士さんと、他に男性が一人、女性が一人待っていた。
「副隊長の三人だ」
三人と小さく頭を下げて挨拶を交わす。
それにしても、他の兵士さんもここにいる兵士さんもベラルさんも、ピリピリしているのが見て取れる。
「早速ですが、エンド国に
「…………分かった。先日エンド国から宣戦布告があり、数日後にあいつがやってきた。元々弱小国だったはずだが、ヘルズ国が滅びたという噂を聞き、急いで隣国のホルン王国と同盟を組み、連合軍でエンド国を迎えた………………」
言葉が終わり、ベラルさんは悔しそうに両手を握り、怒りを見せる。
他の兵士さん達も同様な様子を見せる。
「戦争が起き、あいつらが持って来た巨大魔道具が光り…………一瞬で連合軍が黒い火の海に呑まれてしまった」
一瞬で……という事はやはりあの大きな砲台は兵器と見て間違いないね。
「連合軍は文字通り全滅。誰一人あの攻撃から生きる事は出来なかった。俺達は少し離れた場所に待機していたので、こうして生きている…………本来なら今すぐにでも攻めたいのだが、あの巨大魔道具がまた攻撃してくるかも知れないので、一旦離れる事にしたのだ」
「分かりました。ちなみにですが、その攻撃からどれくらいの時間が経過していますか?」
「時間か…………まもなく一日が経つと思うが……?」
一日か…………。
その時。
【ご主人。向こうから嫌な気配がする】
頭に乗っているロスちゃんが、エンド国軍がいる方向に足を上げて、指差す。
「まずいかも知れません! ここに例の攻撃が飛んできます!」
「なっ!?」
「みなさんは兵士さん達の指揮を執ってください!」
僕は急いでテントを後にして、ロクを呼びエンド国側に飛んだ。
少しして、空の向こうから真っ黒い魔力の波動を感じる。
「ロスちゃん。あれを全力で叩くからもしもの時はお願いね」
【…………あいっ】
珍しくロスちゃんが戦闘態勢を取っている。
それくらい向こうから感じる魔力の波動からは、禍々しい気配を感じずにはいられない。
【ご主人! 来るよ!】
空の向こうから、真っ黒い魔法攻撃がこちらに向かって放たれる。
大きな魔力の塊が凄まじい速度でこちらに飛んでくる。
「解放、紅蓮ノ外套」
真っ赤に燃えるマントが僕を覆う。
右手に全力でオーラを集中させて、飛んでくる魔力の塊を上空に殴り飛ばす。
ん?
思いのほか軽くて魔力の塊を遥か上空に吹き飛ばせた。
そして、数十秒後、真っ黒い大爆発が起き、周囲に爆音と共にとんでもない爆風が吹き荒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます