第150話 三年生、そして……

 スロリ街のベルン家屋敷。


「領主様」


「き、聞きたくないっ!」


「そう仰られても……現状来たものは仕方ないと思います」


「どうして今年もそんなに応募者が多いんだ!? それに、去年より増えてないか!?」


 領主のビリーは、ゼイルが持って来た大量の応募書類・・・・を見て目を疑う。


「はい。どうやらバビロン学園の生徒だけでなく、他の学園の生徒達も応募するようで、ベルン領の好待遇が噂になっているそうです。もしかしたら、現状の兵士の中からも退役してこちらに移住する者がいるやも知れません」


「い、いけない! そんな事をしたら、王国から睨まれてしまうではないか!」


「はい、このままではとんでもない事が起きてしまうかも知れません」


「ゼイルくん……お願いだ。このままではベルン領が大変な事になってしまう! どうかクラウドを説得してはくれないか!?」


「領主様。お言葉ですがクラウド様はこの事を全くご存知ではないと思います」


「え!?」


「クラウド様が普通にしていても、周りからやってくるのだと思います。クラウド様が何もしなくても、いずれ王国は――――」


 ゼイルの言葉を聞いたビリーは、眩暈によりその場で崩れてしまった。




 ◇




 春になり、僕達が三年生となった。


 二年生はとても充実な時間を過ごし、今ではクラスメイト達とも仲が良い。


 さらに後輩達とは、従魔達を用いて訓練を手伝ってあげたりして、友情を深めている。


 何故か入った殆どの生徒達は、僕を知っていた。



 そんな三年になってまもない数日。


 学園長が急ぎ足で屋敷にやって来た。


「クラウド様。お耳に入れたい事がございます」


「学園長。まずソファーに座ってください」


「いえ、わたくしめは正座で十分でございます」


 相も変わらずソファーに座ってくれない。


「それで、学園長? どうしたんですか?」


「はっ。去年から続いていた北の国の戦争を覚えておりますか?」


「ヘルズ国とエンド国の戦争ですよね? 意外とその後、噂を聞いてませんね」


「はい。それには大きな理由がございました」


「理由?」


「どうやら戦争は――――エンド国の圧勝のようです」


「エンド国の圧勝!?」


 たしか、エンド国はヘルズ国の属国で、最弱の国のはずなのだが……戦争を仕掛けただけあって、何かしらの方法で力をつけたのかも知れない。


「そうでして、実は勝ってから暫く経っているようですが、今までずっと隠していたようです」


 …………勝ったのに、周囲には秘密にしていて、ずっと戦争中である事を隠していたのには、それなりの理由があるはずだ。




「その理由としましては…………まさか、エンド国からホルン王国とシレル王国に対して宣戦布告が行われました」




 やっぱりか……。


 ホルン王国とシレル王国から先に攻撃されるより、少し戦力を整えて先に仕掛けた方が優位に戦えると思ったのだろう。


「それにしても、エンド国にヘルズ国もそうですが、両国を攻められる戦力があったんですか?」


「それが不思議とあったようです。ただ、一つ気になる事があります」


「気になる事?」


「はい。ヘルズ国は文字通り全滅でした。誰一人エンド国の戦力が分からないようです」


「全滅…………それくらい戦力が整っていると見て違いないですね」


「はい。現状はホルン王国とシレル王国に対しての宣戦布告ですが、その後は、我が国にも攻めてくるでしょう」


「…………王様としてはどうするのですか?」


「まだ王には報告していません」


「え!?」


「真っ先にクラウド様に報告にと思いまして」


「今すぐ王様に報告してください!」


「はっ、かしこまりました」


 学園長……僕なんかよりも先に王様に報告するべきでしょう……。


 頭をさげて屋敷を後にする学園長。


 それにしても、エンド国の動向がとても気になる。


 ヘルズ国はうちの王国よりも強い国なはずなのに、それが全滅ってとんでもない事が起きている気がする。


 急いで父さん、バルバロッサ辺境伯様、ガロデアンテ辺境伯様に現状を報告した。




 ◇




「みんな、以前話していたエンド国の戦争だけど、どうやらエンド国の圧勝で、尚且つ現状ホルン王国とシレル王国に対して宣戦布告を行い、まもなく新たな戦争が始まりそう」


 ティナ達を集めて、現状を報告する。


「父さん達にも既に伝えていて、ガロデアンテ辺境伯様としてはこれを機にシレル王国を攻めようという意見もあったけど、エンド国と通じている雰囲気が出るからとバルバロッサ辺境伯様が反対してなくなった。

 それで色々考えたけど、エンド国の動向が気になる。恐らくうちの王国も両国を支援するんじゃないかと予想されるので、それに伴ってベルン領の警備隊を送る事になるかも知れない。その時、引率には僕も一緒に行こうかと思っているよ」


「サリーも一緒に行きたい!」


「出来れば、みんなにはここに残って欲しい」


「え~!」


「…………僕としてはヘルズ国は敗北している事が気になる。もしかしてエンド国の力って、正面だけでなく裏からの攻撃があるのではないかと思ってるの。だから王都とスロリ街をみんなに守って欲しい」


 少し拗ねているサリーの頭を撫でてあげる。


 みんなも納得してくれたようで、もしもの時は僕の従属召喚で呼ぶ事を約束した。



 直後、僕達に一通の報せがやってきた。


「クラウド様。エンド国が二つの国の連合軍とぶつかり…………圧勝しました」


 エンド国が牙がこちらに向いている気がした。



――――注意書き――――


 ここからシリアス回?始まります~!ぜひ最後まで読んでください!みんなのカッコいい場面が沢山見れます!

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