第129話 販売開始

 季節は夏を迎えて、遂にベルン領商会であるラウド商会から、『ミニスカート』が販売をスタートさせた。


 言うまでもないが、王都は長蛇の列。


 ラウド商会を守ってくれている従魔達に聞いたところ、全ての店で長蛇の列を成していたそうだ。


 因みに、ここで言うラウド商店のベルン領以外の支店だが、名前的には『ラウド商会』ではない。


 それぞれ町にあるワルナイ商会とペイン商会に場所を少し借りて『ラウド商会』として商品を出している。


 本来なら普通の素材は両商会に卸している。


 しかし、アーシャが手掛けるクテアブランドの商品、今回のミニスカートや人形などは卸していない。


 これには色々理由はあるが、端的に言えば商会を通れば通るほど高くなるからだ。


 アーシャは出来る限り多くの人――――貴族や平民関係なく、みんなにファッションを楽しんで欲しいと願っている。


 無理を言えば、ワルナイ商会もペイン商会も聞いてくれるだろう。


 でも、それはいつか負担になりかねない。


 僕達が売る分は自ら売ることにして、ベルン領の増えた店員――――魔族も込みで、各町に販売員を送り、さらに物流もベルン領で従魔達を使い各町を回らせる事にした。


 各町を回るのは、『物流組』と呼ぶようになり、リーダーとして長年うちで仕えているヘイリくんに任命すると、ヘイリくんはまだ成人はしていないが、本人はそれでも良いと快く承諾してくれた。


 そんな感じで両商会に場所を借り、在庫次第であがる形にして『ラウド商会』が王国全土に広がった。




 僕達はというと、現在王都の貴族街で移動販売をしている。


 貴族家から商会に来てしまうと色々トラブルになると思ったので、王都の全ての貴族に訪問販売をする事にして、作り手であるアーシャとティナ、サリーの顔を一緒に売る事にして、位が高い順から訪問を開始した。


 最初に訪問した家は、ヴィアシル先輩の家で、先輩から想像も出来ないような貴婦人とご令嬢達が迎えてくれて驚いてしまった。


 時間も限られているので、それぞれの家の中までは入らない。


 庭までスロリ馬車で来て、荷台の中に入って貰い買いたい商品ミニスカートを買って貰うようにして、一日で全ての貴族家を回る事が出来た。




 ◇




 『ミニスカート』も順調に売れて――というか、爆売れで、アーシャはどんどん新しい形を試したり、スカート自体に魔力を持たせて花の香がする魔法まで開発させられた。


 商品名としては『フローラルスカート』なんだけど、これは僕じゃないと魔法が掛けられないので、王都限定で売っている。


 こちらは貴族から注文が殺到していたりする。


 そんな中、季節も夏が終わりそうな頃の出来事だった。




「お兄ちゃん~」


 サリーに呼ばれて行くと、珍しく学園長がやってきた。


「学園長。お久しぶりです」


「ははっ、お久しぶりでございます。主様」


 何度もやめてくれと頼んだんだけど、結局主様と呼び続ける学園長……。


「本日は主様の耳に入れたい情報がございまして」


「分かりました。サリー、悪いけど客間に案内してくれる?」


「は~い」


 僕はティナに学園長が来た事を伝えて、客間に向かった。


「学園長」


「はっ」


「落ち着かないので、ソファに座って貰えませんか?」


「はっ」


 学園長は地面に正座していたのだけど、何とかソファに座ってくれる。


 自分よりも遥か年上の方に正座待機してくれるのには違和感しか覚えない。


「それで、学園長? どうしたんですか?」


「はっ。実は世界で大きな事件が起きましたので、主様に真っ先に報告にと思いまして」


「大きな事件?」


 神妙な表情は、ただ事ではないのかも知れないと、思えてしまう。


「我がディアリエズ王国の北部の王国はご存知ですね?」


「北側はガロデアンテ辺境伯様が守られていて、最前線――――ホルン王国とシレル王国と面していて、そこから更に北側に大国のヘルズ王国、そこから東側にエンド国がいますよね」


「はい。まさにその通りです。その中でも最弱と言えば、どこの国が想像出来ますか?」


「えっと…………ヘルズ王国の従属国のエンド王国ですかね?」


「国力的にも、ヘルズ王国の従属国な意味でもエンド国が、全ての王国の中で最弱であります。しかし………………此度、エンド国からヘルズ王国に戦争を宣言しました」


「エンド国から!?」


「はい。絶対に――――勝てないと思いますが、そんな無謀に思える事をやり遂げたあの国です。その事もあって、今に市場はその噂で持ち切りになるでしょう」


「なるほど。分かりました。念頭に置いておきます」


「仮にあの両国が戦争状態になっても、我が国には何の関係もありませんが…………西の魔族の大地から兵が各国に戻りました。もしかして、それと関係があるのかも知れません」


「なるほど…………もしもの時は、向こうに戻った僕の友人・・達に聞いてみます」


「それが宜しいかと。寧ろこちらに教えてくださると助かります。ぜひ部下・・達を使ってやってください」


「い、いや……部下じゃなくて友人……です」


「はい。友人部下ですね」


 キラッて笑顔で親指を立てて見せる学園長。


 …………騙すなら味方から部下である事を隠して騙しますよね。と言わんばかりに。



――後書き――

 明日SSを一本投稿します。読まなくても全く問題ありません。が、力作なのでぜひ読んでみてください!続きで投稿されます!

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