第145話 もう一つの巨大な事業

 ベルン領に戻り、エグリオさんと宿屋――――もとい、新しい事業『ペンション』を進める事が決まり、僕は次の目的地にやって来た。


 ここはスロリ街から東に進んで、スロリ森が広がっている場所から南側に進んだ場所で平原が広がっている。


 この場所から真っすぐ南に向かったら、ハイエルフ族が住んでいた元森だね。


 そんな平原に今回作るのは、大きな施設だ。


 既に基礎工事が終わっていて、その上に大きな建物が一つだけ完成している。


 この施設のために去年の夏から一年間かけて、ゆっくりと計画を進めて来た。


 実際のオープンは来年の夏なんだけど、今年の夏に建物一つが完成したので、視察も兼ねて実際の感じを見に来た。


 大きさは、向こうで言うなら体育館一つ分の大きさだ。


 予定としては、それがあと四つ並んで、計五つ並ぶ予定となっている。



 中に入ると大きな窪みになっているスペースが二つある。


「おいで~えび!」


 水の精霊えびを呼ぶと、どことなく現れる。


【ご主人しゃま~遂にやるのですね!】


「まだ試作の一か所だけなんだけどね~。では次は――――おいで~トゲ~!」


 今度はトゲを呼ぶ。


 すると、目の前に小さな炎が燃え上がり、どんどん大きくなって、1メートルくらいの炎の中から、羽根が付いている可愛らしい真っ赤なトカゲが現れる。


【主様、久しぶりでやんす~】


「久しぶりだね~トゲ。いつも鍛冶組の火元を調整してくれてありがとうね」


【いえいえ~これで主様の為になるなら、何てことないでやんす~】


 僕は現れたトゲとえびの頭を優しく撫でてあげる。


 トゲは火の精霊『イフリート』。


 二年前にえびを仲間にした時に、一緒に仲間にしたもう一人の精霊だ。


「二人とも、やっと一棟目が建ったので、今日はその演習がてら、ここで例の作戦を実行してくれていいかな?」


【私はいつでもいいのです~!】


【僕もいけるでやんす!】


 二人ともやる気に満ちているね。


「ではお願い~」


 二人は敬礼ポーズをした後、窪みの一つの中央に飛んで行く。


 そして。










【【合体魔法、温水生成!】】




 えびが大きな水溜まりの玉を上空に生成する。


 今度はトゲが水溜まりの玉に炎の息を吹きかけると、水溜まりの玉が周囲に温かい雨を降らし続ける。


 その雨は下の窪みに降りて行き、広い窪みに温かい水が充満した。


「二人ともありがとう!」


 ご機嫌になった二人が温水プールで遊び始める。


 僕も服を脱いで、事前に履いて来た水着状態になり、温水に飛び込んだ。


「うん! ばっちりだね!」


 温水プールは僕でも腰より下までしか来ず、高さは1メートルもない、空からは温かい温水が常に降って来る幻想的な景色を見せている。


 これは、僕が考えたプールで遊んで貰いたいという事から考え付いた建物だ。


 アーシャと建物のデザインや、これから入るであろうアトラクションを考えたり、子供でも遊びやすくするため、高さは1メートルのプールと、30センチのプールで分けている。


 一棟だけもっと深いプールにする予定だけどね。


「お兄ちゃんだけずるい~!」


 僕とえびとトゲしかいないはずのプールに女の子の声が響き渡る。


「サリー!?」


 入口にサリーが仁王立ちしている。


 あれ?


 サリーを召喚した・・覚えはないんだけど!?


「ふっふっふっ、サリーはついこの前『帰還魔法』を取得したのです~!」


「『帰還魔法』!?」


 僕のスキル『従属召喚』では、僕自身は飛べない。


 それを何とな出来ないかなと考えた時、向こうでとあるゲームの移動魔法を思い出した。


 ただ、一言で移動魔法と言っても瞬間移動とは少し感覚が違い、僕の中にある常識では瞬間移動は不可能だった。


 かく言う移動魔法も不可能だった。


 そんな時、一緒に相談に乗っていたサリーから「お家に帰る魔法でいいんじゃない?」と言われ、色々試して見た結果、何故かスロリ街にだけ、どこからでも一瞬で帰って来れる魔法が開発出来た。


 ちなみに、スロリ街に帰って来ても、王都へは自力で行かなくちゃいけないのが難点だ。


 そんな『帰還魔法』を、まさかサリーも覚えるなんて思いもしなかった。


「お兄ちゃんがコソコソ何をやっているのかと見張りに来たの!」


「あはは……ごめんごめん。来年から予定している『温水プール』の予行練習に来たんだよ。えびとトゲの連携もばっちりで、温水は問題なさそう!」


「全く……お兄ちゃんの魔力ってとんでもないわね!」


 えびが作った水玉に、炎の吐息を掛けて作る『温水玉』。


 これを維持するのは、実は僕の魔力を使っている。


 いくらえびが凄く魔力が高くても、毎日これを維持するのは大変だと思うので、僕は殆ど魔力を使わないから、僕の魔力を繋げて維持させているのだ。


「まあ、それほど大きな魔力は使わないから問題なさそうだよ~これなら、毎週の休日オープンも楽そうだよ」


 サリーは安堵の吐息を履く。


 そして、次の瞬間。










「じゃあ、サリーも入る~!」


 サリーが衣服そのままに飛びついて来た。


「サリー!? 服が濡れるし、色々透けちゃうよ!?」


「いいもん! ここにはお兄ちゃんしかいないから~♪」


 まだ発育が進み過ぎていないサリーだが、魅惑の身体ラインや、スカートが水に浮いて色々目のやり場に困った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る