第144話 ホットパンツ

 二年生の夏が訪れた。


 夏の初めの休日。


 全てのラウド商会の女性店員が『ホットパンツ』を履いて仕事に勤しむ。


 一週間前に女性店員達に履いて貰ったけど、思いのほかミニスカートより好評だった。


 彼女達からは、とても履きやすくて、何より動きやすさが良いとの事だ。


 一番課題であった裾部分だけど、ハイエルフ族が育てている植物にゴムのように伸びて肌に優しい素材があって、しかも簡単に大量に生産出来るので、急いで生産を進めて、思いのほか沢山の数のホットパンツを準備する事が出来た。


 布の面積が少ないのもあるので、少ない期間で大量に作れた。


 ホットパンツを見た多くの女性達は、目を輝かせて次の週が待ち遠しいと話していた。


 ただ、全員が全員が欲しがっている訳ではないみたい。


 ミニスカートは女性の魅力を遺憾なく発揮する。


 ホットパンツも素晴らしい魅力をみせられるだが、ミニスカートに比べるとと思う人も沢山いたのだ。


 ただ、レギンスの代わりにもなれると宣伝しているので、殆どの女性が数点買いたいから在庫を確保してくれと頼まれる。


 次の週。


 遂に売り出したホットパンツは、ミニスカートを最初に売った時と同じくらいに売れ行きだった。


 その日用意した全てのホットパンツは完売となったのは言うまでもない。




 ◇




「思ってたよりも好評だったね、ホットパンツ」


「そうね。サリーちゃんもミニスカートよりもホットパンツが好きみたいだよ?」


 向こうに見えているサリーとティナは、新作品のホットパンツを履いているのが視界に映る。


 サリーはまだ幼さが残っていて可愛らしさもあるので、ホットパンツがとても似合う。


 ティナに関しては、僕としてはミニスカートの方が好きかな?


「クラウド。こういうホットパンツはどうかな?」


 アーシャが目に出した紙にはホットパンツを更に短くしたホットパンツが描いてあった。


「み、短くない!? もはや三角になってるけど……」


「ふふっ、足のこの部分を見せたら良いかな? と思って」


 アーシャがミニスカートを上に上げて骨盤に近い部分を指さした。


「あ、アーシャ! スカートを上げないでよ!」


「あら? クラウドったら、まだ気にしているの?」


「気にするよ! そ、その、アーシャは可愛いんだから、僕には刺激が強すぎるんだよ!」


「クラウドったら、少しは慣れてくれないと、ね? 未来の旦那様」


「うう…………」


「この案は一旦保留ね。確かにまだ世の中には刺激が強いかも知れないわ」


「その方がいいと思う……」


 まだ熱い顔を冷ましながら、次のアイデアを考えるけど、またアーシャの生足というか、骨盤部分横が思い出してしまって、また熱くなる。




 ◇




 ホットパンツも順調に売れ行き、夏の三度目の休日は久しぶりにスロリ街に帰って来た。


 まあ、帰って来たのには理由があるんだけどね。



「おお、忙しい中、時間を割いて頂きありがとうございます。クラウド様」


「お久しぶりです。ヘルンドールさん」


 執務室に訪れて来てくれたのは、隠れ名宿のヘルンドール宿屋の支配人さんだ。


 以前、母さんに僕と話があると手紙を貰ったとの事があり、何度か手紙のやり取りをして、本日会うという事になった。


 何やら数日前からヘルンドール宿屋の改築があって、夏期は全休するそうだ。


「本日は挨拶とお願いがあって来ました」


 挨拶を言いつつ、支配人さんは隣に若い男女一組を一歩前に出させる。


「こちらはわたくしの息子夫婦でございます」


「「初めまして」」


 二人とも深く頭を下げて挨拶をしてくれる。


「初めまして、クラウドといいます」


「本日はクラウド様にたってのお願いがございます。息子夫婦をスロリ街で働かせて頂けないでしょうか」


 ん?


 スロリ街で働かせる?


「えっと……働き口は沢山ありますが、それなら父さんにお願いした方が早いと思うんですが……」


「いえ、普通の働き口ではありません。ここからは息子に代わります」


 するとヘルンドールさんの息子さんがさらに一歩前に出る。


「わたくしは幼い頃から父の背中を見て育ちました。ヘルンドール宿屋はわたくしにとっても、大きな誇りです。ですが、あの宿屋は父が立てた偉業でございます。それを受け継ぐというより、わたくしも大きく挑戦をしてみたいと思っておりまして、第二の……わたくしが営む宿屋を経営したいと思っておりまして、最も信頼出来、力のあるクラウド様にお願いしたく、本日お邪魔した次第でございます」


 ヘルンドールさんの息子さんは、信念に燃える瞳で、熱く語る。


 なるほど……新しい宿屋を立てたいとの事か。


「分かりました。ただ……それではお願いします――――という訳にもいきません。売り出したい宿屋の構想は終わっていますか?」


 待ってましたと言わんばかりに、奥さんが持っていた大きな紙をテーブルに広げる。


 宿屋だけでなく、庭や景色の雰囲気も細かく書かれている。


 それから息子さんであるエグリオさんの熱弁が始まる。


 十分すぎるほどに熱意は伝わってくるし、何より現実離れしていないのがいいね。


 お父さんとは違う方向で、宿屋を一つの芸術品として考えた良い考えだと思う。


 でもこれって、宿屋…………というより、ペンションだね。


 こちらでいくつかの条件を出すと、エグリオさんも同意してくれて、快諾したので、僕も彼を支援すると決めた。

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