第134話 課外授業の準備

「さて、本日から皆さんには――――課外授業があります!」


 担任のヒオリ先生の言葉が終わると、教室内が歓声に沸き上がる。


 みんな課外授業を待ちに待ったようで、今すぐにでも飛び出したいようにウキウキしている。


 そう言えば、二年生になったらより実戦的な授業があると言っていたけど、その一環が課外授業なのかも知れない。


「課外授業ではチームを組んで貰います。最終的には一組になりますが、最初は不慣れもあるので三人一組になって、二組で一緒に行動して貰いますので、二組ずつ組んでください!」


 先生が話し終わると、この一年間すっかり打ち解けたようで、既にチームの雰囲気を出している組がいくつも見える。


 僕達の特殊科クラスは意外にも人数が多く、僕のような魔物使いだけでなく、特殊な戦い方をする生徒が多い。


 例えば、最も多いのは、意外にも弓使いだ。


 弓使いは一見、戦士科に入りそうだけど、戦士科の理念として、近接武器を扱う事があるらしく、遠距離武器である弓使いは特殊科に入る事になっているそうだ。


 後は、エスパーという能力があって、物を振れなくても持ち上げたりする力だけど、聞いた感じだとすごく強そうだったけど、出来るのはせいぜい20キロの箱が三分間浮遊させるくらいだそうだ。なので、基本的には剣や弓で戦いながら、周りの物を飛ばしたり、鉄球を使って飛ばしたりするみたい。


 召喚士という能力もあり、精霊を召喚して戦うようで、僕の従魔の一部も精霊なので、召喚士と名乗っても大丈夫だそうだ。彼らが召喚出来るのは、下位の精霊らしく、会話も出来なければ、火力も中級魔物くらいの強さだったりする。


 次は人形使いなんてのもあって、能力の見えない糸でつながっているゴーレムを操って戦ったりする。


 そんな感じで意外にも僕が知らないような珍しい能力がいっぱいあるみたい。


 その中でも魔物使いは頭一つ抜けて強いので、攻撃力という意味では重宝されている。



「えっと、僕とでいいの?」


「「もちろん」」


 何処かに入れてくれそうなチームはあるのだろうかと思っていたら、アーシャとアリアさんが真っ先にチームを組んでくれた。


「不束者ですがよろしくお願いします」


「いえいえ、こちらこそ、よろしくお願いします」


「二人とも大袈裟だよ~」


 アーシャのつっこみに僕達は声を出して笑った。


 最近よく三人でいるのも相まって、とても居心地の良い。


「それにしても、二組で一緒らしいけど、どこかのチームと組んで貰えるのだろうか?」


「う~ん、それなら錬金術師のエルダーちゃんのところがどうかな?」


「えっと、リーダーはアリアさんだから、お任せします」


「ええええ!? リーダーって私なの!?」


「え!? そうでしょう!?」


「ええええ! 知らなかったわよ!」


「二人とも、落ち着いて! 組む交渉の件もあるから、アリアちゃんがリーダーをしてくれた方が良いと思うし、クラウドはまだ復学して間もないからね」


 復学って!


 一応毎日学園に来てましたよ!


「そういう事なら分かったわ。任せといて!」


 アリアさんはすぐに別のチームを周り交渉を始める。


 こういう時、行動力がある彼女はとても頼りがいのあるリーダーだ。


 僕も見習わないとな。


 少しして帰って来たアリアさんは嬉しそうにピースサインをする。


「エルダーちゃん組と組む事になったわ!」


 僕とアーシャは拍手を送り盛り立てる。


 実はエルダーさんが誰なのかすら分からない。



 みんなで外に出て、先生から注意書きなどの紙を渡され説明を受け、学園から専属馬車に乗り込み、それぞれの野営地へ向かう事となった。


 各馬車に二組、つまりうちとエルダーさん組が乗っていて、引率の先生が一人。


 うちの引率は何故かイレイザ先生だった。


「イレイザ先生? 先輩達は?」


「あら? もう二年生にもなったんだから、私とも関わるわよ」


「確かに! 言われてみればそうですね」


 イレイザ先生と話していると、隣のアリアさんがソワソワしながこちらをチラ見しているのが視界に入る。


「あ、先生。うちのパーティーのリーダーのアリアさんです」


「あら、可愛らしい女の子だね~」


「へっ!? は、はじめますてっ! アリアともうしゅます!」


 アリアさんがものすごくてんぱっている。


「あらあら、可愛いわ~」


 イレイザ先生がその豊満な身体で、アリアさんを抱きしめてあげると、アリアさんが昇天する。


 もしかして、アリアさんはイレイザ先生が好きだったのかも知れないね。


「先生、向こうはエルダーさんパーティーで、彼女がエルダーさん、彼がアギラくん、もう一人の彼がリンピオくんです」


 三人も大袈裟に喜んでイレイザ先生に頭を下げる。


 笑顔で三人と握手を交わすと男性陣は泣きそうなくらい喜んでいた。


 イレイザ先生ってもしかして有名人かな?


 興奮が少し収まったアリアさんが、目を輝かせる。


「クラウドくんってイレイザ先生とも知り合いだったのね! 本当に凄いわ!」


 やっぱりイレイザ先生は凄い人なのかも知れないね。




「あら、みんな勘違いしているわ。私と知り合っているクラウドくんが凄いんじゃなくて、クラウドくんと知り合っている私達が凄いわよ?」


 ん? どういう事?

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